昨夜、Bangkok Postの記事を下敷きに、政府を訴える動きと、前首相のアビシットさんについて書きましたが、今日、ライバル紙のThe Nationが、あとを追う形で、詳細な記事を掲載しています。
「アビシットは政府を訴えるグループを支持」
http://www.nationmultimedia.com/politics/Abhisit-backs-group-set-to-sue-the-govt-30169741.html
昨日私が読んだバンコクポストよりも、ニュアンスがうまく伝わってきますので、ご紹介しておきます。というのは、日本だと政権側に少しでも問題があれば、野党は鬼の首を取ったように非難の語調を強め、タイ人を、じゃなくて、退陣を迫る、少なくとも迫るポーズをとるのが普通です。ところが野党党首のアビシットさんは、"政治家とは思えないような" 正論を吐いています。
アビシットさんが言っているのは、大体こういうことです。「政府側にどのようなミスがあったのか民間機関の調査を行うべきであり、また政府を訴えようとする側の、訴える権利を邪魔してはいけない。」「多くの人は、今回の洪水は自然だけのせいではなく、政府の対応とも関係があると信じている。当局は予想外の雨が原因だと言うが、上流のダムに水を貯めることに拘りすぎた。」「この国家の危機にあたって、政府は問題を"政治化" させないように求める。政府はBMA(バンコク都庁)を批判し続けてきたが、協力し合うべきであり、政治的に争ってはいけない。」
そしてアビシットさんは、「インラック首相が辞任したり、議会を解散する必要はなく、今は危機に対応すべきである」と言っています。そして、「首相は統治とコミュニケーションの能力を発揮して国家を運営し、国をひとつにし、タイ国民と世界の人々の信頼を取り戻すべき時である。」とアドバイスしました。
こういうのを「モラルサポート」と言います。日本でこの「モラルサポート」のような発言ができる人格をもった政治家はきわめて少なくなったのではないでしょうか。野党民主党の一部からも、首相の辞任要求が出ていたようですが、党首がピシッと押さえこみ、対立する政党のインラック首相を激励したことになります。バンコクポストによると、インラック首相も昨日の議会で、アビシットさんへの謝辞を述べたと伝えられています。
政治の世界のことですから、裏側で何があるのか窺い知ることはできません。私は一連の記事を読んでいて、掛け値なしの発言であってほしいと思いました。洪水が牙をむくにしたがって、インラック政権とバンコク都庁の対立が際立って行った経緯を、毎日のようにタイの報道で読むにつけ、日本人である私まで、ものすごく悲しい気持ちになっていったからです。正直、心が痛みました。
政治家どうしが大義のない政争を続けていると、国民の心まで次第次第に蝕まれていく、と私は考えています。正々堂々の闘いでなく、足の引っ張り合いや、単なる非難合戦は、それを外野で見ている人の心も知らず知らずに痛めつけます。たとえば関係のない国でも、戦争をしている様を見ると、普通の人なら心が傷つくのと同じことです。
とにかくアビシットさんの超然とした姿勢は感動ものだと思います。一点の疑問を除いて。それは、何で今というタイミングでそんな発言をするのか、ということです。対応の拙さからインラック政権全体の威信が地に堕ちた今になって言うのか。いや、力がなくなったと見たからこそ、ええかっこしようとしているのか・・・・・そこだけは、「アビシットさんよ、あんたもやっぱり政治屋なんだね」と言いたくなります。
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