歩兵第115聯隊第三大隊 南京攻略戦闘詳報(昭和12年12月10日〜12月13日)

2018年04月23日 14時59分25秒 | 1937年 南京攻略...

十二月十二日(要図其の四)
一、夜更るに及ひ敵の銃声止み午前三時頃より逐次退却の微あり敵は第一線に一部を残し退却しつゝあるものゝ如し
午前五時攻撃前進に当り昨日来戦闘地混淆せるを整理すへきを第二大隊長と協定す
諸斥候の報告と大隊副官自ら偵察したる結果に基き本道西側附近より天明前に於て前面の敵陣地を突破し周家凹東側高地に突進一挙南京城に突入を決し直ちに各別命令に依り左の如く前進の体制を整ふ
2/1(2分の1)MG歩兵砲は現在地に於て大隊の前面の陣地奪取を掩護したる後速に第一線に進出せしむ
前進の基準大隊本部
本朝将兵は将に数刻後に迫れる南京城頭翩翻として旭に輝く日章旗を胸に描きて士気最高潮に達す
午前六時四十分隊長自ら第一線に立ちて部隊は前進を開始す稜線を下り谷地を横断し工兵隊の鉄条網隠密破壊に依り前進し殆んと抵抗を受くる事なく流石に頑強を極めし紅土山の陣地を突破し七時二十分曽家門西の線に進出せり
二、工兵小隊は予備として控置し機関銃(一小欠)を以て普家門西北側高地にありて周家凹東側高地及回花営稜線の敵を制圧射撃に任せしめ大隊の攻撃前進を掩護せしめ一斉に周家凹東側高地に向ひ攻撃を開始す
時漸く天明となり彼我の銃声一時に起り特に周家凹の敵陣地及回花営方面よりの熾烈なる斜射を冒にしつゝ午前八時二十分大隊本部及右第一線たる第十一中隊MG一小隊は周家凹東側高地東端を占領し予備隊たる第十二中隊又第一線に追攝して高地端に進出す
然るに左第十中隊は回家営東北側稜線敵陣地よりの射撃猛烈にして前進頗る困難となり苦境に立つに至る茲に於て予備隊たる第十二中隊(一小欠)を一時第十一中隊の左に展開せしめ機関銃協力の下に逐に周家凹の高地を完全に占領す待望の南京城壁は近く四〇〇米の眼前にあり
付近一帯の陣地は雨花台要塞の最後の陣地として即ち南京城外最後の防御戦として防備極めて堅固にして錯雑せる起伏地を利用して縦横に三兵壕交通壕「とーちか」陣地を有し然もぺとん製の永久的とーちか多し大隊当面の敵約二千必死となりて頑強に抵抗し銃砲火の猛烈なる乱射乱撃は其の極に達し我熾烈なる銃砲火と相和して天地を震動せしむ
加ふるに我左翼円上雨花台一帯の制高陣地及回花営稜線の敵尚頑強にして此の方面よりする大隊の左側背に対する猛烈なる射撃は大隊の最も苦痛とせる所なり而して其の位置適確に知るを得さるも敵迫撃砲は城壁附近にあるものゝ如く猛威を振ひ常に大隊長の手足となりて第一線に馳駆しありり大隊本部 小林伍長伝令 小林上等兵を始め各隊の死傷愈々続出す
此の間大隊長信澤少佐は悲壮の決心堅く黙々として悠々焦らさる中に常に自ら陣頭に立ち率先戦闘を指揮し将兵又大隊長の勇姿を見る時只必勝の信念に燃へて凡ゆる手段を盡し力戦奮闘一意戦闘の進捗に努む
時に機関銃第一小隊は猛烈なる敵弾を冒して右に左に陣地を返還しつゝ我力最も苦痛とする左前方「とーちか」及其の前方陣地に対し有効適切なる猛射を続く
午前九時稍々過より左第一線たる第二大隊逐次進出するに及ひこれと連繋し第10中隊を逐次第一線に招致す右第百五十聯隊著しく攻撃遅滞し昨日来状況不明なり
此の頃我か配属歩兵砲は曽家門西側附近に進出して大隊当面の敵に対し適切なる射撃を開始す
砲兵及聯隊砲又再三目標と弾著を通報したる結果弾著極めて良好なり
