久々の更新です。
やっぱりというかなんというか、またしても「軍」ネタです。
今回は趣向を変えて?いたっきいが見学した順序に従って書いてみようと思います。
一般には滅多に見ることのできない護衛艦の内部。それを写真と文章で追体験していただければ幸いです。
・・・超長文になりそうだなあ。
ま、いっか。以下本文↓
毎年8月、静岡県清水区では、清水みなと祭りが行われる。
このイベントは地元自治体?の主催だが、海上自衛隊や航空自衛隊、海上保安庁も協力しており、毎年祭りの当日には4,000tを超える護衛艦や巡視船が会場に乗り付け、空自の所属機が祝賀飛行を行い、T-3Jr.が会場を走り回っている。
数年前には故・ロック岩崎氏によるアクロバット飛行も行われるようになり、昨年は最新鋭の「おおなみ」をはじめ、「はるさめ」「たちかぜ」と三隻もの護衛艦が入港した。
さすがにこのときは海自の基地に迷い込んだのかと思った。。。
今回も、事前の根回しにより体験航海乗艦券を入手していた。
乗艦は「はたかぜ」。
全長150m。
基準排水量4,600t。
昭和61年に就役したDDG(ミサイル護衛艦)で、他の護衛艦同様に対艦ミサイル、対空ミサイル、対潜ミサイル、魚雷、速射砲、機関砲を装備している。
特筆すべきは艦首の誘導弾発射機より発射されるスタンダードSM-1MRミサイル。
汎用護衛艦が搭載するシースパロー艦隊空ミサイルより射程が長く、その気になれば対艦攻撃兵装としても使用可能。
このシステムを搭載する「はたかぜ」型は、イージスシステム搭載艦の登場以前は世界でも最も対空攻撃力の高い艦であり、当初は同型艦5隻の建造が予定されていた。だが、はじめの2隻の予算が認められた後、イージスシステム搭載艦「こんごう」型の建造が決定され、3番艦以降が建造されることはなかった。
(“亡国のイージス”では「はたかぜ」型3番艦として、ミニ・イージスシステムを搭載した「いそかぜ」が登場している)
0800。
ラッタルを渡り、右舷前部1甲板より乗艦。
舷側を通り、後部のヘリパッド(ヘリコプターの発着甲板)に行く。
ヘリパッドでは、この日の「1日艦長」の任命式が行われていた。
一日艦長任命式
てか、この女性は誰ですか?
この一日艦長、このあと「護衛隊指令に出港の報告をして!」「艦長!ウィングへ来てください」「艦長、こちらの日誌に・・・」と、いろいろおもちゃに指示されていた。
航行中に「あれ?今日の艦長どこへ行った?」と副長が探していたのが笑えた。
ヘリパッドは狭く、大型の対潜哨戒ヘリは発着艦が難しそうだ。
5インチ単装速射砲の砲身も着艦には邪魔だろう。
それとは関係ないが、後部マスト?の左右に並んだ20mmCIWS(白い筒に足が生えているやつ)が頼もしい。
後部ヘリパッドより、艦前部方向を見る
リムパック'96で護衛艦「ゆうぎり」が、標的曳航中の米海軍A-6Eイントルーダを見事撃墜したのも、この20mmバルカンファランクスである。
この特徴ある形から、R2D2とも呼ばれる。
ちなみに米海軍の空母に3基ついているCIWSは、艦首寄りから「ヒューイ」「デューイ」「ルーイ」と愛称がついている・・・って、んなこたあどうでもいい。
ヘリパッドから一層下(2甲板)に降り、艦内に入る。
2甲板に下りるラッタル
入ったところは洗面所。
洗面所。後ろの隔壁奥のラダーを登るとヘリ甲板に出る
生活観のあるこの場所は、戦闘艦艇の中とは思えない、人の営みを感じる。
そして風呂。
ステンレスの浴槽はなぜかかなり深い
淡水製造装置があるとはいえ、真水が貴重な航海中は海水の風呂が標準。
海域によって海水の成分が違うため、たとえばハワイ沖ではずいぶんとサラッとした海水風呂になるという。
この風呂に全乗員260名が入るのだろうか?
