富士山頂には、公共施設もある。
郵便局と、公衆トイレだ。
ここは日本最高所の富士山頂郵便局。
もちろんここのポストも、日本最高所。
ちなみに日本最低所のポストは、海面下10mにある・・・が、今はどうでもいい。
11:39 3,719m 日本最高所の郵便局
いたっきいは初登頂した2000年に、ここから暑中見舞を送った。
今回は同行した二人がそれぞれ残暑見舞?を出したようだ。
富士山頂郵便局の消印は、たしかにちょっと珍しい。
ここで売っているハガキの裏には、富士山のイラストと、今日の日時や気温を書く欄があったと記憶している。
なお、この郵便局は夏の約1ヶ月間しか営業していない。
さて。
いよいよ最後の難関、剣ヶ峰に挑む。
この剣ヶ峰こそ、富士の火口の御鉢の中で最も高い場所。一般に「富士山は標高3,776m」と言われている、まさにその地点だ。
郵便局から剣ヶ峰までは、距離にして300mほど。標高差は約60mだ。
剣ヶ峰を目指して歩いていくと、その途中に環境省が数年かけて建設していたバイオトイレが完成していた。
これほどまでに熱心にトイレを作ったのは、富士山が“トイレのせいで世界遺産入りできなかった”という因縁があるからだ。
11:58 山頂バイオトイレ
空気が薄く、気温も上がらず、水が貴重な山頂近くでは、汚水を分解するバクテリアを働かせるために様々な仕掛けが必要だ。
いたっきいがはじめて富士山に登った2000年は、こうした仕掛けを施した「環境配慮型トイレ」は、5合目にある環境庁(当時)が設置したものと、山頂にあるNPOが実験的に設置したものしかなかった。
つまり、山小屋のトイレは基本的に垂れ流しだったのである。そういえば以前は登山道にも悪臭が漂っていた。
その状況が変わったのは、まさにこれが原因で富士山が世界遺産入りできなかったことにある。
その後急速にトイレの整備が進み、昨年度までに富士宮口登山道の全24トイレが、そして今年度には吉田口登山道を含め、全てのトイレが環境配慮型に改められる。
しかし、環境配慮型トイレの維持には軽油または電気が必要なため、かなりのコストがかかる。
そのため、チップ制(100~200円)としているところが大半。しかし悲しいことに、利用者の約半数は利用料を納めないらしい。
山のマナーは良くなったとは思うが、メジャーな山はやはりこの程度か。。。
悪臭もなくクリーンな登山環境の維持のため、チップくらいは気持ちよく払おう!
ちょっとだけ後ろめたい思いをしながら「しめしめ、200円払わずに済んだ」と考えるより、富士山が世界遺産に登録されたときに「自分も世界遺産入りへ200円協力した!」と言えるほうがいいじゃないか!?
さて、いよいよ剣ヶ峰に登る。
剣ヶ峰に続く急斜面は、通称「馬の背」。
その名のとおり、馬の首筋のようにまっすぐ斜めに続いていて、しかも左は富士の山肌、右は火口に繋がる細い稜線。
2002年には、風雨と砂が吹きすさぶ中、まさに這いつくばるようにして馬の背を登った。火口に吹き飛ばされないように必死で、気持ちは萎えかけ、かろうじて出ていたアドレナリンのおかげでようやく登れたようなものだった。さすがにこのときは山頂でも数人の登山者しか見かけなかった。
天候が崩れれば難易度が極端に高くなる。それがいたっきいの、馬の背のイメージ。
しかし今回はとても天気がいい。
風もほとんどない。
毎年少しずつ荒れていった登山道も、今年はきれいに均してある。
今まででもっとも登りやすかった。
12:08。
剣ヶ峰到着。
日本最高地点は、富士山測候所跡の小さな裏庭。
ここに、「日本最高峰富士山剣ヶ峰」の石碑がある。
12:13 日本最高所の石碑前で記念撮影
幸いにも人が少なかったので、記念撮影の順番待ちも少ない。
背景が明るすぎるので、フラッシュを忘れずに。
ついで、すぐ隣の白い直方体の前で記念撮影。
12:13 日本最高所の三角点 標高は3,775.63m
これこそ、国土地理院が設置した二等三角点「富士山」。
正式な日本最高点とは、まさにこの場所なのだ。
これから富士山に登る方には、ぜひこの三角点での記念撮影をオススメする。