然れ共必死の敵は我右翼方面は二百米左翼方面は六、七十米の陣地にありて接戦を演しつゝ尚頑強に抵抗を続け迫撃砲弾と共に時々榴霰弾頭上に炸裂す(高射砲なるものゝ如し)午前十時四十分頃に至り敵は其の左翼及び後方陣地に於て動揺の色を看取し得るに至る大隊長信澤少佐は第一線を激励し勇躍前進前方小高き墓地に進出したる刹那左前方「とーちか」方面より来る敵弾左肩より胸部を貫き其の場に倒る附近大隊本部諸官直ちに抱き上けて呼へとも声なく壮烈極る戦死を遂けらる時十一時五分なり
上陸以来凡ゆる艱難困苦に遭遇するや常に率先躬行身を以て当り豪胆沈勇部下をして常に泰山の安きを感せしめ全戦闘一度として参加せさるはなく聯隊の唯一の大隊長として聯隊長の信頼厚く戦に臨むや状況判断の適切と鋭敏なる戦機の看破、卓越なる指揮は実に天才的にして常に戦局を打開して活路を求め他を導き闊達の気宇円滑の雅量部下に対する愛情は実に慈父の愛に勝りて将兵の信望を一身に集め枚挙に遑なき幾多多大なる功績を残し殊に十日以来の南京攻略戦に於ける偉勲は絶大なるものあり南京入城寸前の死は誠に惜みても余りあり
将兵一同悲愴の決意益々堅く奮戦力闘只管に突入の時期を待つ
三、敵の右翼及後方は逐次西方に退却するを目撃す即ち電話を以て聯隊長に状況及大隊長戦死を報告すると共に砲兵の射程延伸と城壁に対する破壊射撃を要求す同時大隊副官金栗大尉は聯隊長より左記電話命令を受領す
貴官は厳に大隊長の喪を秘し其の意図に依り大隊を指揮し一挙に南京城に向ひ突入すへし
爾後大隊副官大隊の戦闘を指揮す
正午左記大隊命令を下達す
一、大隊は概ね現在の態勢を以て南京城東南角鉄道門附近に突入せんとす
独立機関銃は現在地に在りて左前の敵を制圧大隊の戦闘に協力
二、第十一中隊はあのをへてあの附近(現地指示城壁東南角)
第十中隊はあの二軒家付近を経て鉄道門に向ひ突入すへし
機関銃は一け小隊を以て大隊の稜線通過を掩護せしめたる後速に第一線協力中隊に追求すへし
三、大隊本部は二軒家付近を経て第一線両中隊の中央を前進す予備隊は第一線協力中隊に追及すへし
四、前進の時期は別命す但第十一中隊は状況之を許せは逐次前進し本道右側あの北端の線に進出し城外特に「くりーく」の状況を偵察すへし
敵の左翼は逐次退却を開始し我猛射にいより残滅敵死傷を蒙りつゝも尚左前高地特に「とーちか」陣地の敵は更に動揺の色なし
協力砲兵は一斉に東南角城壁に向ひ射撃を開始し見事命中すれとも城壁堅固にして僅かに弾瘡を止むるのみにして之か破壊の為には相当の弾数を要す即ち電話を以て約百米左鉄道門附近に対する射撃を要求す
弾著左に移転するや其の効果頗る大なり
此の間右第十一中隊は巧みに地形を利用し本道北端の線に進出しありMG第二小隊又中隊長自ら指揮し独断第十一中隊方面より進出しつゝあり
然し共城壁の状況前述の如く破壊口未た完成されす
左大隊方面は敵の抵抗頑強にして尚前進困難の状況にあり右翼隣接部隊の状況依然不明なり現在地点より一挙に城壁に迫り余勢をかつて突入するにあらされは若し中途に於て前進困難に陥る如きことなからんか到底城壁突入の成功は難し大隊主力は極力前方「とーちか」及其両側陣地に據る敵の撲滅に努め前進の時機を待てり
暫くして十数発の砲弾鉄道門左上部に命中するや城壁に大なる崩壊の跡を見る前進の好機は正に来たれり第二大隊に前進を促すと共に大隊に前進を命するや満を持して待機せる第一線は十二時四十分怒濤の勢を以て一気に各々目標に向ひ驀進城壁に殺到す
