*『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著者 雁屋 哲 を複数回に分け紹介します。13回目の紹介
美味しんぼ「鼻血問題」に答える 雁屋 哲
何度でも言おう。
「今の福島の環境なら、鼻血が出る人はいる」
これは”風評”ではない。”事実”である。
2年に及ぶ取材をへて著者がたどりついた結論はこうだ。
「福島の人よ、福島から逃げる勇気を持って下さい」
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**『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著書の紹介
地面の底にビニールシートを敷いた貯水槽
私は以前東電の発表した画像で、タンクに汚染水を運ぶホースが何十本もうねうねと地面を這っているのを見て驚きましたが、そのホースの材質を知ってさらに驚きました。
放射線に耐える特別の材質ではなく、そこらの建材屋で売っている普通のホースなのです。
私たちは敷地内を回る前に、新品のホース置き場を通りました。
そこで、バスの窓からですがホースの断面も確かめることができました。
なぜか表面に縦の筋が入った、直径が15センチくらいで、肉厚が3センチもないような何の変哲もないビニールホースでした。
以前、地面に直に置かれたそのホースを雑草が突き抜けて上まで出てしまっている写真を見てたまげましたが、「ああ、これなら雑草が突き抜けるだろうな」と思わせるような、柔な材質に見えました。
こんなホースで汚染水を移動させているとは信じられません。
さらに、これはあとで知ったことですが、私たちが敷地内を見学したその日に、福島第一原発では事故が起こっていました。
私たちが原発に入った直後、地面に掘った汚染水を貯める地下貯水槽7基が水漏れしていることがわかって、その中の汚染水をタンクに移しました。
その地下貯水槽なるものはどんなものだったか。
地面に穴を掘ってその穴の表面をビニールシートで覆ってそこに汚染水をためるというものでした。ところが、そこに使われたビニールシートが一般用に使われているもので、放射線に対して特別に対策をほどこしたものではなく、しかも、シートとシートの継ぎ目から水が漏れたのです。それで、その地下貯水槽は使用中止になりました。
地面に穴を掘って底にビニールシート敷いて貯水槽とする、とはまるでボーイ・スカウトの野外活動ではありませんか。
ボルトで締めただけの汚染水タンクや、地面に穴を掘って作る貯水槽など、福島第一原発で働いている技術者が自ら考えたものではないと思います。
現場の厳しい状況を知っていれば、そんな安易なものを作ったらかえって危険だということはわかります。
しかし、東電の幹部たちは戦前の陸軍大本営の将校たちのように、机上で立てた計画、金をけちる計画をたて、福島第一原発の職員たちはそれに従うしかなかったのでしょう。
私は、福島第一原発で働いている方たちが献身的に作業している姿に「深い感銘を受けた」と書きました。
しかし、その方たちは、現場知らずで金おしみの東電の上層部が作った、こんな安易な計画の下で自分の身を犠牲にして働いているのです。
私は福島第一原発の職員の皆さんたちに対して、いう言葉が見つからないのです。
「感銘を受けた」などと、職員の皆さんのこの働きに対して、あまりに軽い言葉ではありませんか。
※続き『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』は、11/5(木)22:00に投稿予定です。
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