「はたかぜ」は駿河湾に乗り出した。
フィン・スタビライザー(艦底部左右にある水中翼)の効果か、港外に出ても動揺はほとんど感じない。とても海上を航行する船とはおもえない安定感に驚く。
艦の針路と速度が安定し、艦載兵器のデモが始まる。
まずは艦首部の誘導弾発射機(通称ターター)。
発射機が垂直に立ち、その下の蓋がスライドする。
全長3m近いスタンダードSAMの青いキャプティプ弾(模擬弾)が弾庫から滑りあがってきて、全自動で装填される。
間違って、白いの(実弾)が出てこないかな?ってワクワクしたけど、青だった。ちょっと残念。
素早く弾庫の蓋が閉まり、即座に発射機が左舷仰角40℃を指向する。
この間、3秒ほど。
観客からどよめきが起こる。
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誘導弾発射機に装填されたスタンダードSM-1MRミサイル
ミサイルを艦内に収納するのは、同じ動作を逆にするだけ。
「はたかぜ」では、このスタンダードを最大で2発同時に誘導できる。
次に艦首5インチ速射砲。
イタリア、オットーメララ社製の54口径127mm砲だ。
発射速度は毎分35発。
対水上艦攻撃、対地攻撃のほか、毎秒数百mで飛翔する航空機やミサイルに対しても有効な射撃ができる。
そのため、砲の仰角は最大で85度。
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艦首5インチ(127mm)速射砲。艦尾にも1門ある
真上に対して撃てないのは、砲弾が自艦に落下する可能性があるため・・・と本当かウソか知らないが聞いたことがある。
続いてアスロックランチャー。
アスロックとは Anti Submarine ROCKet のことで、その名のとおりの対潜兵器。
対潜哨戒機、哨戒ヘリ、自艦や他艦が探知した潜水艦に対し投射する。
最初から水中を進む魚雷ではなく、ロケットモーターで空中を飛翔し、目標近くでロケットを切り離す。その後パラシュートを開いて降下、着水した瞬間にパラシュートを切り離し、魚雷単体となって海中を進み目標を補足、攻撃するものである。
8連装のランチャーが仰角と方位を変え、無意味にグルグルまわっていた。
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アスロック8連装発射機。内部に弾体は入っていない
なお、こんごう型、あたご型(現在建造中)のイージス護衛艦や、むらさめ型、たかなみ型護衛艦など、はたかぜ型以降の新型艦では、これらのランチャーは甲板に埋め込まれており、このようなデモを見ることができない。
舷側を通り、後部に移動する。
艦体中央部の左右両舷に68式3連装短魚雷発射管がある。
ここには対潜水艦用の短魚雷が装填されている。
68式3連装短魚雷発射管(右舷側)
発射時には90度旋回し、圧搾空気で魚雷を撃ちだす。
実弾が入っていることを示す、赤い「実装」の文字が不気味だ。
艦後部。
日よけのカンバスの下は、駿河湾をスムーズに進む艦の作り出す合成風力ともあいまって涼しく、年配の方を中心にくつろいでいる。まるで救助された避難民だ。
左舷ヘリパッド付近。艦には毛布も備品として搭載している
後部ヘリパッドでは、ラッパ手による演奏?が行われていた。
一日の課業の節目に演奏されるものを、「起床ラッパ」から順に実演している。
なかでも面白いのは「ラッパ君が代」
ラッパは5つの音階しか出せないため、「君が代」を演奏することはできない。
そのためラッパ用にアレンジした「君が代」があるというのだ。
・・・てか、全く違う曲だ。
今まで何度も聞いたことがある曲だったが、これが「君が代」だとは知らなかった。
ラッパを吹けるという女性(一般客)が、正露丸のあの曲を演奏してひときわ大きな拍手が上がっていた。
どうでもいいことだが、あの曲はそもそも旧軍の食事ラッパ。
正露丸は明治の世から「征露丸」として軍隊とともにあったってのも有名な話。
これもどうでもいいことだが。
あのTVCMを見かけたらラッパに合わせて「一中隊と二中隊はまだ飯食わぬ 三中隊はもう飯食って食器上げた」と口ずさもう!<誰に言ってるんだ?
