新しい飼い主と預託先の乗馬クラブ運営者がシマウマと馬のポニーとを同一視し、シマウマという野生のロバに近い馬を甘く見ていた結果の逃亡劇は、現地の取材記者やテレビのアナウンサーたちを通して、はじめはどこかほほえましくお茶の間に伝えられていた。
なぜだか、警官隊、飼い主、乗馬クラブ関係者、獣医師たちで構成される捕獲チームに緊張感はあまり感じられず、逃がしてしまった重大責任者にいたっては何をしたかったのかわからないが、笑いながら無意味にバロンのお尻を上着で何度もはたいていた。さらに信じられないことに、20人の軍団からなる捕獲チームが用意したものはテレビで見る限りでは、数本のロープと麻酔用吹き矢だけだった。
いたずらに時間だけが過ぎて行き、時々至近距離で吹き矢を打たれながらも、スルリとかわして逃げて行くバロンとぞろぞろと後を追うだけの映像を見て、一体誰が指揮をとっているのだろう?指揮官は専門家を集めようとしたのだろうか?捕獲のための情報やノウハウを調べながらやっていたのだろうか?など悲しみと怒りとともに大きな疑問が湧いてきた。
前夜の7時に通報を受けた岐阜県警は捕獲に出動する翌朝までに、天王寺動物園をはじめとする動物園の飼育経験者や獣医たちに連絡をして、情報を集めたり、捕獲作戦を練ったり、応援を頼むなど時間は十分あったはずだし、馬の専門家として見られていたかもしれない乗馬クラブ関係者たちも飼い主と寝る間も惜しんで、計画したはずだ。一緒に計画を練り、打ち合わせをする時間は十分あったと思う。
結果的には天王寺動物園は応援に来ることはなかったし、あのような軟弱な設備でシマウマを飼育しようとした飼い主たちに加えて、二人の獣医師たちも大型の動物に不慣れで、専門性を期待できそうにもなかった。ましてや馬やロバなど見たこともない警官たちが何人いようと、たいした戦力になるわけがない。
そんな状態で始まったとはいえ、いくらシマウマに接するのが初めての素人軍団と言えども、うまく行きそうでないと思ったら、今はいつでもどこからでも情報を集めることができるし、動物園の専門家たちに電話することもできたと思う。それに、1時間もあれば、競馬場や東山動物園から専門家たちに駆けつけてもらうこともできた場所だったのだ。
それなのに、どうしてああだったのだろうか。本当に、「どうしようもなかった。」ことだとは思えないのである。夜のうちにあらゆる状況を想定し合い、ベストなベターなもしくはやむを得ない作戦をいくつか打ち合わせをしたはずなのに、あのように無秩序で効果がないまま継続し、想像もできなかったような最悪な結果を避けられなかったと言うのだろうか。
ロープで捕獲する作戦と麻酔で眠らせて捕獲すると言う作戦とを同時で進行させていたようだが、元気なシマウマにロープとは余りに危険で信じられなかった。ましてや、あのロープワークで捕まえられるとは思えない。仮に首にかかったとしてそのあとどうするつもりだったのだろうか。暴れたり引きずられて人間がケガするか、シマウマがショック死するなど双方に危険な状態をもたらす可能性が極めて高い。
生きたまま捕食される草食動物である彼らは少しのショックでその心臓を止めることが少なくない。昨年、円山動物園のグラントシマウマの飛馬がわずか400メートルの園内移動中に手間取った結果、輸送箱の中でショック死してしまったことも記憶に新しい。
(飛馬のストレスによるショック死についての報道↓)
http://b.hatena.ne.jp/entry/www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20150825/4376361.html
なので、首輪もしたことがない半野生のバロンにロープをかけた途端ショック死ということも十分ありえる。長いロープは天敵の毒蛇に見えないとも限らないのだ。
昔、アメリカの原住民やカウボーイが野生の馬を捕まえる時にはロープを使っていたが、捕獲後比較的早くおとなしくなり、人に慣れようとするのも馬系統の馬だからと言えよう。
ここに、ムスタングと呼ばれるアメリカの野生馬を捕獲する様子がわかる映画の場面がある。奇しくも二人にとって、遺作となってしまった映画だ。馬はポニー(小型馬)ではないのですごい迫力だが、シマウマも同じくらいの破壊力があるのではないかと思う。↓
マリリンモンローとクラークゲーブル主演の「荒馬と女」(現題 The Misfits)より
