参加兵力は、戦車・装甲車約60両、航空機約30機、人員約2000名。
弾薬投射量はのべ35tにおよび、費用は概算で3億2000万円。
これが、自衛隊東富士演習場の一角を利用して毎年夏に行われている「富士総合火力演習」の規模だ。
この演習の本来の目的は、自衛官に各兵科を合わせた有機的・組織的な能力を展示するというのが目的。
だが、数日間にわたって行われる演習の最終日には、一般公募の当選者も招待される。
自衛隊の持つ能力の一端を国民に紹介する行事ともなっているのだ。
今年も周りの方のご尽力のおかげで、26日・27日に見学する機会が得られた。
見所はやはり、陸の主役、戦車。
戦車の発砲とは、爆発とほぼ同義だ。
特に90式(きゅうまるしき)戦車の120ミリ滑腔(かっこう)砲の発砲時の衝撃波と音は、筆舌に尽くしがたい。
観客席には事前に「ティッシュなどを耳に詰め、発砲の時は両手で耳をふさぎ、口を開けているように」との案内もあり、ますます期待が膨らむ。
シート席最前列でカメラを構えているときなど、歯を食いしばり腹の底に力を蓄えておかないと、衝撃でおかしくなりそうになる。発砲がおさまっても、しばらく耳鳴りが続き茫然となってしまうほどだ。
で、今年もまたそれを味わいにやってきた。
会場は、少しでもいい席から演習を見ようとする人が夜明け前からやってくる。
26日は0700くらいに、そして最終日の27日には0600の時点でスタンド席はビッシリ埋まっていた。
いたっきいたちは、26日は0440頃Eスタンド(茶色券)最上段に、27日は0600頃Dスタンド(黄色券)最上段に席を確保した。
会場を埋めつくす3万3千人の観衆
火力演習には、もうひとつ楽しみがある。
それは早朝より行われる各兵科の点検射、つまり予行演習。早朝のトレーニングのようなものだ。今年は、0540よりこの点検射を行っていた。
点検射では予告なく発砲するため、発砲の瞬間に観客席を見ていると観客が飛び上がる様子がよくわかる。驚いて飲み物をこぼした人の数は3ケタにのぼるだろう。
点検射の準備を整える10輌の90式戦車
1輌で50tもの重量がある90式戦車。
そんな大質量のものが、10輌も並ぶと圧倒的な存在感がある。
時代の流れから考えると、次に開発される戦車は小さく軽くなるはず。それらが配備されはじめると、こんな威圧感のあるシーンは見られなくなるだろう。
点検射ではハプニングもあった。
25mm機関砲の射撃を行っていた87式偵察警戒車が、動かなくなったのだ。
すぐさま90式戦車回収車がやってきた。
87式偵察警戒車を牽引準備する90式戦車回収車
迷彩の効果もよくわかる
この90式戦車回収車、90式戦車と共通の車体であることが分かる。
戦場で故障・被弾した戦車を回収するのが戦車回収車の役割だが、それまでにない大重量の90式戦車が正式配備されたとき、大パワーの戦車回収車も必要となった。そこで配備されたのが90式戦車回収車である。
この戦車回収車だけではなく、各種支援車両や設備も、主力戦車に合わせて大幅に更新されている。戦車を有効に活用するには、その数倍の規模の装備改変が必要なのである。
1020。
来賓の某A庁長官も到着し、いよいよ開始。
・・・どうやら今年から国旗掲揚はなくなったらしい。
まずは前段演習。
これは、陸上自衛隊の持つ装備の能力を、個別に紹介するもの。
・・・とはいいつつ、はじめは航空自衛隊機の地上攻撃から始まった!
フェリー用大型タンクを吊ったF-2A
航空自衛隊三沢基地(青森県)のF-2A攻撃機支援戦闘機が、爆弾攻撃(模擬)を行う。
左旋回で会場を回りこみ、次はロケット弾攻撃(模擬)を行う。
※26日実施、27日は天候不良によりキャンセル
続いて、榴弾砲、迫撃砲などの遠距離~中距離火力の射撃。
さらに64式、79式、87式、96式、01式(まるひとしき)の各誘導弾。
有線誘導で飛翔速度も遅く、発射から命中まで射手が敵に身を晒し続けなければならない64式から、発射後は射手がミサイルを誘導させる必要がなく、すばやく身を隠すことができる01式まで、テクノロジーの進歩がよく分かる展示である。
軽装甲機動車より01式軽対戦車誘導弾が発射される
写真は0.2秒間隔。(クリックで3コマ目の画像が開く)
動画(2003年)
続いて、航空火力の展示。
まずは新世代の観測(偵察)ヘリ、OH-1。
軽量小型の機体を、これまたコンパクトなエンジンで軽快に飛ばす。
OH-1は、川崎重工が開発した国産の観測ヘリ。
はじめてOH-Xのモックアップ(実物大模型)の写真を見たときは、攻撃ヘリかと思ったくらい、従来の観測ヘリのイメージから離れていた。
(モックアップはかかみがはら航空博物館に展示中)
しかし、飛んでいる姿を見ると、やはり攻撃ヘリとして使用するにはパワーが小さいように思う。OH-1は胴体両舷側のスタブウィングに燃料タンクと自衛用の空対空ミサイルを計4発搭載できるが、これらを満載した場合の機動力は大きく下がるだろう。
観測ヘリが現れると、次に出てくるのが攻撃ヘリ。
いささか古臭い外見のAH-1Sが会場に入ってきた。
大きな2枚のシーソーローター、角ばった外見のAH-1S。航空祭などではお馴染みの機体だが、2、3年後には後継機のAH-64Dアパッチ・ロングボウが姿を見せ始める。
ちなみに攻撃ヘリは、前席がガナー(射撃手)、後席がパイロット。
二人の息がピッタリ合わないと、その真価が発揮されない。
続いて、お待ちかね、陸の主役戦車が会場に入ってきた。
シャッター速度を落とし、流し撮りしてみる。
74式戦車は、その名のとおり配備から32年が経過した戦後第二世代戦車。
105mm砲を備えた38tの車体は、時速53kmで走行できる。
続いて、会場左手より90式戦車4輌がやってきた!
