*** june typhoon tokyo ***

BONNIE PINK@日本武道館

Bonnie_pink_water_me 台風20号が北上している影響もあってか、“It's gonna rain!”な雨模様の東京。空もグレーでどんよりしていて、モヤモヤした気持ちが残る金曜の夜。そんな憂鬱な気分を吹き飛ばそうとするべく、今夜はBONNIE PINK 2007 TOUR “Thinking Out Loud”@日本武道館へ。ツアー・タイトルにもある、“Thinking Out Loud=思ってることを吐き出してしまえ!”が叶い、スカッと心地よさを味わえるライヴとなるかどうか。
 一昨年は新宿厚生年金会館、昨年は同所とC.C.Lemonホール(渋谷公会堂)。一昨年は前列5列目くらいだったのが、昨年は「A Perfect Sky」のヒットによりというか、エビちゃんこと蛯原友里出演の資生堂「アネッサ」CMタイアップが効いての、ぶっちゃけ“エビちゃん”効果で、チケットもようやく取れたという状況。そして今年が日本武道館。昨年から露出も積極的に行なってきたが、正直なところ、武道館を埋めるなら昨年だよなぁ、と心配が脳裏を過ぎったりしていた。逆に言えば、彼女の楽曲が果たして浸透してきているのかという指標というか試金石になるライヴともいえなくもない。

 彼女の作品としては、最も認知されたのが昨年リリースされた『Every Single Day COMPLETE BONNIE PINK(1995-2006)』で、そのベスト・アルバムを踏襲した昨年のツアーは、前述の資生堂「アネッサ」CMソング「A Perfect Sky」や映画『嫌われ松子の一生』テーマ・ソング「LOVE IS BUBBLE」を含むまさにベスト盤的なステージで、充実度の高いものだった。
 そして、今年はオリジナル作『Thinking Out Loud』をタイトルに冠したツアーとなる。昨年より大規模な日本武道館という場所で、どのようにステージ構成をしてくるのか非常に興味があった。また、興味があると同時に、今作『Thinking Out Loud』はリード・トラックが「Water Me」とバラードで、さらにポップというよりも原点をまた見つめ直した感のあるロック調の楽曲が連なる今作を中心とした楽曲構成が予測されることで、「A Perfect Sky」で琴線に触れた新規ファン層と旧来からのファン層とに対してどのようなアプローチをしてくるのか、ちょっぴり不安があったりもした。すでにベスト盤とはいえ、アルバムに収録された楽曲「A Perfect Sky」を“フィルハーモニック・フレイヴァ”としてボーナス・トラックではなく、アルバムの中盤に配していたことも不安要素を持った一つの原因であったといえるかもしれない。

◇◇◇

 アリーナ中央やや後ろ目あたりから鑑賞することとなった今回。周囲を見渡してみると、不安をよそにほぼ満員だ。開演の19時直前にも九段下駅や日本武道館田安門前にも「チケット譲ってください」のカードを掲げた人もちらほらいたっけ。
 ステージは左前列からギターの八橋義幸、中央にBONNIE、ベースの“バンマス”高桑圭、ギターの“アイゴン”こと會田茂一。左後列からキーボードの奥野真哉、パーカッションのナナ、ドラムのアンソニー・ジョンソン。さらに後方左端にストリングス×4と後方右端にホーンなどが時折加わる。今回は、プロデューサー・チーム“バーニング・チキン”の2人も参加と、豪華なメンツが勢ぞろいした。ステージ上空には、オーロラヴィジョンがセッティングされていて、ステージをさまざまな角度から映し出していく。

 どのような構成をしてくるか楽しみだったステージは、非常にシンプルにBONNIE PINKを聴かせることに徹したライヴだったといえる。ベスト盤リリースの後のツアー以上に…などという気負いもみられず、ありのままのBONNIE PINKを披露していた。
 特徴的だったのは、大きく分けて2つのカラーで自身を表現したこと。オープナーでタイトル・チューンともいえる「Broken hearts, city lights and me just thinking out loud」からアルバム『Present』収録の「Rope Dancer」までを白いジャケット・パンツ・スタイルで魅せた“ホワイト・ボニー”、『Just a Girl』収録の「再生」からラストまでを黒のワンショルダーのトップとパンツ・スタイルでの“ブラック・ボニー”でと、彼女の中にある二面性を意識した構成だ。