四、部隊を城外遮蔽下に停め自ら数名を伴ひ偵察の結果「くりーく」は幅約四十米水深深く部隊の渡渉を許さす鉄道橋は一橋節約約七、八米焼却陥落しあり其の時駈着けたる工兵中隊長と共に研究の上破壊せられたる鉄道橋を利用し応用携帯橋に依る強硬架橋を成すに一決す
此の間偵察に伴ひたる大隊本部書記中島伍長、深津軍曹、伝令新井上等兵は独断身を躍らして「くりーく」を泳渡し前後して彼岸に達するや砲弾による破壊部より城壁に登攀し城壁を占領し日章旗及大隊旗を打振れり時二一時二十分なり
爾後彼岸橋脚に下り友軍の砲弾と敵弾に遮蔽して部隊の突入を待つ
第十二中隊牧田伍長二時頃泳渡により彼岸に達せり
城壁は高さ約二十米あり敵情要図(其の四の二)の如く之に據る敵は二段に設けられたる銃眼により瞰射する中に於も歩工共同の元に工兵中隊長の指揮により所持の電柱戸板等を蒐集し応用携帯橋の製作作業を進む作業間機関銃(第一中隊欠)及第一線中隊自動大器を以て城壁銃眼に據る敵特に機関銃に猛射を浴せ之を制圧し作業を掩護せしめ主力は極力遮蔽下に集結突撃を準備せしむ此の間四十数名の敗残兵は我か作業を妨害せんと第十二中隊の一部を以て之を撃滅せしむ
猛烈なる敵弾下にありて工兵隊の携帯橋製作作業著々進捗し午後二時三十分左記突入の命令を下達す(要図其の四の二)
左記
一、待望の南京入城寸刻の後に迫る大隊は工兵隊の架橋作業完了を待つて一挙城内に突入せんとす
二、突入順序第十中隊の一小隊 大隊本部 第十中隊の残部 第十二中隊 工兵隊残部とす
三、機関銃あの附近 第十二中隊自動火器の全部を以てあの附近予め陣地を占領し第一線の渡架突入を掩護したる後第一線に続き突入すへし
四、突入成功後第十中隊は鉄道及其の以西に対し第十二中隊は鉄道東側に対し地歩を確保すへし
然れとも状況に依りては確乎たる信念を以て独断善処すへし其他は臨機指示す
五、軍旗入城に際しては後続部隊は独断最善の処置を講し之を掩護すへし
六、大隊本部は城門城壁上に突入す
連隊本部は周家凹東方本道付近を前進中にして二時五十分連隊長より左記連絡在り
左記
一、御奮闘を祝す
二、軍旗入城の時期を報告せよ
三、部隊の限定に注意せよ
城門突入後は一角を確保し聯隊の名誉と功績を堅持すへし
諸状況を判断し概ね三時三十分には架橋突入し得ることを確信しこの旨連隊長に報告す
此の頃歩兵第百五十聯隊我大隊右側に集合し我が大隊の架橋を待機しあり
又第二大隊副官来り第三大隊に続行し渡河突入すへき旨を連絡す欺くて作業逐次進捗しつゝある時右第一線たりし第十一中隊より伝令来り第十一中隊は「くりーく」渡河不可能を知り戦車と協同し本道を南門方向に前進中優勢なる敵と遭遇し目下苦戦中なりとの報告を受く直ちに予備隊の位置にありし同中隊小此木小隊をして増援せしむると共に聯隊長に急報す
工兵隊の作業正に完成せんとする時機聯隊本部より手榴弾三百及発煙筒八十発の補給を受けたるは最も時宜に適したる処置にして突入成功に大なる功果をもたらしめたり
此の間歩兵砲兵の弾著良好にして効果第なりと雖も城壁上の敵の射撃は以前猛烈にして城門付近の破壊口も亦部隊の攀登未だ困難なり即ち電話を以て更に破壊口に対する射撃と歩兵投入(三時三十分)に当りては直ちに城門両側の敵の制圧射撃を実施され度き旨最後の連絡と了す
暫くして我砲弾五六発破壊口に命中するや著るしく破壊口拡大し工兵隊又架橋準備作業完了す時に三時三十分なり
茲に於て直ちに架橋を命し工兵は煙幕の展開と我重軽機関銃の援護射撃の下に強行架橋を敢行し見事成功す
