ミッドウィークに行なわれたヤマザキナビスコカップの初戦。ほぼリーグ戦と同じメンバーの鹿島に対し、大胆にフレッシュなメンバーをスターティングメンバーに揃えてきたFC東京だったが、実力ある鹿島に臆することなく得点を重ね、FC東京に今季の初勝利をもたらした。
フィッカデンティ監督は、森重、太田、渡邉以外はこれまでベンチ、あるいはベンチ外の選手を抜擢。DFには吉本と松田、中盤には羽生と野澤、そして前線には河野を起用し、これまでなかなか活躍の場が与えられない選手たちの奮起を促したが、これが功を奏した形だ。
前半の鹿島は、言い方が悪いかもしれないが、多少浮ついたスタートをしていたのかもしれない。たとえていうなら、ギアを入れアクセルを踏む行為へとなかなか移らないまま、FC東京にカウンターパンチを食らい、目が覚めた時には、ハンディを背負っていたことに気付いた……といった感じだろうか。
ただ、それは東京の動きがもたらしたものでもあるといえる。積極的なプレスや早いボール回し、豊富な運動量で鹿島に対峙した。もっといえば、鹿島に対しという以上に、ピッチ上で結果を出さなければ、実力を示さなければと躍起になっていた選手たちが生み出した必死さが、序盤のゴールへ繋がったのだともいえる。アグレッシヴな連動を前半ずっと継続したことが、まずは勝利へ近づいた要因だった。特に、久しぶりにスタメンとなる羽生、怪我などでなかなか本調子が見えずにいた米本の運動量は目を見張るものがあった。久しぶりという意味では、2007年の広島との開幕戦でデビューしたものの、佐藤寿人らにコテンパンにやられて前半で交代した吉本も、期限付き移籍や怪我などで東京での出場がなかなか巡ってこなかったが、この試合でダヴィ相手に完全に抑えきったとはいえないものの、ある程度の成果を見せることが出来ていた。
松田は前半は緊張していたのか、やや危なっかしいプレイも見受けられたが、それでも後半に三田のゴールをお膳立てするクロスを上げて貢献。フル出場を果たしたのは評価していい。野澤も中盤の底で懸命に繋ぐプレイが見られた。
攻撃陣ではなんといっても河野。米本のエリア左への浮き球パスも素晴らしかったが、それを鹿島の昌子に競り勝って受け、右のアウトサイドできっちりゴールへ流し込んで先制点を挙げる。さらに、太田のゴールでは左エリアに抜け出した後、マイナスのグラウンダーでのパスを太田へ渡してアシストを記録。常にゴールを狙う姿勢は、チームの十分な活性を生んだといえるだろう。
平山はチャンスをゴールという結果に生かせなかったのは惜しかったが、それでも空中戦ではほぼ勝利。前線での厚い攻撃の起点として奔走した。もちろん、前半エリア内での決定機にシュートを浮かして外してしまったところなどは反省点ではあるが。
しかしながら、課題も多く見えた。3点をもぎ取った後、すぐに失点を喫したところなどはその一つ。小笠原から本山というヴェテランの巧みさにやられたともいえるが、無失点で終われる試合だっただけに、非常に悔やまれる。鹿島はこの試合で負けはしたが、最低でも今後に繋がる内容を残して終えるところが、実力チームたるゆえんだろう。得点は1点だけだが、零敗で終わらぬよう、しっかりと後半には修正してきた。東京の勢いが勝っていた前半に比べると、後半は鹿島の支配率も高くなり、得点の匂いのするシーンも増え、結果は残せずとも次の試合に影響を及ぼさないようなゲームメイクを遂行していた。東京ならば、失点を重ねてしまうだけでなく、連係などもガタガタと崩れてしまうような負け方が多いが、鹿島はしっかりと自分たちのスタイルを取り戻しながら90分を戦う意識が植えつけられているのだと感じた。
結果は残した。とはいえ、後半は押される時間帯も多く、今日のメンバー、フォーメーションが最適だとするにはまだ早い。アグレッシヴな姿勢、やるべきことするべきことを適切な判断で遂行出来たことを、今後も継続出来るのかが大切だ。この試合でいえば、序盤、決めるべき時に得点を決めたことが試合を優位に進めるための大きなアドヴァンテージとなったが、そういった展開でなくても、どのようの試合を、自分たちの気持ちをコントロール出来るかが、これからも高めていかなければならない課題だといえる。
