歩兵47聯隊 第二中隊 陣中日記

2018年04月23日 14時50分36秒 | 1937年 南京攻略...

十二月十二日 晴天 南京城
工作命一三七号第一大隊命令
十二月十二日 〇八三〇
於田上南方高地
一、当面の敵情は目撃する通り
第十三聯隊及び第三十六旅団は聯隊と概ね同線に進出あり
師団野砲は聯隊のため南門と西南角中間城壁に9時頃より概ね二時間の予定を以て突撃口を開設す(以下聯隊突撃口と称す)聯隊は逐次全面の敵を駆逐し聯隊突撃口を突進し城壁を占領す第三大隊、三里店東北側に前進し主として第一大隊の城壁に占領を容易ならしめ突撃中隊に続て一け中隊と城壁に前進せしめんと残余は「クリーク」南岸に集結する筈、
二、大隊三里店西北側村落方向より聯隊突撃口に突進し城壁を占領せんとす
三、3中(+4分の1■)は逐次前面の敵を駆逐し聯隊突撃口開設を待って城壁に突進し大沙埠東南端に亘る間の城壁を占領すへし
四、MG(−4分の1)独機BiAは田上南側高地陣地を占領し主として第三中隊の攻撃に協力すへし
五、両余は予備隊吉田大尉の区署を以て三中隊の後方を前進し「クリーク」南岸に集結すへし
六、2中、4中より補助擔架兵各五名を即刻大隊本部に差出すへし服装其儘とす
七、余り第三中隊の後方を予備隊の前方に在りて前進す
工長 緒方中佐
下達法各隊命令受領者を集め口達筆記せしむ
一、〇九〇〇前記命令を受領す依然中隊は大隊予備隊なり
二、〇九三〇前進の命を受け中隊長は第四中隊を合せ指揮し大隊本部位置に前進す前進開始と同時敵砲兵の集中射を受けたるを以て敵の構築せる交通壕を利用して前進す被害なし
三、一一〇〇中隊は右第一線となり第三中隊の右に増加し右前方の兵営及を掃討し南端大なる建物(後師範学校と知る)迄前進し第三中隊と連絡し全面の敵情及「クリーク」の状態を偵察、而して同地よりの前進は後命を待つへき命令を受く依け直に第一小隊を第一線とし兵営及西端を掃討しつつ師団学校(師範学校?)迄前進し敵情地形の捜索すへき命し、第二小隊をして第一小隊の右に連繋して掃討せしめ第三小隊を予備隊として前進す
四、途中更に第二中隊は梯子を作製し第三中隊に「クリーク」渡河及城壁攀登の援助すへき大隊命令を受けたるを以て第三小隊長に梯子の作製を命す 第三小隊長は梯子二個(約4米及約6米)を作製携行す
五、第一小隊は機敏に師範学校に進出し「クリーク」南岸地区を退却中の敵を猛射し之を殲滅せり
六、湯浅准尉は第一小隊と連絡し右情況及工兵小隊長より前方「クリーク」には水無き旨を承知し之を直に中隊長に報告し中隊は速に前進すへき意見を具申せるを以て中隊長は第二、三小隊に速に師範学校に前進すへき命し且右処情況を大隊長に報告せしめ第一小隊長の位置に前進す
七、当時竹原少尉以下第一小隊の将兵は前進の気勢充満しありたるも大隊命令もあり且友軍砲兵射撃中にして破壊口も完成しあらさるを以て暴進すへきにあらすと判断し大声叱咤第一小隊に停止を命じ各小隊に背嚢を却し器具及飯盒を携行せしめ前進準備を整へしむ
八、暫して前方城壁下に友軍斥候数名前進城壁に梯子を立て掛けつつあるを目撃せるを以て該情況を大隊長に報告し大隊本部を速に前進せらる様意見を具申す
九、師範学校二階に於て全面の情況を大隊長に報告しある時第三中隊の斥候兵は逐次梯子を登り始めたるを以て大隊長は中隊に前進を命らる
十、中隊長は直に第三小隊に梯子を以て前進し第三中隊に渡すへり命し且中隊全員に前進を命す、満を持して待機せる中隊は決河勢を以て城壁目かけて勇躍す「クリーク」南岸前進し先刻工兵小隊長の通報と異なり城壁南側「クリーク」は水深く渡河不能なり
十一、一二三〇第三中隊は斥候城壁上に登りて其主力は中隊の左に前進しありて一部は渡河中なるも城壁西南角「クリーク」西側より側射せられ渡河極めて困難にして城壁下に在る者亦頗る危険に瀕したり
一二、茲に於第一小隊を第三中隊主力の左側に出し敵を射撃せしめ且つ擲弾筒を以て煙幕を構成せしむ
一三、第三小隊長、広瀬少尉は「クリーク」南岸に進出するや梯子を前岸に渡すへり身を挺して「クリーク」に飛び込み枝手を切って泳けは間髪を入れす、加藤上等兵及二宮伍長の指揮する五名各梯子一宛持つて「クリーク」に跳び込み泳ぎ渡る著装の儘にて泳行い極めて困難且敵側射い益と激しく加藤上等兵先つ胸部貫通銃創を受け河中に沈み広瀬少尉辛して対岸に渡り二宮分隊にも傷者及溺れんとするもの続出して之を救しとして河中を跳び込みたる中畑伍又重傷を負う等惨状目も当られす之を目撃しめる一等兵濱野行利は素裸となり河中に跳び込み中畑伍長、阿南一等兵を救出す