門は鉄扉と土嚢とを以て堅く閉じ我が砲弾尚城門破壊口に集中しあり敵の乱射乱撃は其極に達し且猛烈に手榴弾を投擲し来る此の間所在の敵を漸く城壁外より逆襲し来る約百の敵を撃滅す百五十聯隊は我第十中隊に続きて渡橋前進し後方は両部隊相混淆するに至る
一瞬にして我砲弾左右に転移す金栗大尉は第十中隊長を叱咤激励し城門突破を命すると共に自ら率先本部及第十中隊の一部を率ひ破壊口より城壁上に向ひ突入す頭上より落下する敵手榴弾に加ふるに大小の石崩壊落下し攀登容易ならす前後相助け城壁上に近進し手榴弾を投し敵の辟易せる隙に乗し数敵を斃し午後三時五十分遂に城壁上を占領し城頭高く日章旗と我名誉ある第三大隊旗を翻せり一瞬の感激は全く例ふるにもなし
城壁上日章旗を仰きたる後方将兵は士気最高調に達す
而して城壁上破壊口附近に蝟集し数米を隔てゝ主として手榴弾を以て頑強に抵抗せる敵は我勇猛果敢なる突入により一部は東西城壁に主力は城内に(破壊口と相対し内壁には城内に通する段階部あり)混乱敗退せるも或は斬り或は手榴弾に依り殲滅的打撃を与ふ
此の紛戦と左右城壁よりの集中火猛烈にして我も亦死傷続出せり殊に敵は東側城壁武定門、西方城壁屈曲点の複郭陣地を拠点として猛烈なる支援射撃の下に執拗に逆襲し来れるも我は良く寡兵を以て沈着機先を制して力戦奮闘敵の企画を挫折せしめ戦ひ且左右相助け城壁の煉瓦を起して掩体を構築しつゝ歩々戦果を左右に拡張す
午後四時三十分頃城内突入部隊第十中隊の伝令来り状況を報告す即ち第十中隊は城壁上占領と殆ど同時工兵爆破班二回の爆破により鉄門を破壊し果敢なる突撃を敢行し先頭小隊長賀川少尉敵手榴弾により負傷せるを初め死傷十数名を生せるも屈することなく勇奮之努め忽ち附近の敵を撃滅して遂に城門を占領之を確保し前方家屋に據る敵を攻撃しゝ戦果の拡張に努め機関銃中隊及第十二中隊はくりーく通過掩護射撃の後機を失せす第一線中隊に続きて城門より突入し密接午後四時五十分頃状況を連隊長に筆記報告す
報告
一、完全に雨巷門を占領す
時計破壊のため確実ならさるも三時五十分なり
第百五十聯隊の名誉と信澤少佐の霊に報ゆるため日章旗と我第三大隊旗を完全に先頭第一番に城頭に翻すことを得て感激堪えす
二、現在の状況左記要図の如し
【図1248】
五時稍々過き聯隊予備隊たりし第九中隊の関口小隊入城し大隊の指揮に復皈す第一線各隊は逐次戦果を拡張し鉄道線路東側二軒家を占領し之を確保せり時漸く夜に入り暗黒中到る所接戦を演し又歩兵第百五十聯隊と混淆し部隊の整理困難なる状態なり此の間永井大尉能く附近部隊を区所し戦果の確保を努
城壁上に於ては狭隘にして兵力と行動の自由を得さると遮蔽すへき何ものもなく全然暴露せるとに乗し危機に瀕したることあるも協力一致能く占領地点を確保し暗黒迫るに掩体構築も進捗し敵の逆襲も稍衰ふるに到れるを以て大隊本部は六時三十分頃城内鉄道東側二軒家に前進す
午後七時頃電話により現在の状況を連隊長に報告す
午後七時三十分連隊長命令により機関重隊長永井大尉大隊長代理を命せられ爾後大隊を指揮す
午後十時頃に至り敵は更に東側城壁上下より逆襲し来れるも機先を制し之を撃退し爾後概ね要図態勢にありて夜を徹す而して敵は夜更るに及ひ逐次退却せるものゝ如く銃声漸次衰ふるに到る
午後十時三十分頃聯隊命令第六六号掃討に関する命令を受領す
