FMシアター 選「ほぞ」 令和2年度文化庁芸術祭優秀賞受賞
2021年7月3日(土) 午後10:50配信終了
聴き逃し | NHKラジオ らじる★らじる
令和2年度文化庁芸術祭優秀賞受賞作
ほぞ(再)
舞台は明治、記憶を失いつつある指物師の夫と支える妻の愛の物語
【NHK FM】
2021年6月26日 午後10時~午後10時50分(全1回)
(初回放送:2020年7月11日)
※配信期間は放送から1週間
【出演者】和田正人 伊藤歩 大鷹明良 野沢由香里 名越志保 酒井晴人 古河耕史 鳥居功太郎
【作】水城孝敬
【医事考証】遠藤英俊
【指物考証】戸田敏夫
【風俗考証】谷直樹
【スタッフ】
演出:東山充裕
技術:山賀勉
音響効果:菅野秀典
【あらすじ】
明治29年、たんすや鏡台などの家具を作る指物師の基一(39)は、ひどい物忘れのために客の顔や注文がわからなくなることがたびたびあった。心配した妻のタエ(37)は、基一を診療所に連れて行くが原因がわからない。ついには放火事件を起こし、基一は自宅の座敷牢に監禁されることになってしまう。
タエは毎日食事を届け励まし続けるが、基一は、「指物が作れなければ、ただの用なしだ」と卑屈になっていく。そんなある日、基一はタエと結婚した頃のことを思い出す。それはタエに、「指物を作るときは、『ほぞ』という凹凸を彫って板と板をつなぐんです。その『ほぞ』がピタッとはまれば、金釘を使うより頑丈な家具が出来上がります。だから、その、『ほぞ』みたいに、タエさんとも頑丈にピタッと離れないよう努めますんで」と、約束したことだった。
しかし病は進行し、基一はタエを見ても誰だかわからなくなってしまう…。
2019年度「創作ラジオドラマ大賞」佳作作品のドラマ化。
※ 印象に残るせりふ
どこかおかしくても基一さんは基一さんです
このひとといるとこころが安らぐ このひとといると幸せな気分になる
こんな嬉しそうな顔が見られるだけで充分
わたしがお前さんの代わりに何もかも覚えておきます
※ ほぞ:夫婦というより、ひととひととの強い絆の象徴
ドラマの最終場面で、主人公夫婦の間に新たな絆が生まれ始める状況を描き、ハッピーエンドを示唆して終わります。
この点がこのドラマの欠陥ではないかと思いました。基一の'おかしさ'が募ってゆく一方であるにもかかわらず、彼がタエとの絆が深くなってゆきつつあることを明確に認識しているからです。
とまれ、優れた脚本、演出、効果音と声優の好演とが相まって、愛の世界が緊密に展開されているドラマだと思います。
※ 時代設定を明治とする必然性は無いのではないかとも思いました。
※ いっしょにいると、こころが安らぐひとが、ごくごく稀にいます。いわば'癒しキャラ。そういうひとは、しばしば「アンタの顔を見ればほっこりする」と云われています。癒しキャラは、同時に'愛されキャラ'でもあるようです。