カップ戦とはいえ結果を残したこれまでのサブ中心のメンバーたち。現在レギュラー位置にいる選手たちは刺激を受けたことだろう。そこから生まれる高い競争意識が、より強いチームとメンタルを創り上げる土台になるのだと思う。気になるのは渡邉千真。リーグ戦でもレギュラーだが、これまでゴールなく、この日も途中交代。リーグでは昨季とは異なるウイング的な位置でもがいている状況が続いている。早くゴールをと焦って、自分の良さを失ってしまうことだけは避けてもらいたい。他の選手や相手のプレイなどからも、自身が難題を克服するためのヒントを掴めることもあるはずだから、焦らずしっかりと準備をしておいてもらいたい。そして、チャンスが訪れた時に一発で決めきる集中力を磨いておくことだ。
この試合は勝利をもたらしたこと以上に、選手全員にすべきことを表現出来ればチャンスは生まれ、結果に繋がるということを再確認させたことに意義があるし、そうあってもらいたい。次は中3日でリーグ戦に戻り、ホームでの川崎戦。多摩川クラシコになる。ライヴァル相手に結果を求められる試合とはなるが、結果以上に当日選ばれた選手たちはピッチ上で実力を示せるか、やるべきことをやれるか。心技体を整えて、挑んでいってもらいたい。
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≪ヤマザキナビスコカップ 予選リーグ 第1節≫
【日時】2014/03/19 19:00
【会場】味の素スタジアム
【観衆】10,353人
【天候】曇、弱風
【気温】9.9度
【湿度】43%
【審判】(主審)村上伸次(副審)聳城巧、作本貴典
【結果】
FC東京 3(2-0、1-1)1 鹿島
【得点】
(東):河野(8分)、太田(10分)、三田(71分)
(鹿):本山(72分)
【FC東京メンバー】
GK 01 塩田仁史
DF 50 松田陸
DF 29 吉本一謙
DF 03 森重真人
DF 06 太田宏介
MF 07 米本拓司
MF 22 羽生直剛 → MF 18 石川直宏(79分)
MF 34 野澤英之
FW 09 渡邉千真 → FW 14 武藤嘉紀(59分)
FW 13 平山相太
FW 17 河野広貴 → MF 08 三田啓貴(54分)
GK 20 権田修一
DF 05 加賀健一
DF 33 椋原健太
MF 28 幸野志有人
監督 マッシモ・フィッカデンティ
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≪2014 ヤマザキナビスコカップ 予選リーグ日程≫
01 03月19日 ○FC東京 3-1 鹿島(H)
02 04月02日 FC東京×仙台(A)
03 04月16日 FC東京×神戸(A)
04 05月21日 FC東京×清水(H)
05 05月24日 FC東京×ガ大阪(A)
06 05月28日 試合なし
07 06月01日 FC東京×鳥栖(H)
【決勝トーナメント】
準々決勝 09月03日/09月07日
準決勝 10月09日/10月12日
決勝 11月08日(埼玉スタジアム2002)
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コンコースでサポーターをもてなすドロンパ。(ブレブレ)
ユルネヴァ”中。
河野ゴール!
太田ゴール!
湧き上がるゴール裏。
ハーフタイム、周囲を物色するドロンパ。
三田ゴール!
“眠らない街”を聴きながらタイムアップ。
試合終了。
ゴール裏へ挨拶する東京の選手たち。
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