楽園づくり ~わが家のチェンマイ移住日記~

日本とタイで別々に生活してきた私たち家族は、チェンマイに家を建てて一緒に暮らし始めました。日常の出来事を綴っていきます。

タイの医療保険

2011-07-09 23:00:43 | タイの医療

「きょうのブログ、読んでみて面白かった?」と聞いたら、「そうねえ、あしたのブログより面白くなかった。」そう言われるようなブログを目指しているのですが、きょうはとても地味~~~なお話です。

日本人がタイに移住した場合、どんな保険が使えるか?これについては、私自身はこれまで短期滞在しか経験がないので、あまりよく知りません。そんなこと以前に、大体わたしは生命保険にも入ってませんし、多くの裕福な日本人とはちょいと違って、地震保険にも入っていません。これを機に、なんて気もさらさらありません。まさか社宅に保険をかけるわけには参りませんから。

さて、タイで保険を使った体験を言いますと、自分自身は海外で使える傷病保険のついたクレジットカードを1枚持っています。ゴールドカードというやつで、わたしの唯一の誇りです。いつもは使わないので、引出の中で埃から守られています。これを使って、例のバンコク病院にかかったことが1度あります。風邪程度でしたが、感激するくらいものすごく丁寧に診察してくれた記憶があります。大袈裟に言えば、何かVIPになったような気分です。

海外傷病保険は制限はあるものの、基本的に完全無料です。クレジットカード会社が指定するタイのメディカルヘルプライン(バンコク)にこれまた無料電話をかけると、「もしもし、どうされましたか?」と、さも親身になって世話してくれそうな日本人(男性。運が良ければタイのプーインということは絶対ありえません。)が電話に出ます。

病状を説明すると、「それはそれはお困りでしょう。さてどちらの病院になさいますか?」といよいよ親切味に深みが加わってまいります。行きたい病院がなければ、「お任せで」と言えば、「じゃあフルコースでよろしいですね?」となるわけがなく、「こちらでご紹介できるのは、〇〇ちゃんと、△△ちゃん。」となるわけもなく、「××病院はどうですか?」と、いよいよ核心に迫ってきます。

もしサミティウェートとか何たらとか、高級病院の名前をうろ覚えでも知っていれば、遠慮なく言ってしまえばそれで決まりです。わからなければ「バンコクでお願いします」と言えば簡単です。最上級の私立病院でないと、逆に受診できません。そうして予約してから病院へ行けばよいだけです。多くの方が体験されていると思います。ただ、これは長期滞在には使えません。いつから滞在しているかということを必ず聞かれますから。

もし「昨日からです。」と答えたらどうなるか?カード会社も、提携している保険会社も出入国管理局とつるんでいるわけがないので、調べようがないと思いますが、さてどうなるのでしょう??「聞くだけ聞いてみた」という奴でしょうか。あ、そうそう。病院の受付でパスポートの提示を求められたような記憶が・・・・。でも1000バーツ札を1枚ちらつかせればどうなることやら。。。。。!

もし自費で受診した場合は、日本の健康保険に加入していれば(勿論日本は皆保険ですから、住民票が日本にある人は、100%加入しているはずですね。)、日本から持参した所定の書式に、必要事項をタイの医師に記入してもらい、領収証をもらっておけば、基本的には7割の還付が帰国後受けられます。用紙をもっていなければ一巻の終わりです。

さて、ここで書きたかったのはそれではなく、なぜタイ国民である妻が「30バーツ医療保険」を使わなかったか、ということだったことを思い出しました。

ご存じ「30バーツ医療保険」はタクシン前首相が創設したものです。タクシンの目玉政策のひとつでした。主に農村部の貧困層がきちんと医療を受けられるように、どんな診療を受けても、たとえば乳がんの手術をしたとしても、基本的には30バーツ(100円以内)で済むということになるのでしょう。事実、カンペンペットに住む妻の母親は、椎間板ヘルニアのような病気が悪化して手術を受けましたが、当然この30バーツ保険を使いました。親戚一同もみんなこれを使います。タイの住民登録票兼戸籍ともいうべき「タビアンバーン」のある役場で手続きすれば、タイ国民ならとくに所得に関係なく誰でも加入できるようです。(ただ、所得のある程度高いタイ人、公務員などは別の便利な保険があると聞いたことがあります。)

実は妻も3人の子供もこの30バーツ保健に加入しています。小学校5年の息子は日本とタイの二重国籍ですが、当然これに加入しています。日本の健康保険でも私の扶養家族になっていますが、いちいち自己負担してから証明をもらうのが面倒なので、いつもタイの30バーツ保険を使っています。

30バーツ保険というのは、実情を知らない人には日本の保険制度よりも手厚いものを思われるかもしれません。自己負担が格段に低いからです。でもそんなに便利でもありません。確かに自己負担は少ないのですが、次のような問題(というより制約というべきか)があります。

まず、この保険は指定された医療機関1か所でしか使えません。バンコクに住民票のある人が、チェンマイに旅行して病気になったら、この保険は全く使えません。

次に、私立病院ではまったく使えません。金持ちは私的な医療保険に加入できますから、バンコク病院のようなところに入院しても、全額自己負担ということはありません。私的保険に入れるはずもない貧乏人は、逆にものすごく高くつきます。

また、たとえばバンコクに住んでいても、指定された国公立病院あるいは診療所は、住所地の近くの1か所に限られます。がんなどの大きな病気になって、大きな国立病院で治療を受けようとすれば、役場が指定した診療所なり病院から「うちでは手に負えないので、どこどこの病院で治療を受ける必要がある」という趣旨の証明書を書いてもらう必要があります。そうでないと大きな病院は受診できません。

つまり、どんな病気か分からないから一度大病院で精密検査を受けたいと思っても、叶わないことが多いのです。それが叶うためには診断がはっきりついていることが必要です。ですから、手遅れになることがものすごく多いのです。この点が残念ながら30バーツ保険の最大の欠陥ではないかと私は思います。

それからもうひとつ、妻の経験で分かったのですが、30バーツ保険と自費診療では待機時間や治療内容が変わります。例えばですが、30バーツ保険では3か月も手術を待たなければならないケースでも、「自費診療です」と言えば、もっと早く順番が回ってくる可能性が大きいですし、さらに治療内容も変わります。

妻の場合、チュラロンコーン病院での抗がん剤治療でしたが、使用される抗がん剤そのものは同じでも、副作用を抑える薬?(何なのか正確には分かりませんでしたが)を同時に使おうとすると、それは保険が適用されないということが起こるのです。妻のように自費だと一番良い治療を選択できますが、30バーツ保険では選択の余地がなくなるのです。ここらは、日本の保険制度とはかなり違っているようです。

つまり30バーツ保険は、確かに貧困を理由に医者にかかることもできなかった人たちには大いなる福音でした。その恩恵は絶大でした。ただその結果、国家財政の赤字という問題がやはり起こっていますし、相変わらず持てる者と持たざる者の格差が存在します。ある人に言わせると、30バーツ保険の医療は、人間を人間とも思っていないような、ひどい扱いの医療だといいます。アメリカなどでは、急患でもお金がなければ診てくれないことが多いのですが、タイでも30バーツ保険なら、たとえ命にかかわる病気でも、すぐに治療してもらえるとは限らないということです。

これは、妻が多くの知り合いから聞いている話ですから、信ぴょう性がどの程度あるのか自信はありません。ただ言いたかったのは、今後はどうなっていくのか分かりませんが、いくら新しい政権が頑張ったとしても、タイの格差社会が一朝一夕に是正されることはないという事実を、この30バーツ保険の実態が示していると思うのです。

 

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