 序盤から淡々と新譜を中心としたナンバーをこなしていくBONNIE PINK。非常にピュアで等身大の彼女を体現していくのにピッタリとハマったカラーの衣装だ。「日々草」(『Golden Tears』収録)では、緑を基調にしたバック・スクリーンの映像に良く映えた、微笑ましさが窺えた。ストリングスを呼び込んでの「Chances Are」は、せっかくストリングスを配したにもかかわらず、それほど音が活かされないようだった。もともと長い尺の楽曲ではないため、すぐにまた幕内へ引っ込んでしまったから、この一曲だけを聴いたときは、「このためだけのストリングスだったら、ちょっと微妙だなぁ」と不安も過ぎったが、どうやら多くの楽曲でフィーチャーされるとわかってくると、ちょっと安心。終盤などでサウンドに厚みを持たせる効果を、しっかりと務めていた。

 意外だったのが、「Ocean」「5 more minutes」(ともに『Even So』収録)、「Rope Dancer」(『Present』収録)などの楽曲をセットに組み込んできたことだ。「Rope Dancer」では弾き語りも披露するなど、「A Perfect Sky」以前を知らない人に、“あなたたちにとってははじめてかもしれないけれど、これがボニーの自然体なの”とでもいっているかのようで、彼女自身を包み隠さずに胸の内をさらけ出そうとした意識さえも感じとれた。また、オールド・ファンにも、シングルばかりではなくそれほど聴けるとは思っていなかったであろうアルバム構成曲を披露してくれたことに、喜びを感じていただろう。

 内面をさらけ出すという意味では、「再生」(『Just a Girl』収録)からの“ブラック・ボニー”サイドは、彼女のイメージを一変させる非常に攻撃的な意識付けをしてきた。黒の衣装に赤が映えるライティングは刺激的で、そこにロックのリズムが帯同する。 
 特に、粘着性のあるディープ・ロック「Imagination」から初期のライヴではおなじみの名曲「Heaven's Kitchen」への流れは、會田、高桑の“HONESTY”ラインの真骨頂ともいえるロック・スタイルで満たされる内容の濃いステージングとなった。この3曲がなければ、今回のライヴはもっと抑揚が少ないものという印象になっていたかもしれない。全篇を通してみると、このロックのアクセントが終盤へのセット・アッパー的な役割となり、このライヴの肝となっていた。もちろん、そこにはそれらを構築出来る安定したバック・バンドの存在がある。通常のツアー・メンバーの高質なサウンドにはいまさら言及する必要もないが、今回はそこにストリングスやホーンなどのスペシャル・セットが加わった。非常に厚みや奥行きを感じるサウンドを感じることが出来たし、陰影と二面性というBONNIE PINKが描き出す世界をより深く描出させることが出来たのではないだろうか。
 攻撃的なロック・サウンドの流れを受けての終盤は、高揚感を一段上のものへとのし上げた。特に本編ラスト3曲、突き抜けるようなコーラス終わりのファルセット・ヴォイスが高みを臨ませる「Private Laughter」、“トゥルットゥ~♪”のフレーズがキュートな乙女心を醸し出す「Gimme A Beat」、地平線の果てまで届かんばかりの壮大な意志と爽やかさを感じさせる「Anything for you」の展開は見事だった。

 アンコールは、「何やろうかと思ったところ、ライヴではまだやってなかった曲を」ということで、『Even So』から「Bedtime Story」を。続いて、ストリングス・セットが活かされた「A Perfect Sky」へ。バック・スクリーンに映し出される青空と雲間の映像は、この曲をよりいっそう輝かせる演出だ。
 そして、「最後の曲になっちゃうけど…『今夜は最高!』っていう曲をやります!」と言ってから「Tonight, the Night」へ。“トゥナイザナイッ、トゥナイザナァ~イ”とのコール&レスポンスもあり、武道館に集結した多くの人々が「“Tonight, the Night、今夜が、その夜だ!」と感じたはずだ。