五、第十一中隊は所命の城壁東南角に向ひ前進中折柄前進し来る戦車隊(戦車第二聯隊長細見中佐指揮/当方補:戦車第五大隊=軍神・西住戦車部隊)と協力し午後一時三十分図上A点に進出し東南門に通する橋梁破壊せられあるを知るや左折して南門に向ふ目的を以て前進し途中城壁上より猛烈なる集中火を受くるも之に制圧射撃を加へつゝ戦車と共に強行約四百米の距離を突破し午後二時兵工廠前貯油庫を占領す然るに北方城壁及「クリーク」両岸よりの小銃、軽機、迫撃砲の猛烈なる集中火に加ふる兵工廠階上より手榴弾の攻撃を受け一時苦境に立つに至り此の間率先勇猛能く部下の士気を鼓舞し奮戦しありし小隊長小林曹長胸部に敵弾を受け壮烈なる戦死を遂けたる外死傷者六名を生せるも屈することなく奮戦一時間城壁上下の敵を制圧沈黙せしめ而して工廠の兵力侮る可からさるものあり南門に向ひ通過困難なると且つ兵工廠の重要性に鑑み之を占領するに決し優先力闘午後二時二十分工兵隊の学はに依り門扉を破壊し廠内に突入するや敵は遺棄死体七十五を残し西南方に潰走せし遂に完全に之を占領して同工廠の警備確保に任せり
六、小行李は花神廟附近(周家村)に位置し第一線の為現品を集め握り飯を造り補給に任す
之か運搬に当たりたる坂庭伍長以下八名は途中周家凹東側附近にて敗残兵十数名と遭遇し此の大部を撃滅す敵は遺棄死体六、軽機一、小銃五を鹵獲す
正午頃小行李馬繋場に砲弾落下し乗馬南通駄馬南谷戦死す
本日の大隊内死傷大隊長以下七七名馬二頭に及へり

十二月十三日
城内の敵は退却せるも敗残兵出没し其都度悉く之を掃討す午前八時軍旗入城す
午前八時軍旗入城す雨巷門城壁上旭日に映ゆる 軍旗を迎へ遙に東天を拝し聯隊長の荘重なる声に和する 大元帥陛下万歳の奉唱は天地を揺し万里の怒濤を越へて遠く故国に山彦するを覚ふ而して御稜威の下隊長の負傷の身を押して悲壮なる戦闘指揮豪胆沈勇信澤少尉の奮闘将兵の一意報国勇敢なる行動の様々過去三旬の感慨新にして感激の涙滂沱たるものあり
午前九時故信澤大隊長の遺骸を城壁上に迎へ其の霊を慰む
大隊は聯隊命令(六六号)に基き雨巷門の警備に任すると共に第十二中隊主力を以て右第二大隊に連繋し鉄道以西中山路に至る間の掃蕩を実施せしめ逐次地歩を拡張又朝来戦死傷者の収容人員武器弾薬の調査等戦後の整理戦場掃除に努む
午前十一時十一月十六日以来旅団車馬材料の掩護に任したる第九中隊西山小隊追求復皈す
午後三時頃第十二中隊掃蕩を終り逐次北方に推進し午後八時十分左記大隊命令を下達し各隊は至厳なる警戒裡に露営す

大隊命令 十二月十三日 午後八時十分/於南京雨巷門北方千米鉄道両側
一、占領地区の掃蕩尚全からす相当の敗残兵あるものゝ如し
聯隊は現在地(高等法院)附近に露営す
二、大隊は現在地附近に露営せんとす
各隊は設営者の誘導により露営すへし
三、部隊日直将校 天川少尉
巡察将校を兼又へし
四、1/3 12の大隊掃討区域北端の警備及第十中隊の雨巷門(城壁上を含む)の警備故如し
其他の警戒は各隊毎に警戒すへし
五、警急集合所は本部西側乾田とす
六、給与は携行せるものによるへし
七、余は露営地中央大隊本部にあり
大隊長代理 永井大尉
下達法
要旨を伝達したる後命令受容者を集め口達筆記せしむ
午後九時九日以来聯隊予備隊たりし第九中隊主力復皈す
第十一中隊は以前金陵兵工廠の警備に任しあり又小行李は城外にあり
午後十時三十分分隊露営命令を受領す

十二月十四日
早朝より担任区域内細部の掃蕩を実施し歩一一五作命第六九宿営命令に依り宿営地を推進之を確保し又十一月十二日以来行動を別にせる大行李追及指揮下に入り茲に光栄ある南京攻略戦闘の局を結ふに至れり


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