昨日行われたタイの総選挙で、タクシン派のタイ貢献党が地滑り的に圧勝しました。
日本ではさほど一般の関心を集めるニュースではないのですが、世界中のメディアがかなり大きく、しかも多角的に取り上げているようです。日本とタイの経済関係は、ご存じのとおり双方にとって切っても切れない深い関係にあります。政治面だけでなく、タイ経済の今後がどうなっていくのか、またそれが日本にどう影響するのか、しないのか。今後の展望を分析してほしいところです。「タイで初の女性首相誕生へ」ばかりでは、あまりに皮相的です。国際担当の記者の皆様、がんばってください。
さて、話は昨年の5月にさかのぼります。昨日は、妻の病気が乳がんと分かり、バンコク病院で手術を受けることに決めたところまで書きました。
がんと分かってから手術を受けられるまでの待機期間はどれくらいなのでしょうか?
正確なことは医療関係者でもない私には分からないのですが、実感として、国の違いよりも病院による差が大きいようです。日本では一般的に進行の遅いといわれる乳がんの場合、大きな病院では1か月くらいではないでしょうか。タイではチュラロンコンなどの有名国立病院の待機期間は2か月とも3か月とも言われています。しかし、私立病院では逆に恐ろしく早いのです。
とくにバンコク病院は私の予想以上でした。5月13日に検査結果が明らかになり、6日後の19日には手術が行われました。執刀したのはもちろん乳がん専門の外科医で、小柄で若く見えるが実際は30代後半か40代前半と思われるD先生です。5月8日、外来で初めて妻を診察した女性医師です。そして「脇の下で何かが動いている感じ」と妻が言っていたことで心配されたリンパ節への転移がわずかに認められ、リンパ節廓清も同時に行われました。
日本では、手術の規模や開始時間にもよるのでしょうが、大体は手術の前日に入院させられます。私も以前、比較的簡単と思われる副鼻腔炎の内視鏡手術を某大学病院で受けたとき、前日朝からの入院でした。そして乳がん手術の平均入院日数は1週間から10日くらいと言われています。ところが信じられないことに、妻はたった1泊2日で退院したのです。
それがタイ式なのか、それともバンコク病院式なのか、それは定かではありません。タイと日本で、麻酔を含めた手術の方式が大きく異なるとは考えられません。こと乳がんに関する限り、日本もタイも基本的にはアメリカ流の治療を取り入れているからです。
もし違いがあるとすれば、そして実際そうだったのですが、術後管理を病院で過保護に行うか、それとも自宅で自己責任でやるかの違いです。もちろん前者は日本です。アメリカなど多くの国々は後者を選択できるようになっていると私は思います。そのちがいは日本の国民皆保険制度と関係があることは明白ですが、話が更にややこしくなるので、これ以上は触れません。
乳がんの場合、乳房を全部取ってしまうか温存するかによっても入院日数は変わると思いますが、通常入院日数が伸びるのはリンパ節をとった場合のようです。
廓清したリンパ節の数にかかわらず、術後は脇の下に管を差し込んでドレーンを装着しなければなりません。ドレーンとは、日本酒の徳利を太くしたような瓶なのですが、そこに少しずつリンパ液が溜まってきます。これが溜まらなくなるまで通常5日から1週間かかります。インターネットで調べてみたのですが、日本ではドレーンが取れる前に退院させることはまず考えられません。
妻の手術は入院した日の午後に行われ、短時間で終わりました。
私たちは2センチの早期がんと言われたので、温存手術を選択しました。がんの進行度を示すステージは、多分「Ⅱ」ではないかと思われましたが、正確には術後の諸検査を経ないと確定しません。比較的早期のがんであっても、一つでもリンパ節転移がある場合は、術後の抗がん剤治療を行います。また温存手術を選んだ場合は、抗がん剤のあと放射線照射も行うのが世界共通と言っていい治療基準です。
タイの病院は病室への携帯持ち込みに何の制限もありません。後で経験することになる国立病院の20人部屋であってもです。もちろんこのときは高級ホテル並みの個室で、手術が終わると、誰に遠慮することもなく携帯で話すことができました。そしたら「明日退院できるかもしれない」と妻が言うのです。もちろんどう考えても冗談としか思えませんでした。
感染のリスクを考慮すれば、1週間くらいの入院が妥当です。しかし妻のように、手術の翌日から自宅に帰って生活をしようと思えば、できないことはなかったのです。本人にしてみれば、ぶらさげたドレーンが見るからに邪魔ですし、ホントは楽ではなかったでしょう。でも早く退院できたことを妻はものすごく喜んでいました。
医療のことを考えるとき、あまりお金のことに言及しすぎるのはどうかと思いますが、術後ケアに関する病院あるいは医師の方針ひとつで、また本人の意志ひとつで、その国の医療費は大きく変わってくるのではないでしょうか。そして個人にとっても、バンコク病院のようにタイとは思えない高額医療費のかかる病院では、入院日数が短いことはとてもメリットがあるのです。
さてこのあと、退院後予期せぬ展開になった妻の経過と、かかった医療費のことを書いておこうと思います。
妻はタクシン前首相が創設した国の医療保険、いわゆる「30バーツ保険」に入ってはいるのですが、私立のバンコク病院はもちろん、このあと登場する国立のチュラロンコン病院でも、すべて自費診療を選択しました。
その理由も書くことにします。もしタイで大きな病気になったらどうなるか、それを考える参考になればと思います。
記事更新の励みにするために、ブログ・ランキングに参加しております。
僕も日本にいる父も、がんばってこのブログを続けたいと思います。
応援していただけるようでしたら、ポチッと3つともクリックをよろしくお願いします。
↓↓