自民党時代からの盟友
石原慎太郎 x 亀井静香 対談
(2015/7)
今、日本がやるべきことは 自主防衛を強化すること
憲法改正の必要がある
しかし国民にその覚悟があるのか?
問うべき
亀井静香
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亀井:
今、日本がやるべきことは、自主防衛を強化すること。
なのに、新しい安保法制が成立して中東での戦争に参加すると、自衛官が死ぬ。
その覚悟が今の自衛隊にありますか?
石原:
ないね。
実は自衛隊の安全について深刻な盲点がある。
日本一の救急病院である都立広尾病院の佐々木勝院長から聞いたんですよ。
米国のベトナム戦争の映画だと、地雷を踏んで片足を失った兵士は、仲間の兵士が止血する。足をしばって、軍服の上からモルヒネを打つ。
すると、2時間ぐらい痛みがない。その間にヘリで運んで手術をする。
ところが、日本の自衛隊の一般隊員はモルヒネが一本も持てない。持とうとすると、厚労省が邪魔するので、自衛隊の衛生兵にはほとんど救急能力が備わっていないんだ。
亀井:
慎太郎先生、そんな状態で中東に行かせるの?
石原:
自衛隊は徴兵制度ではない。命を落とす可能性もあるのに、志願して兵隊になっている。死ぬ覚悟で行く。
だからこそ、彼らの危険を考えない作戦をやってはいけない。
亀井:
実際に死ぬんです。
戦死しない戦闘ってあるんですか?
石原:
今の自衛隊では、けがをしても助かる命も助からない。
このことを教えてあげたある自民党議員が党内で発言しようとしたら、「先送りしてくれ」と言われたって。
おかしな話ですよ。
1978年に栗栖弘臣統合幕僚会議議長が交戦規定の必要性を話したら、文民統制に反すると批判され、当時の金丸信防衛庁長官がクビにした。
以来、タブーになっている。
交戦規定のない軍隊など、世界にありはしない。
亀井 :
慎太郎先生の話を聞いていると、安保法案は今国会で成立させるのは、やはりダメだ。再確認した。
石原:
僕は自衛隊を愛しているからね。
交戦規定もちゃんと作るべきだ。
亀井:
やっぱり憲法改正でその覚悟を問わないと。
石原:
いや、緊急事態だから、(法案成立まで)早いとこドンドンやれ。
でも、亀ちゃんが改憲論者とわかってよかった。
亀ちゃんと僕は大事な仕事も一緒にやってる。
羽田空港の国際化ですよ。
2000年、自民党政調会長だった亀ちゃんの部屋から2人で運輸省(現・国土交通省)に行って、次官を恐喝したんだ(笑)。
ほとんど脅して、わずか15分の交渉で調査費をつけさせ、羽田空港D滑走路の着工につながった。
亀井:
私は強権的な政治家じゃないんだけど、しょうがなしにね(笑)。
こういう無茶な方が知事になったからできたんだ。
石原:
横田基地でも闘ったよ。
国民はほとんど知らないが、首都、東京の上空の制空権は今もほとんど米国が持っている。
横田基地が所管する管制空域が「壁」になって、日本の飛行機は原則ここを自由に飛べない。
日本の自立に関わる重大な問題なのに、東京都が黙っている必要はない。
でも、外務省が腰抜けでどうしようもない。
亀井:
慎太郎知事が闘って日米両政府は06年に横田基地の管制空域の一部(羽田空港の管制空域の西側に隣接する空域の約40%)を日本側に返還することで合意。
米国から奪還した結果、羽田が国際化した。
石原:
首相には横田基地の返還をナショナルイシューとして取り組んでもらいたい。
僕はね、これまで国が滅びるのを2回見た。
ひとつはベトナム。1966年末、クリスマス停戦を取材するために現地へ行き、サイゴンで何人かの知識人と会った。彼らは何ともシニックな姿勢で、亡国の瀬戸際にありながらただ傍観しているだけ。知識人の無力さに固唾をのむ思いがした。
もうひとつは、中国に滅ぼされたチベット。多くの知識人がその存在を忘れかけている。
悲しいことだが、日本の状況も似ている。
亡国の本質とは、自らの属する国家の歴史へのノンシャランス(無関心)にある。
歴史から日本の立ち位置を考え直す時が来ている。
(2015/7/16 週刊朝日)
本誌・古田真梨子、西岡千史)
http://dot.asahi.com/wa/2015071500075.html
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