行進間連続射撃を行う90式戦車
動画(2003年)※行進射撃ではない
動画(2004年)※行進射撃ではない
性能を見せ付けるかのように走行しながら、しかも連続で射撃する。
カタログデータでは行進射撃を行える戦車は諸外国にもあるが、衆人環視のなか実施できるほど命中率が高いのは日本の90式戦車以外にない・・・と思う。
1500馬力の水冷2サイクル・スーパーチャージャー付ツインターボエンジンを持ち、戦後第三世代戦車の中では最も軽い(!)50tの車体を、時速70kmで走らせる。1500馬力の車載用ディーゼルエンジンを製造できる国は日本とドイツ以外になく、砲塔も自動装填装置の採用でコンパクト。
日本お得意の電子技術で、どんな悪路を走行中でも砲弾を正確に標的に命中させる。
44口径120mm滑腔砲から叩き出される砲弾は、発射後翼を展張し滑空する。
APFSDS(装弾頭付翼安定徹装弾)を使用すれば、90cm厚の鋼鉄板を貫く威力がある。
なお、火力演習では実弾より装薬が少なく威力もない練習用砲弾を使っている。驚くなかれ、実弾射撃時の衝撃はもっと大きいのだ!
興奮冷めやらぬうちに、前段演習が終了した。
続く
って事は、こないだ富士登山して、今度は演習見学?
富士三昧じゃない?
しっかし、これは一度見てみたいかも…♪
津山に自衛隊基地がある関係上、この辺りでも自衛隊の車両は見る機会がチョコチョコあるんだけど、さすがに戦車は走ってないからな…(^^;)
「弾ちゃーく、いま!」と言うと「バーン」とリアクションしてくれる1歳半の息子です。将来有望か!?。
写真、すごい迫力ですね!
言葉を失っています!
ん~…素晴らしいショットの数々、文章無しでも伝わってきます!
トイレの渋滞(>_<)
じょ、冗談です
>オートバイ斥候を降ろし、急速離脱するUH-1J
この絵がお気に入りです。
望遠・固定焦点の強みですね、凄く迫力あります!
以前の内容に比べると、小口径の乱れ撃ち~では
不完全燃焼になりました。
90式の音はいつ聞いても「いい音だ」ちーん。
また、どこかでお会いしましょうね。
すんまへん。
3年に一度位は生で体感したい轟音ですね。
我ながら、わりと末期だと思っています。
■どんちゃんさん
そう。富士山三昧。
でも、昨年は土曜に富士山に登って、一度東京に帰って登山道具を置いてカメラを持って翌日の火力演習を観に行ったよ。さすがに死ぬかと思うくらいのハードスケジュールだったけど。
東富士演習場の近くでは、たまにコンビニに乗り付けてる装甲車を見かけることもあります。迷彩服の人たちが店内を占拠してた・・・
■ZAKIさん
26日はお疲れ様でした。英才教育、順調のようでなによりですね。
ご子息だけではなく、ご令嬢も有望ですぞ!
実物の“きゅうまるしきせんぱい”に興味津々のご様子。
でも、父親が一番ノリノリ(特に軽装甲機動車の車内を覗き込む姿勢が)だったように、小官には感じられましたが・・・?
■仮眠ライダー55さん
27日はお世話になりました。浜松のドラやき、おいしかったです。
今写真を見てみると、昨年のほうが迫力があるんですよ。
なんというか、カタログに載せるようなまとまった写真になってきてしまって、思い切った構図の写真を撮れなくなっちゃってるんですよね(ノД`)
来年は400ミリ単焦点1本でいこうかと考えてます。
■ichirouさん
27日はお疲れ様でした。帰りは渋滞もひどく、お互い相当キツかったですね。
UH-1Jのショットも、昨年のほうが迫力あったんです(ノД`)
パイロットの腕につけた時計まで写ってるほどの迫力でしたから・・・
やはり望遠での「切り取り」が印象に残りますね。
半角の顔文字は、たまにエラーを起すようです。
■VFA-195さん
大口径砲弾⇒小口径もそうですが、SSM1、81短SAM、87AAG、93近SAM、MLRSの紹介もなくなりました。mixiの「国産SAMクラブ」コミュニティに入っているいたっきいには悲しい現実です。。。
冷戦の終わりで“着上陸対処”というのが時代の流れに合わなくなってきたんでしょうか?
このまま年々規模を縮小して、そのうち“対ゲリラ掃討戦”みたいになったりして。
今週末、三沢に行ってきます。
11月には入間の裏で、AEROBATICSです!(ブルーJr.を撮り下ろすチャンスですぞ!)
関係ないけど、VF-154のファンでした。今はCVW-9のVFA-154ですね。
■abiさん
私にとっては夏の風物詩。毎年恒例の行事です。こういうと怒られるかも知れないけど、花火大会に行くようなもんですね。夜間演習にいたっては浴衣で観に行ってもいいくらいですよw
また是非いきませう。