*『東京ブラックアウト』著者:若杉冽
「第10章 政治家と官僚のエクソダス」を複数回に分け紹介します。9回目の紹介
( Amazon カスタマーレビュー )から
恐ろしい本です。小説という体裁はとっていますが、帯に「95%ノンフィクション」とあるように、限りなく現実に近い話でしょう。これを読んでも、原発再稼働に賛成と言えるでしょうか。一人でも多くの国民に読んでほしい本です。
作中に登場する資源エネルギー庁次長の日村直史は、経産官僚の今井尚哉氏だと、国会議員の河野太郎氏がTwitterで言及しています。現在、安倍首相の政務秘書官を務めている人物です。
( 「東京ブラックアウト」)から
「バ、バカ野郎!おまえは知っているのか? かつて新潟県の泉田知事が、たった400人を対象に避難訓練をしただけでも、その地域には大渋滞が起こったんだぞ!・・・あと数時間で、東京の都市機能は失われるっ。いいか、これは命令だ・・・」
・・・玲子は絶句した。いつも冷静でクールな夫が、15年の結婚生活で初めて見せる取り乱しぶりだったからだ。
過去に紹介した記事(【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(45) )から
救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。
「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。
こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。
私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。
さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」
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**『東京ブラックアウト』著書 「第10章 政治家と官僚のエクソダス」の紹介
前回の話:第10章 政治家と官僚のエクソダス ※8回目の紹介
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国民の生活よりも電力会社の利益や経産省の利権を優先させる、そのことが赤裸々に書かれた記事を読んだ国民は、猛反発した。
首都圏が壊滅するほどの原発事故を起こしても、まだ原発を動かそうとする経産省と電力会社に対して制裁を加えようと、ツイッターやフェイスブックで呼びかけた。東田係長もその主唱者の一人だった。
経産省の建物は霞が関に、そして関東電力は、そこから日比谷公園を挟んだ内幸町に本店の建物が位置する。ネットで呼びかけられて集まった群衆は、公園全体に膨れ上がった。
いつもの金曜日夕方の官邸前の脱原発デモとは異なり、高齢者よりも、ネットに反応する若者が圧倒的に多い。高線量が気になるので、みなマスクにゴーグル姿である。これは写真を取られても顔がわからない姿でもあり、警察権力への警戒心をゆるめ、群衆を一層大胆にした。
デモの届出はなされていたが、予定人数の1000人を遙かに超える数万人の若者が、続々と集まり続けている。
「それでは、まず、電力供給安定化推進本部を設置し、首都圏の住民を見殺しにした経産省に向かいます!」
と、先頭の主催者が拡声器で声を上げる。
うぉーっ!!
地底から湧き上がる地鳴りのような声が響く。
経産省の前の歩道の幅には、とうてい群衆は収まりきれない。経産省別館のイイノビルの前にも、経産省の北側の農水省前の歩道にも、経産省本館の向かいの財務省前の歩道にも、経産省の南側の日本郵政の建物の周りにも、群衆があふれ返っている。
「寺沢経産大臣、私たちの声が聞こえますか? 本日は、原発即停止の要請書を持ってまいりましたぁ」
寺沢大臣は既に大阪にいた。副大臣も、大臣政務官も、経済産業事務次官も、資源エネルギー庁長官も、みんな既に大阪だった。
電力供給安定化推進本部を設置した経産省は、ほとんどの部局が大阪に移動し、ほぼ、もぬけの殻であった。いつもは不夜城のように深夜まで電気が点いている経産省の本館と別館の建物が、わずかな電気を残して、廃墟のように佇んでいた。
「・・・経産省の奴ら、ほとに俺達を見殺しにしやがった!」
※続き「第10章 政治家と官僚のエクソダス」は、6/12(金)22:00に投稿予定です。
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