ここで剣ヶ峰を引き返してはいけない。
実は、この奥に隠れた名所?があるのだ。
それは、測候所跡のベランダ?のような場所。
鉄骨のやぐらをくぐらないといけないため、大きな荷物は背負っていけない。
荷物を置き、細いキャットウォークを渡る。
数段のはしごを上り、櫓の骨組みをくぐると、そこにはさえぎるものが何もない絶景が開ける。
まるで空を飛んでいるような気分になれる。
ここでも記念写真を撮り、測候所裏庭に戻る。
そろそろ食事の準備をしよう。
最初から、剣ヶ峰でお昼を食べようと約束していた。
持って上がったおにぎり、浅漬け、カップラーメンを準備。
ガスボンベとコンロ、コッヘルを出して湯を沸かす。
640hPa前後しかない低気圧では、沸点は87℃くらいしかない。
ガスの火力が強いこともあって、数分で3人分の湯が沸く。
12:41 昼食
・・・うまい。
低い気温の影響で、冷えたおにぎり。
体が塩分を欲しているのか、塩辛く感じる浅漬け。
熱くないカップ麺。
よくよく考えてみればうまいはずのないものだが、ここではなんでもうまい。
滋味。
体がどんどんエネルギーを吸収していくのを感じる。
食後、もう一度湯を沸かし、今度はコーヒーを淹れる。ココアもある。
コーヒーをドリップする際の酸味と苦味の混ざった香りに、少しクラッとする。
山頂でのレギュラーコーヒーほどうまいものはない。
3人分のカップ麺とコーヒーを作ったおかげで、背負ってきた水が減り、荷が1.5kgほど軽くなった。
12:55 山頂
山頂には次々と人がやってきて、そして降りていく。
うち、外国人の比率はおよそ一割。
そのうち半数以上は軍人。きっとキャンプ・フジからやってきたに違いない。
彼らはガシガシ登ってきて、ズンズン降りていく。
ここで昼食を取る軍人もいるが、食事はMREレーションとスポーツドリンク。。。てきぱきと加熱してさっさと食べ、すぐに撤収して去っていった。
・・・なんというか、、、いろんな意味で日本人とは違う。
そりゃ戦争しても勝てんはずだわ・・・
それにしても、ここはまさに天上の別天地。
日本であって日本らしくない場所。
景色も、気候も、インフラも。(ただし、DoCoMoのmovaは富士登山道全域で使える)
自分の写真がほとんどないことに気付いてしまったので、写真を撮ってもらう。
13:20 目測での最高地点に足をかける
・・・なんというか、重装備。
写真では分かりにくいが、この高度から見上げる空は、蒼空。
地上から見上げる空より遥かに深い青だ。
結局、剣ヶ峰に1時間滞在していた。
そろそろ「お鉢めぐり」(火口一周)して帰りますか!
ということで、登ってきた道とは反対側の道を下り、剣ヶ峰を後にする。
・・・これが重大な間違いだったことに気づいたのは、40分後のことだった。
続く。
つもりだったけど、一気に書いちまおう。φ( ̄∇ ̄o)
剣ヶ峰から火口の西、北と回り込む。
さきほど摂った食事とコーヒーの水分で、胃が重い。
ちょっとの登りが堪える。もう歳か?
13:55 お鉢めぐり。火口の北側より東京方面を望む
こうなってくると、天気がいいことが恨めしく思う。
少しは雲に巻かれて涼しい気分を味わいたい。
山頂の気温は10℃ほどしかないが、紫外線量は地上とは比較にならないほど強く、日射もきついため、あまり涼しいとは感じない。体感温度は、日向で20℃くらい。
13:56 吉田口登山道のゴール地点
お鉢を半周したところで、富士登山の表玄関、山梨県側「吉田口登山道」のゴール地点に着いた。いたっきいはこのルートを、ご来光登山(夜間登山)で登ったことがある。明け方の富士山頂付近は、いつも耐え難いほどに寒い。
13:57 天空の街
さすがに表玄関だけあって、富士宮口登山道よりも吉田口登山道の山小屋、土産物屋のほうがにぎわっている。建物の風貌や、眼下をゆったりと流れる雲を見ていると、ここはチベットかどこかの町かと思う。ヤクザは目立つが、ヤクが歩いていてもあまり違和感はなさそうだ。
さて、上の写真をよく見て欲しい。
奥につながる道があるが、人が誰も通っていないのがお分かりだろうか?