https://www.youtube.com/watch?v=38Xel0xsTyg
このように、ロープで野生の馬を捕獲するには息の合った経験のあるカウボーイが2-3人必要で、逃げようとする馬を捕まえるには専用のロープワーク(結び方)による投げ縄の技術が必要だ。
もうひとつの動画だが、狭い柵内だからこそひきずられたりすることもないし、きゅっと締まって縄が抜けない様子がこれからもわかる。↓
柵の中で仔馬を捕まえるロープワークの様子
https://www.youtube.com/watch?v=KBg2F6CrnyM
一番ベストな麻酔でおとなしくさせる、もしくは眠らせてから捕獲する方法はシマウマにとっては困難な作戦でもあるらしい。麻酔が効きにくく、薬の量が難しいと言われているが、実際、起伏の激しいゴルフ場では現実的だし、お互いに無傷で生存できる可能性が高い。この作戦に集中し専念していれば、バロンの変化にも気を付けることができたはずだ。
上野動物園のシマウマ(の着ぐるみ)捕獲訓練の様子
https://www.youtube.com/watch?v=p5E8CULgr3s
これはこれで笑ってしまうけど、シマウマの逃げた場所がこのように動物園の近くで、追い詰められるような場所であればこれもありかなと思う。それにしても、麻酔が一発で済むと言う薬の量や種類のノウハウを上野動物園から聞き出してくれたのだろうか。ここでのリーダー(本部長)は自衛隊でも警察でもなく動物園の園長だったので、やはりこういうことが起こった場合、専門家の立場に任すということなのだろう。だとしたら今回、素人の警察を責めることはできなくなる。
バロンには長時間にわたってなんと11回も吹き矢を打ったという。6本が命中し明らかに薬が効いてきているのがわかるのに、さらに7本目を打つことにするなど、とても指揮系統が確立されていたとは思えない。だらだらとまとまりがなく、各自が目的意識もなくバラバラに動いているような印象をどうしてもぬぐうことができないままだ。
結局、捕獲作戦の指揮を誰がとったのかわからないが、シマウマに対しては自分を含め全員が素人ばかりだと理解していて、その上でしっかりとした準備と指示ができていたならば、バロンの命は助かったのかもしれないとどうしても思わざるを得ない。
なぜだか、警官隊、飼い主、乗馬クラブ関係者、獣医師たちで構成される捕獲チームに緊張感はあまり感じられず、逃がしてしまった重大責任者にいたっては何をしたかったのかわからないが、笑いながら無意味にバロンのお尻を上着で何度もはたいていた。さらに信じられないことに、20人の軍団からなる捕獲チームが用意したものはテレビで見る限りでは、数本のロープと麻酔用吹き矢だけだった。
いたずらに時間だけが過ぎて行き、時々至近距離で吹き矢を打たれながらも、スルリとかわして逃げて行くバロンとぞろぞろと後を追うだけの映像を見て、一体誰が指揮をとっているのだろう?指揮官は専門家を集めようとしたのだろうか?捕獲のための情報やノウハウを調べながらやっていたのだろうか?など悲しみと怒りとともに大きな疑問が湧いてきた。
前夜の7時に通報を受けた岐阜県警は捕獲に出動する翌朝までに、天王寺動物園をはじめとする動物園の飼育経験者や獣医たちに連絡をして、情報を集めたり、捕獲作戦を練ったり、応援を頼むなど時間は十分あったはずだし、馬の専門家として見られていたかもしれない乗馬クラブ関係者たちも飼い主と寝る間も惜しんで、計画したはずだ。一緒に計画を練り、打ち合わせをする時間は十分あったと思う。
結果的には天王寺動物園は応援に来ることはなかったし、あのような軟弱な設備でシマウマを飼育しようとした飼い主たちに加えて、二人の獣医師たちも大型の動物に不慣れで、専門性を期待できそうにもなかった。ましてや馬やロバなど見たこともない警官たちが何人いようと、たいした戦力になるわけがない。
そんな状態で始まったとはいえ、いくらシマウマに接するのが初めての素人軍団と言えども、うまく行きそうでないと思ったら、今はいつでもどこからでも情報を集めることができるし、動物園の専門家たちに電話することもできたと思う。それに、1時間もあれば、競馬場や東山動物園から専門家たちに駆けつけてもらうこともできた場所だったのだ。