梯子を運ふ為め「クリーク」に跳び込みたる者左の如し
少尉 廣瀬憲二郎
上等兵 加藤正亀
伍長 二宮金藏
上等兵 竹本 満
一等兵 羽田野 明
同 工藤 直
同 大城武司
同 阿南五月
負傷者及溺水者救助のため「クリーク」に跳び込みたる者左の如し
伍長 中畑初美
一等兵 濱野行利
同 後藤鶴見
十四、第三中隊は舟により逐次渡河しつつあるも敵の射撃を受け負傷者続出し城壁上に在る者敵の逆襲を受けつつあり此の時第三中隊より軽機二銃を先つ渡河せしめ協力方を申来たるを以て第三小隊の軽機分隊を渡河せしめ小隊長を指揮に入らしめ(第六分隊は遠く離て側方に在りて間に合はす第五分隊のみ渡河す)
十五、敵側射は益々激しく渡河困難なる状況にあり中隊は城壁西南角「クリーク」西側の敵を「クリーク」に沿ひ攻撃すへき命を受けたるも既に第四中隊攻撃中にして地域なきを以て意見を具申し依然第一小隊をして射撃せしめ主力は「クリーク」南岸に位置す
十六、城壁を占領せる第三中隊一部は敵の逆襲を受け状況極めて不利なり大隊主力は「クリーク」南岸城壁より瞰制さる位置に在りしを以て中隊長は直に各小隊に台上を占領せしめ陣地を構築して城壁上の友軍を救援すへき配置に就かしむ
十七、斯しある時更に左方の敵を攻撃すへき命を受けたるを以て第一小隊を左第一線 第二小隊を右第一線として攻撃前進せしめたるも左には歩兵第二十三聯隊攻撃前進中にしてより以西に進出せさる様に通報あり且第四中隊も西端に進出しあるして以て第二小隊を東北端付近に第一小隊を西南端付近に展開城壁上及び側防の敵を射撃せしめ第三小隊を予備隊として中央後で位置せしむ
十八、廣瀬少尉以下五名(Lg一を含む)は城壁下に梯子を接き合せ先つ第三中隊の立てる梯子の東方に之を立て一三一〇城壁上に登り第三中隊井上少尉の指揮する部隊に連繋して掩体を作り城壁上東方よりする数度の逆襲に対し克り之を支へ敵約30名を斃して同地を確保す
其人名左の如し
少尉 廣瀬憲二郎
上等兵 吉原尚一
同 堤 米一
一等兵 谷口亀夫
同 永野 勇
十九、一三〇〇過器具を第三中隊に貸與すへき命を受け左記員数を城壁下に於て第三中隊江畑伍長に引渡さしむ
左記
小円匙 二五  小十字鍬 四
二〇、次て弾薬を第二中隊に融通すへり命られ左記員数を中西軍曹をして城壁かに於て第三中隊江畑伍長に引渡さしむ
左記
三八式小銃實包 一、〇〇〇発
二一、次て一け小隊を以て土嚢作製すへき命を受け第一小隊をして城壁二下に於て作製せしめたるも吊上困難に付該小隊は城壁上に登りて土嚢六個を製作す、城壁上には土少なく且敵の射撃を受け作製困難なるを以て城壁を崩し第三中隊の左に連繋し掩体を構築す
二二、中隊は一時渡河点南方台地に在りて四周に対し警戒すへき命を受け工事実施中更に渡河命令を受け直に渡河す
大隊命令138 12月12日一八四五 於南京城壁下
一、大隊(第一中隊を復帰せらる)は本夜南門以西城壁を占領し至厳なる警戒のもと夜を徹せんとす
二、4中(4分の1 ⅢGに帰す)は城壁昇口より右を城内及び南門方向に対し陣地を占領し逐次南門方向に対し陣地を拡張すへし
2中(4分の1 ngに属す)は第三中隊と交代昇口より左を占領し逐次陣地を拡張第二十三聯隊右部隊に連繋し城内及城壁西南角方向に対し陣地を占領すへし
MG主力は大隊の右附近に位置し城内に射撃準備
BiAは大隊の左に陣地を占領し城内に対し射撃準備
3中は予備隊戦死者負傷者の処置をなし炊事を終了後大隊の左に位置すへし
1中は予備隊「クリーク」の向ふ側に位置し何時にも昇り得る如く又敗残兵に対し不覚を取らかる如く陣地を占領すへし
三、余は城壁上昇口附近に在り
工長 緒方中佐
下達法各隊命令受領者を集め口達筆記せしむ
二三、前記命令に基き第三、第二小隊の順序に一九〇〇中隊は全員城壁上に登攀し左第二十三聯隊迄の地区を掃討し敵弾下に於て陣地を構築至厳なる警戒を以て夜を徹す
二四、本戦闘に於ける戦死傷者左の如し
戦死 上等兵 加藤正亀
負傷(重傷) 伍長 中畑初美
同(軽傷) 上等兵 後藤幸義
同(軽傷) 同 熊井一夫
同(重傷) 一等兵 安東恒記
同(軽傷) 同 濱野行利
同(同) 同 矢野竹雄
同(同) 同 宮城仁福
同(重傷) 同 阿南五月
同(同) 同 軸丸三吉
同(同) 同 谷口亀夫
同(同) 同 須原初男
本日の中隊の行動及び戦闘経過別要図の如し

