*『東京ブラックアウト』著者:若杉冽
「第1章 避難計画の罠」(「プロローグ」含む)を複数回に分け紹介します。18回目の紹介
( Amazon カスタマーレビュー )から
恐ろしい本です。小説という体裁はとっていますが、帯に「95%ノンフィクション」とあるように、限りなく現実に近い話でしょう。これを読んでも、原発再稼働に賛成と言えるでしょうか。一人でも多くの国民に読んでほしい本です。
作中に登場する資源エネルギー庁次長の日村直史は、経産官僚の今井尚哉氏だと、国会議員の河野太郎氏がTwitterで言及しています。現在、安倍首相の政務秘書官を務めている人物です。
( 「東京ブラックアウト」)から
「バ、バカ野郎!おまえは知っているのか? かつて新潟県の泉田知事が、たった400人を対象に避難訓練をしただけでも、その地域には大渋滞が起こったんだぞ!・・・あと数時間で、東京の都市機能は失われるっ。いいか、これは命令だ・・・」
・・・玲子は絶句した。いつも冷静でクールな夫が、15年の結婚生活で初めて見せる取り乱しぶりだったからだ。
過去に紹介した記事(【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(45) )から
救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。
「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。
こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。
私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。
さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」
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**『東京ブラックアウト』著書 「プロローグ」⇒「第1章 避難計画の罠」の紹介
前回の話:【東京ブラックアウト】第1章 避難計画の罠 ※17回目の紹介
ー中央合同庁舎第4号館12階・特別会議室。
中央合同庁舎第4号館は、霞が関のなかでも随分と古い12階建ての鉄筋コンクリート製の建物である。内閣法制局や内閣府といった官庁が入居し、権力の中枢である財務省と渡り廊下でつながれているという事実が、この建物が重要な位置づけにあることを示している。
この建物の12階には、かつて財務省から分離独立された金融庁が入居していたが、旧文科省の跡地にできた新しいビルに金融庁が移ったあとは、各省庁が集まり重要な会議を行うための、共同特別会議室が設けられている。
今日はここで、避難計画のガイドラインを議論する原子力防災会議連絡会議のコアメンバー会議が開かれている。事務局は内閣府原子力災害対策担当室だ。閣僚級が参加する原子力防災会議は公開されるが、その下の局長級の幹事会も、課長級の連絡会議も、その一部のコアメンバー会議も、議事は公開されないし議事録が出回ることもない、水面下の会議である。
その特別会議室から、資源エネルギー庁原子力政策課長、畑山陽一郎の声が聞こえてきた。事務局案に異議を唱えているのだ。
「経済産業省も電力会社も、万一のシビアアクシデントの際には、いきなり大量の放射性物質が大気中に拡散するという前提には立っておりません。
もちろん、メルトダウンが発生すれば、まずはベントを行うわけですので、その場合には、空間線量が上がる原発周辺のPAZの住民には避難いただく必要があるわけです。しかし、UPZの住民は、屋外に避難して風向き次第で汚染されるリスクを冒すよりも、屋内にとどまっていただくことのほうが、放射性物質により直接汚染される可能性が低いわけですから、合理的なわけでございます。
こうした合理的な行動を冷静に住民にとっていただく、ということを、自治体の避難計画の前提にしていただきたいわけであります」
畑山原子力政策課長は自信満々であった。
「事務局案では、むしろ、特別な立法もなしに住民の方々の避難を制限するわけにはいかない、とう前提に立って、PAZもUPZも住民が一斉に逃げ出すという最悪のケースを想定しておこう、ということで策定いたしております」
事務局である内閣府原子力災害対策担当室の副室長(兼原子力規制庁原子力防災課長)の守下靖は、そう答える。
毎日夜中に連絡を取り合って談合している二人だが、それはもちろん周りには知られていない。
※続き「第1章 避難計画の罠」(「プロローグ」含む)は、3/11(水)22:00に投稿予定です。
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