・・・そう。
あろうことか通路の一部が崩落し、通行止になっていたのだ。( ;_;)
ここをまっすぐ通行できた場合、浅間大社まで約15分。
Uターンし、もう一度剣ヶ峰を経由して浅間大社まで戻った場合、約40分。
普段なら、25分くらいの余分な歩行など気にならない。
しかし、ここは標高3,700m以上。ほんの1m高度を稼ぐのに、ゼエゼエ喘ぐほどきついのだ。
あの剣ヶ峰にもう一度登らないといけないと考えると、モチベーションが急激に下がってくる。
一瞬、このまま吉田口に下りてしまおうか?という考えも脳裏をよぎる。
しかし、それをしたらクルマをとりに行くのに3時間以上かかってしまうのだ。その選択は現実的ではない。
つまり、戻るしかない。。。il||li _| ̄|○ il||li
14:10。
意を決して引き返す。
O橋嬢、T田くん、ゴメンナサイ。
お鉢をめぐろうと言い出したのは私です(((((;_ _)コソコソ
14:36 再び剣ヶ峰に挑戦
しかし、同じ日に二度も剣ヶ峰に登るとは思わなんだ・・・(;´д`)トホホ
喘ぎながらゆっくり登っていると、海兵隊員たちが走って追い越していった。
なんて奴らだ。。。
14:49「馬の背」を下る
馬の背は、登りより下りのほうが怖い。
足元の砂は、抵抗なくズルズルと崩れていく。ストックと手すりをうまく使わないと、あっという間にひっくり返りそう。。。
15:00。
下山開始。
日帰り登山で、こんな遅い時間に下り始めたことは過去に一度もない。
日が暮れないうちに降りるよう、ペースには注意しよう。
下りは、実は登りよりもテクニックが必要。
ひざのクッションとストックをうまく使って足の負担を最小限にしないと、ひざや足首の力が抜けて転んだり、ひざを痛めたりすることがあるからだ。
一般に、登山での事故やケガは下りで起こる。
体力をあまり使わないとはいえ、気は抜いてはいけない。
休憩は、30分に一度くらいで十分。
この時間に昇ってくる人も少ないため、文字どおり一気に(とはいっても駆け下りているわけではない)下ることができる。
遥か下に見えていた雲が、少しずつ近づいてくる。
五合目の駐車場が見えてくると、富士登山もいよいよ終盤。
16:24 元祖七合目「山口山荘」より
毎年、下山中楽しみにしていることがある。
それは、新六合目の山小屋でラムネを飲むこと。
なぜか五合目ではなく、六合目。
しかしもはや恒例行事なのだ。
17:13。
ペースを崩すことなく、新六合目「宝永山荘」に到着。
さっそくラムネを3本購入。
みんなお疲れさま。
乾杯 (^O^)/☆\(^_^ )
一気に喉に流し込む。喉が灼けるが、無視する。文字どおり一息で飲み込む。
さて、ここからは遊歩道のような登山道を10分歩くだけ。
ここで怪我をしないように気をつけながら、のんびり降りよう。
17:58 無事下山
ちょうど10分で、五合目到着。
今回も全員が登頂し、ケガもなく戻ってきた。正直ホッとした。
これで富士登山は6回。
登頂成功率は100%を維持している。
【参考】GPSデータ
下の図は、いたっきいがザックに付けていたGPSのデータを、
3D地図ナビゲータ「カシミール3D」に重ねたもの。
クリックで詳細表示
・左 :軌跡表示(赤いライン)
・中央上:歩行時間を横軸、標高を縦軸にグラフ化したもの
・中央下:GPSデータ表示(反転している部分は山頂到達時)
・右 :軌跡を3D表示した「カシバード」機能
今日一日楽しませてくれた富士山と天候、そして一緒に登った仲間に感謝♪
クルマに戻り着替える。
すでにO嬢は夕食に何を食べるかの検討に余念がなく、またT君はどこの温泉に行くか、そればかりが気がかりなようだった。
いたっきいは、これから東京まで運転していくその長さを思うとちょっと気が滅入っていたのだが。。。
・・・というわけで前言撤回。
今日一日楽しませてくれた富士山と天候に感謝♪
そして一緒に登った能天気な仲間に、ちょっと殺意。
寿司でした。回ってるやつ
ちょっとおいらも富士山登山前向きに考えようかな…って思い出したよ!
ただ、体力作りが事前に必要かな…と再確認…
普段、何時間も歩く事ってないし、それ以前に上るなんて…(爆)
普段なら間違いなく、回避してますから…(笑)
トイレは本当に料金払ってほしいですね。
富士山の標高にちなんで、奮発して377円とか(ちょっと多すぎ?笑)
やっぱり富士山は日本一!登る人も天晴れ、日本一!と思いました☆
登っている最中は無言なので、そのぶん余計な思考がはたらくというのもあるんでしょうけど。新しい境地を開くために修験者たちが山に篭ったのが、少し分かる気がしました。
■どんちゃんさん
山にはラクな登り方というのがあるんです。
言葉では表現しにくいのですが、実践すると足の疲れ方は格段に違うはず。
今度お会いしたときに、(覚えていれば)お教えしましょう。
それを知ってからちょっと訓練すれば、富士山は難しい山ではありませんよ。
富士山の疲労度は、どんちゃんさんの住んでいる近くだと、大山が近いです。
気圧は違いますが、標高差や登山道の斜度などが似ています。
まずは大山に挑戦してみるのもいいかもしれませんね。
■仮眠ライダー55さん
富士登山道はトイレの整備も急速に進んで、登るたびに快適になっていきます。
山小屋も行政も、本気で取り組んでいますね。
登山者もその努力に敬意を払うべきでしょう。
それにしても、3776円ではなくて377円というところが絶妙ですね(^_^;)
じゃあ、5合目なら250円、七合目なら300円、9合目なら340円ですか。
標高を体感できていいですが、トイレのペース配分も考えないといけなくなりますねw
■「さ」さん
まいど。
今度姫路あたりで雪彦山にでも登ってみますか?
結構テクニカルな岩登りも楽しめますよ。