十二月十三日
晴天
南京城南門附近
一、国民政府首都南京城も遂に陥落し霜天高く日章旗は各城門に翻へり萬歳声は各所に百雷の如くなり

工作命139第一大隊命令
十二月十三日 一二三〇
於南門城壁上
一、聯隊第一線北側市街に大なる敵なきものの如く一一四師団及第二十三聯隊は市街の掃討を開始しつつあり
聯隊は主力を以て一二〇〇城壁の線出発城壁「しかんせん」高地に亘る市街の掃討を実施す
第三大隊は一二〇〇城壁の線出発「しかんせん」東南側市街の掃討に任し其一部を以て「しかんせん」高地を占領す
二、第一大隊は第三大隊の前進を掩護したる後別紙要図の区域内市街の掃討を実施せんとす
三、第一、第二、第四中隊は別紙要図の区域内市街の掃討を実施すへし
四、爾余の諸隊は予備隊城壁上の現陣地に於て掃討隊の掩護の準備しあるへし
五、余は暫く予備隊と共に現在地に在り
工長 緒方中佐
下達法各隊命令受領者を集め口達筆記せしむ
二、右命令に基き一三〇〇より南京城南部区域掃討をなし敗残兵五名を刺殺し一七〇〇終了城壁上に帰還す
工作命140第一大隊命令
十二月十三日 一四五五
於南門西方城壁上
一、当面の敵は殲滅せられ敗残兵は所々に侵入したるか如し
聯隊は一部を以て城壁並掃討区域内の要所を守備し主力を南門西南の城壁外部に集結す
第三大隊は「しかんしせん」高地を守備す
二、第一大隊は掃討終らは城壁上旧陣地に中けつし左の如く行動すへし
1、第一中隊の一け小隊(+4分の1MG)は南門を守備し城壁破壊口東を警戒すへし
2、第二中隊のの一け小隊(+4分の1NGは西南角を守備し城壁破壊口以西を警戒すへし
3、爾余の諸隊は城壁上に集合し聯隊遙拝式に参加したる後集結に至るへし
三、遙拝式要領は現場に於て指示す集結地域配当に付ては別紙に示す
四、余は依然現在地に在り遙拝式後集結地に至る
工長 緒方中佐
下達法各隊命令受領者を集め口達筆記せしむ
四、右命令に基き第二小隊を以て西南角附近を守備せしめ中隊主力は南京城南門外に至り村落露営をなす一九三〇配宿終る
五、廣瀬少尉以下士名をして昨日戦死せし上等兵加藤正亀の死体及渡河際「クリーク」に落し込みたる銃及剣を捜索せしむ日歿迄捜索せしも加藤上等兵の死体は発見し得す

十二月十四日 曇天 南門外
一、廣瀬少尉以下八名をして再昨日河中に没入せる加藤上等兵の死体捜索をなさしむ一三〇〇死体発見の旨報告あり 中隊長は直に現場に至り一四〇〇荼毘に附す
大隊長も臨場せられ中隊長として感激す
二、一五〇〇(当方補記:15時)より城壁上に於いて遙拝式挙行せられ聯隊長の訓示あり代表として竹原少尉の指揮する一ヶ小隊及准士官以上出場す
三、第三回補充要員笠木上等兵以下一九名着隊仮編入せらるゝ
四、竹原少尉、佐藤小隊と城壁西南角の警備交代服務す
五、遺骨護送のため内地帰還せし白木原上等兵二二〇〇(当方補記:22時)帰隊す

十二月十五日 晴天 南門外
一、南京城南門外滞在
二、中隊長は大隊の戦場掃除隊を指揮し一三〇〇(当方補記:13時)出発大沙并東南端付近戦場掃除に任す 中隊より佐藤少尉以下五〇名出場す
三、廣瀬小隊竹原小隊と警備を交代服務す
四、伍長甲斐元永大隊本部勤務を命らえ服務す


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