それなのに、どうしてああだったのだろうか。本当に、「どうしようもなかった。」ことだとは思えないのである。夜のうちにあらゆる状況を想定し合い、ベストなベターなもしくはやむを得ない作戦をいくつか打ち合わせをしたはずなのに、あのように無秩序で効果がないまま継続し、想像もできなかったような最悪な結果を避けられなかったと言うのだろうか。
ロープで捕獲する作戦と麻酔で眠らせて捕獲すると言う作戦とを同時で進行させていたようだが、元気なシマウマにロープとは余りに危険で信じられなかった。ましてや、あのロープワークで捕まえられるとは思えない。仮に首にかかったとしてそのあとどうするつもりだったのだろうか。暴れたり引きずられて人間がケガするか、シマウマがショック死するなど双方に危険な状態をもたらす可能性が極めて高い。
生きたまま捕食される草食動物である彼らは少しのショックでその心臓を止めることが少なくない。昨年、円山動物園のグラントシマウマの飛馬がわずか400メートルの園内移動中に手間取った結果、輸送箱の中でショック死してしまったことも記憶に新しい。
(飛馬のストレスによるショック死についての報道↓)
http://b.hatena.ne.jp/entry/www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20150825/4376361.html
なので、首輪もしたことがない半野生のバロンにロープをかけた途端ショック死ということも十分ありえる。長いロープは天敵の毒蛇に見えないとも限らないのだ。
昔、アメリカの原住民やカウボーイが野生の馬を捕まえる時にはロープを使っていたが、捕獲後比較的早くおとなしくなり、人に慣れようとするのも馬系統の馬だからと言えよう。
ここに、ムスタングと呼ばれるアメリカの野生馬を捕獲する様子がわかる映画の場面がある。奇しくも二人にとって、遺作となってしまった映画だ。馬はポニー(小型馬)ではないのですごい迫力だが、シマウマも同じくらいの破壊力があるのではないかと思う。↓
マリリンモンローとクラークゲーブル主演の「荒馬と女」(現題 The Misfits)より
https://www.youtube.com/watch?v=38Xel0xsTyg
このように、ロープで野生の馬を捕獲するには息の合った経験のあるカウボーイが2-3人必要で、逃げようとする馬を捕まえるには専用のロープワーク(結び方)による投げ縄の技術が必要だ。
もうひとつの動画だが、狭い柵内だからこそひきずられたりすることもないし、きゅっと締まって縄が抜けない様子がこれからもわかる。↓
柵の中で仔馬を捕まえるロープワークの様子
https://www.youtube.com/watch?v=KBg2F6CrnyM
一番ベストな麻酔でおとなしくさせる、もしくは眠らせてから捕獲する方法はシマウマにとっては困難な作戦でもあるらしい。麻酔が効きにくく、薬の量が難しいと言われているが、実際、起伏の激しいゴルフ場では現実的だし、お互いに無傷で生存できる可能性が高い。この作戦に集中し専念していれば、バロンの変化にも気を付けることができたはずだ。
上野動物園のシマウマ(の着ぐるみ)捕獲訓練の様子
https://www.youtube.com/watch?v=p5E8CULgr3s
これはこれで笑ってしまうけど、シマウマの逃げた場所がこのように動物園の近くで、追い詰められるような場所であればこれもありかなと思う。それにしても、麻酔が一発で済むと言う薬の量や種類のノウハウを上野動物園から聞き出してくれたのだろうか。ここでのリーダー(本部長)は自衛隊でも警察でもなく動物園の園長だったので、やはりこういうことが起こった場合、専門家の立場に任すということなのだろう。だとしたら今回、素人の警察を責めることはできなくなる。
バロンには長時間にわたってなんと11回も吹き矢を打ったという。6本が命中し明らかに薬が効いてきているのがわかるのに、さらに7本目を打つことにするなど、とても指揮系統が確立されていたとは思えない。だらだらとまとまりがなく、各自が目的意識もなくバラバラに動いているような印象をどうしてもぬぐうことができないままだ。
結局、捕獲作戦の指揮を誰がとったのかわからないが、シマウマに対しては自分を含め全員が素人ばかりだと理解していて、その上でしっかりとした準備と指示ができていたならば、バロンの命は助かったのかもしれないとどうしても思わざるを得ない。