次に「立ち入り検査隊」のデモが始まる。
立ち入り検査隊は、不審船などの臨検を行う専門の特殊部隊だ。
全身真っ黒の作業服。
ライフジャケットにもなるという防弾防刃のベスト。
サングラス、どんなやかましい場所(=銃撃戦の最中)でも通信できる骨伝導タイプのヘッドフォンマイク、服のなかから伸び、親指にかかっている無線のトークスイッチのリング、腰の拳銃、左右大腿に巻いたベルトには弾倉が入る。足元は編み上げで中に鉄板が入っている滑り止め付きの安全靴。
無線機は背中につけ、目線が分からないよう、サングラスをつけている。
写真は撮ってもいいが、ネットや雑誌には載せるなとのことなので、ここでは文章のみ。残念。
ベストを着させてもらう。防弾と防刃を一枚で兼ね備えているというのも聞いたことがないが、さらに海に浮くという。だからか、厚みはあるが意外と軽かった。拳銃なら1mほどの距離で撃たれても弾を止めるらしい。ビックリするほど高いんだろうな。
艦上構造物のハッチより艦内に入る。階段を上り、艦橋(02甲板)へ。
ちょうど艦も清水港に入港する直前で、慌しくなっている。
一般客の多くは、入港が近いと知ってか、艦橋を出て1甲板に降りて行く。
またしても貸切に近い。
まだ接岸まで30分ほどあるのにね。
艦橋(ブリッジ)の様子
「艦首方位、1300にプレジャーボート、これを目標ロメオ(R)と呼称する。測的はじめ」
「港内最狭部まで1000」
「10時の方角に静止するタンカー、距離2500、これを目標シエラ(S)と呼称する。測的はじめ」
「変針点通過」
「新方位160」
「艦首方位、600に白い浮遊物。え?鳥?(苦笑)了解」
「両舷前進半速」
「目標キロ(K)、艦尾方向1500に離脱。測的やめ」
プロッタに次々と鉛筆で記号が書き込まれていく。
指示は数秒に一回のペース。かなり忙しそう。
一日艦長は艦長席で所在なげに足をブラブラさせていた。
明らかに威圧感のある護衛艦が珍しいのか、水上バイクが左舷側つかず離れずの距離を走り回る。左舷ウィングでは、いつでも警告を鳴らせるように準備している。
4,600tもあるフネだ。もちろん急には止まれない。危険は危険にならないうちに排除するのは当然だ。
てか、いくつもの双眼鏡で睨まれ続けているのが分かれば、普通は寄ってこないと思う。
水上バイクの兄ちゃん、ホント危機感なさすぎ。
水上バイクが嫌われる理由のひとつは、こういうところにあるんだろうな。。。
結局この水上バイクは、「はたかぜ」を出迎えたタグボートに警笛を鳴らされ、追い散らされていった。
その後、細かく針路と速度の変更指示があり、横付けしたタグボートに押され、「はたかぜ」は無事清水港ひので埠頭に接岸した。
艦上、艦内には一般客が何の備えもなく乗っているため、揺らすことはできない。
非常に繊細で、そして完璧な操艦だった。
右舷ウィング(艦橋横の出っ張り)に出る。
早くも降りたい人たちがアスロックランチャーの横に集まっていた。
右舷ウィングより艦首方向を見る
人の流れに反し、艦橋トップ(03甲板)に上がる。
ここは一般人が立ち入ることができる最上部。
ここより上は、レーダーマストしかない。
そして、ここにはすでに誰もいなかった。
艦橋トップ(03甲板)
完全防水の計器類と、重要そうないくつかのスイッチがある操作盤以外は、昔ながらの羅針儀や伝声管、測距儀、百葉箱?と、正体不明のアンテナがいくつかあるだけだ。
ここのやや後部に、チャフディスペンサーを発見した。
チャフ発射筒(左舷側)
筒の中には細長い糸のように切ったアルミ繊維が詰まった弾が入っている。この弾を打ち上げて艦の上空にアルミ繊維を散布することでレーダー波を乱反射させ、自艦を狙うレーダー誘導ミサイルを惑わす効果がある。
一般客の退艦が始まったらしく、降りることにする。
一層降りて艦橋(02甲板)へ。
艦橋内を通過し、艦橋後方のラダーから二層降りて1甲板へ。
二重になったハッチ(ハッチとハッチの間は黒く塗りつぶされ、暗幕が下りていて内部が見えないようになっている)をくぐり、舷側に出る。
流れに従って退艦した。
つづく。。。
いたっきぃさんと一緒にいたらいろいろ教えてもらえそう…
(もしくは、分からない説明が続きそう…核爆)
しっかし、たまに見ると面白いモンだよね!
おいらが行った時には弾頭も触らせてもらえたよ!
30kgのヤツ(ナンのだったかもう忘れたけど…^^;)
写真展などに応募した事ありますか?
次回記事も楽しみにしています!
いたっきいはあまり健康的な日焼けはしてないのです・・・
■どんちゃんさん
>素人にはナンの事やらさっぱり…
それが分かるようになれば末期ですよw
>おいらが行った時には弾頭も触らせてもらえたよ!
30kgくらいだったら、127mm砲弾かな。
1.5Lのペットボトルくらいのサイズなら、たぶんそうです。
10月上旬に、一週間ほどそちらに戻ります。
うまいもん食わしてくれ・・・
■ポッポさん
>写真展などに応募した事ありますか?
これが全くないんですよ。
単に撮るのが好きなだけで。
それに写真がうまいのではなく、カメラの性能に助けられているだけというか・・・(;^_^A
■仮眠ライダー55さん
今回、好きなように文章を書いて読み返してみたら、あらためて自分が取り返しのつかない世界に踏み込んできているのがよく分かりました。
そっかあ、空だけじゃなかったんや>>自分
次は、某ジュニアも出てきますw
■abiさん
潜水艦の公開は珍しいですね。艦内まで見学できたんでしょうか?
潜水艦内は一歳撮影禁止なので、レポートしにくいんですよねw
魚雷とハープーン搭載用のラックの数を数えていて叱られた記憶があります(;^_^A
面白いイベントがあれば教えてください。どこへでもいきまっせ!
何故か知識が右から左です。
内容が濃すぎます(笑
スタンダードSM-1MRミサイルの動きには感動!
俺も若い頃は...なんて言ってる人いませんでしたか?(爆
ichirouさん、お久しぶりです。
自分でも「誰が読むんだこんなもん」って思いながら書いています。備忘録のようなものですね。
スタンダードは、あの様子だと5,6秒に1発発射できそうですね。。。いくら若いったって、数秒おきに発射ってのはいかがなもんかと・・・┐('~`;)┌