 ダブル・アンコールは、「やっぱり武道館といえば、ロックでしょう!」ということで、ライヴの大トリ定番曲「Do You Crash?」を。これが偶然か今回のツアーのテーマ“Thinking Out Loud”=思っていることを思い切り吐き出そう!に適するナンバーとなった。というより、BONNIEの楽曲は、常に“Thinking Out Loud”の結晶なのだと改めて感じた。いいことも悪いことも、ポジティヴな部分もネガティヴな部分も、楽曲のすべてが等身大の私の証。よそ行きの自分ではない、真の気持ちを声を大にして言い続けていたいこと、そのものなんだ、と。ヒットに浮かれず、再び原点を見つめ直して創り上げた今作の楽曲には、特にそれを感じるのだ。「Do You Crash?」中盤でBONNIEが“アーーーーッ!!!!!”と叫ぶ瞬間、場内を舞う金色のテープ。“Thinking Out Loud”が最も体現され、BONNIEと共感し合えた一瞬だった。

Bonnie_pink_anything_for_you 「私は小さなホールだろうと、1人でも100人でも…7000人の武道館でも、届ける気持ちは同じ」
 「だから、やる前は“日本武道館なんてなんぼのもんじゃい”と思ってた……けど、こうやってステージに立ってみると、(武道館は)やっぱり、“なんぼのもん”でした」
 当初は周囲が騒がしく、自身はそれほど意識してなかった日本武道館。だが、何度も「ホーゥ!」と叫びたおすBONNIEには、日本武道館でライヴをしている感動とBONNIEの姿や演奏を見聴きに来てくれているオーディエンスを目の前にしての充実感が宿ってきたのだろう。
 「もうずっと演っていたい感じ」「朝までやるぞーみたいな」「また一曲目からやり直しちゃおうか…(“やってー”の声に)無理無理。死んじゃう(笑)」「またここでやれるよう頑張ります…武道館10Daysとか(笑)」
 今まで描けていなかった未来像がだんだんと鮮明になってきた…そんな思いを持って、また高みへと羽ばたいていこうと実感した夜だったのではないだろうか。

 武道館を出ると、雨がやんでいた。決して晴天ではないけれど、当初の不安が消え去った晴れ晴れした夜空となっていた。

◇◇◇

 ステージに出る時の円陣組んでの掛け声は、“ブドゥカーン!”(ブを強調した外国式発音で)だったとか。
 武道館についてのMCで、八橋は「チープ・トリックが好きだったので、チープ・トリックといえば『at Budokan』ってことで、憧れの場所に立てて光栄」、それを受けて奥野は「ボクも松田聖子の“武道館”で…いや、見てないんですけどね。小さい時からBONNIEと一緒に武道館に立とうと思ってました!」と。アイゴンは、「小さい時に『24時間テレビ』の募金をしようと来たんですよ。(え、ここ=武道館でやるの?とBONNIE。どうやら24時間テレビが武道館を会場にしていたことを知らなかったらしい)もうそろそろ、欽ちゃんが走ってくるんじゃないかな…(笑)。募金すると芸能人の人たちと握手出来るんですよ。で、募金の列に並んでいたら、前にジャッキー・チェンがいたんですよ。“うぉ!ジャッキーがいる!”って興奮して待っていたら、横の列にいかされちゃって…その列の前にいたのは新沼謙治で…。」「握手したの?」「はい、ニイヌ・マッケンジーと…」「ま、それはそれでいい思い出になったっていう…」「そうですね」というのが面白かったな。

◇◇◇

<SET LIST>

01 Broken hearts, city lights and me just thinking out loud*
02 Burning Inside*
03 坂道*
04 Ocean
05 日々草
06 5 More Minutes
07 Chances Are*
08 Just a Girl
09 Lullaby*
10 慰みブルー*
11 Rope Dancer
12 再生
13 Imagination*
14 Heaven's Kitchen
15 Water Me*
16 Thinking Of You
17 Catch the Sun*
18 Private Laughter
19 Gimme A Beat*
20 Anything For You*
≪ENCORE #1≫
21 Bedtime Story
22 A Perfect Sky(Philharmonic Flava)*
23 Tonight, the Night
≪ENCORE #2≫
24 Do You Crash?

* 『Thinking Out Loud』収録曲

<MEMBER>
BONNIE PINK(Vo,G,Key)
高桑圭(band master/Bass)
會田茂一(G)
奥野真哉(Key)
NANA(Per)
Anthony Johnson(Dr)
八橋義幸(G)

Burning Chicken(trombone/G)
Strings×4

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