風呂の前に、艦内の案内図があった。
艦内の通路をとおり、前部に移動する。
フェリーも貨物船も護衛艦も、内部はペンキと潮と油の臭いがするところは同じ。
通路は狭く、配管類は剥き出し
難燃性の素材だけで作られた殺風景な通路は、いたるところに消化設備がある。
さすがは戦闘艦艇、鍛え方?が違う。
食堂を通過し、操縦室兼応急指揮所に入る。
ここはいたっきいの好きな部署の一つ。
CICに入れない以上、ここが最も機械でごちゃごちゃしていてハイテクを感じるからだ。
機械を冷やすために冷房も効いているし、喫水線に近いため揺れも少ない。快適だ。
ここには、大きく分けて電流監視制御盤、機関監視制御盤、応急監視制御盤がある。
電流監視制御盤
これはいわゆる配電盤。艦内の電力の供給はここでコントロールする。
「はたかぜ」には4基の発電機があり、合計4,500kwの電力を発生する。
(戦艦大和=4,800kw、一般家庭のブレーカーは4kw(40A)程度)
ここでは「はたかぜ」が搭載する4基のガスタービン(ジェット)エンジンを制御する。
COGAG推進の「はたかぜ」型は、巡航用のスペイを2基とコンバットスピード用のオリンパスを2基搭載している。4基のエンジンの出力は合計72,000馬力。最大で30kt以上の速力を発揮する。
これらのガスタービンは煙突付近のハッチから出し入れして交換できるらしい。
これはいわゆるダメコン(ダメージ・コントロール)に用いるほか、通常時には艦内各部の空調をコントロールする。
艦内各部の火災状況、浸水状況を監視し、火災部署への散水や排煙、浸水区画からの排水を遠隔制御できる。
右下のパネルには、燃料や真水の搭載量などが表示されていた。
中央下の時計を挟んで左右に、両舷のエンジンの状況が表示される。
左右一番上が速力通信機(テレグラフ)。艦橋やCICからの指示がここに表示される。
例えば艦橋から「右舷前進微速(6kt)、左舷後進最微速(3kt)」と指示すがくれば、左右のテレグラフの針が目覚し時計のような音を発しながらそれぞれの指示位置に移動する。それを見ながら左右の操縦員がレバーを操作し、スクリューのピッチを変える。操作をした情報は、艦橋側のテレグラフにフィードバックされる。つまり、フネのアクセルやブレーキは、艦橋やCICの指示に基づいてここで操作しているのである。
時計の両側、デジタル数字が「000」を表示しているのがスクリュープロペラの角度。
フネの速度変更はエンジンの回転を変えるのではなくではなく、プロペラの角度を変えて行う。
そのため動き出す手順も、1.エンジン始動、2.軸ブレーキ解除、3.プロペラピッチ変更となる。
今回は出港までここで観察することにした。
多くの一般客は、甲板やブリッジに出て出港するところを見ているようで、ここにはほとんど人がいない。貸しきり状態。ホントに居てもいいのか不安になるくらい。
「上に上がったほうが景色も見えるし、楽しいよ?」と言われ「いえ、私にはここのほうが楽しいです」と答えたら笑われた。。。
まもなく、機関始動の準備が始まった。
全員配置につき、間もなく機関始動
「両舷、軸ブレーキを脱とする。用意、撃てぇ」
指示が飛び、左右それぞれ別の操作員がレバーを押し込む。
空自では「Ready,Now」というところは、「用意、撃てぇ」なんだな、と妙に感心する。
「主機を125巡航とする。用意、撃てぇ」
操作員は突発事故に備え、キルスイッチ(即座にエンジンをカットできるスイッチ)を握りながらエンジン始動ボタンを押し込む。
腹の底に響く低いうなりをあげ、タービンが回り始める。
両舷同時にエンジン始動できるのか・・・やっぱり航空機とはどこか違う。
エンジンの諸元を読み上げる声が続き、回転が上昇する。
うーん。ここまで詳しく書いていいのだろうか(;^_^A
ま、いいか。動画も載せちゃえ!
<<クリックで動画
0900。
「出港準備と為せ」
出港準備は、岸を離れ動き出すことを言う。
まだ港を出ていないので出港「準備」なのだが、一般人からすれば岸壁を離れれば事実上の出港である。
テレグラフがジリリと音を立て、針が「右舷前進最微速(3kt)、左舷停止」に移動する。
右舷操作員がレバーをわずかに前進させ、前進最微速位置に合わせる。
数秒後、床がわずかに動いた。どうやら離岸したらしい。
「右舷前進微速、左舷後進最微速」
「右舷前進微速、左舷停止」
「右舷前進微速、左舷後進微速」
十数秒おきに指示が出る。
フネは岸壁を離れ、160度回頭する。
「両舷前進原速」
艦が直進をはじめる。
ここで操縦室を離れ、通路に出る。ラッタルを登り、1甲板に出る。
艦首方向に移動する。
艦首にブルワークが存在するのは、護衛艦のなかでは「はたかぜ」型のみ。これは艦首にある誘導弾発射機を潮から保護するためらしい。
艦首では揚錨機がアンカー(錨)を中途半端な位置に吊り上げたまま停止していた。
緊急事態の際、即座に投錨できるようにするためだ。
「はたかぜ」の場合、アンカーは艦首正面と、左舷側に一つずつあり、右舷側にはない。全ての船に、両舷バランス良くアンカーがついているわけではないようだ。
艦首部。手前の操作員がリモコンで揚錨機を巻き上げる
港最狭部の防波堤をすり抜け、アンカーを揚げきる。
障害物がなくなり艦が速度を上げた。
つづく。。。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます