*** june typhoon tokyo ***

札幌 vs FC東京【J1リーグ】




 ホーム開幕戦の札幌に苦しめられるも、終盤に追いつき最低限のドロー。

 天敵・浦和から7年ぶりに勝利した前節から中3日、FC東京は“北の大地”に飛び、札幌との対戦。かつて浦和も率いていたミハイロ・ペトロヴィッチが指揮するチームとはあまり相性が良くない印象があり、事実、広島時代は1勝1分6敗、浦和時代は1勝4分7敗と、2006年~2017年の12年間で僅か2勝。札幌の監督に就いた2018年以降も1勝2分1敗と1勝のみ、特にアウェイに関しては2分2敗と未勝利で、これまでのように鹿島や浦和戦などに“鬼門”の文字が並んだことはなかったが、地味に鬼門になりつつある相手でもある。浦和戦の勝利を起爆剤に、今季はそういったネガティヴなジンクスをまとめて払拭してタイトルへと邁進したいところだが、そう安易にいかないのがJリーグ。千葉で合宿をしながらリーグ再開後はアウェイでの連戦が続いていた札幌だが、2節から2勝2分と無敗で乗り切り、ホーム札幌ドームへ戻ってきた。制限下ではあるものの、2019年12月の最終節以来、地元のファン・サポーターを前にしてのホームゲームで熱も入っている札幌は、なかなか難儀な相手として立ちはだかった。

 FC東京は、ロシアへ移籍した橋本の穴をどのように再構築するかが焦点の一つだったが、高萩をアンカーに配置。DF陣には移籍後初スタメンとなるジョアン・オマリ、右SBに中村帆高を起用し、森重、室屋はベンチスタート。前線にレアンドロ、ディエゴ・オリヴェイラ、アダイウトン、中盤にアルトゥール・シルバと“ブラジリアン・カルテット”がスタメンに名を連ねた。また、ベンチには昨季J3得点王の原大智がスタンバイ。
 一方、札幌は怪我の鈴木武蔵、出場停止の荒野らがベンチ外となったが、タレントは豊富。FKの名手・福森、田中、進藤の3バック、菅、深井、宮澤、ルーカス・フェルナンデスの中盤、最前線のジェイに、ボールを持たせると厄介なチャナティップ、駒井がトップ下の3-4-2-1の布陣で応戦。

 序盤は札幌がややボールを支配するが、FC東京も1トップのジェイにボールを出させないようにしっかりとブロックを堅め、カウンターを狙う。5分にはディエゴ・オリヴェイラの前線へのスルーパスに抜け出したアダイウトンがペナルティエリア右からGK菅野の股下を狙ったシュートを放つ絶好機も到来するが、菅野のファインセーヴで惜しくも先制ならず。札幌は、後方でパスを繋いで前線のジェイを窺うも、ボールが収まらないとなると、中盤のチャナティップや駒井がドリブルでスピードアップするなど緩急をつけた攻撃を繰り出すが、FC東京も慌てず。背丈のあるジョアン・オマリ、ことごとくジェイとの空中戦に勝った渡辺を中心に、札幌の攻撃を跳ね返していく。両者ともそれほど決定的なチャンスはないものの、最終ラインでゆったりとボールを保持しながら、中盤でボールの奪い合いから一気にスピードを加速させて敵陣へ向かうという、攻守の抑揚が激しい展開が続く。札幌はルーカス・フェルナンデスのサイドからパスやクロスを供給する場面が多く、FC東京は前線というより中盤まで下りてきたディエゴ・オリヴェイラのボールキープから打開を図る場面が多い印象だったが、どちらも対峙する相手の集中力もあって、決定打を演出するまでには至らず。
 
 ただ、FC東京は20分に東が自ら“✕サイン”を送って座り込むアクシデント。急遽、安部の投入を余儀なくされる。その後は一進一退の攻防が続き、40分近くとなるとややFC東京が攻撃のリズムを掴みかけ、安部やディエゴ・オリヴェイラ、レアンドロのドリブル突破に手を焼いたか、39分に深井、42分に宮澤がファールを冒してイエローカード。次第にFC東京の流れになるかと思いきや、アディショナルタイムに試合が動く。ペナルティエリア外でジョアン・オマリと対峙した駒井が右サイド奥へ仕掛けてクロスを入れると、ファーへ流れたボールに待ち構えていた菅が胸トラップから左脚一閃。GK林が左手に当てるものの、ネットに突き刺さり、ホーム開幕戦となった札幌が先制。FC東京はクロスの際、中央にいたジェイの肘を喰らった中村帆高が倒れ込んでしまったことで、ファーサイドの菅へのアプローチが遅れ、菅をフリーにしてしまった。

 FC東京は、直後に小川から前線へのロングボールを跳ね返されるも、そのボールを拾ったレアンドロがアダイウトンへの縦パスからのワンツーを受けてペナルティアーク付近まで進出すると、小さく強く右脚を振り抜いたシュートは左ポストに直撃。惜しくも同点弾とはならなかった。

 札幌としては前半終了間際という気持ちよく折り返せる時間帯に先制したことで、攻撃のモチベーションが高まり、1点を追うFC東京が攻め込むところでボールを奪ってのカウンターと理想的な流れに。50分には右サイドで小川をかわしたルーカス・フェルナンデスからのマイナスのグラウンダーのクロスを進藤がペナルティエリア右からシュート。これはジョアン・オマリが外へ弾く。すると、福森のFK、駒井のシュートなど札幌が攻め立てる時間に。
 
 連戦で身体が重いのか、思ったように攻撃が繋がらないFC東京は、69分にレアンドロ以外のブラジル人を下げて、原、永井、紺野を投入。高萩と安部の2ボランチ、レアンドロがやや下がり目というフォーメーションに代え、前への強度を高めるも、札幌もしっかりと対応。FC東京は個の力でボールを前に運んでいくものの、連係面が上手くいかず。特に小川やレアンドロは札幌のプレスに苦労させられ、チャンスになりかけたところで推進力を失ったり、ボールをロストするなど、攻撃のテンポをやや崩し気味なところも散見。高萩からの浮き球やクロスを原や永井が競り勝ちシュートに繋げ、中央から紺野がドリブルで持ち上がってファールを受けるなど次第に札幌陣内へ脅威を与え始めるも、決定打とはならないでいると、札幌はジェイをドウグラス・オリヴェイラ、チャナティップを金子にスイッチ。すると、80分にはFKから福森が、左からペナルティエリアに侵入したルーカス・フェルナンデスへロングボールを送ると、これを頭で落としたところにドウグラス・オリヴェイラが強烈なシュート。これはGK林の正面でFC東京は事なきを得たが、追加点の匂いも感じさせる。

 3人同時交代後に攻勢を強めるFC東京だが、あと一歩足りないとみて小川に代わって室屋が投入されると、攻撃の活性も高まり、高萩が両サイドへボールを供給しながら、守備を固める札幌を崩すべくチャンスを狙っていく。すると、88分に高萩からの原への楔のパスが札幌の速いプレスとのせめぎ合いのなかで敵陣中央のレアンドロにこぼれると、レアンドロはワンフェイクを入れて、右サイドからディフェンスの裏へ駆け込む室屋へスピーディなスルーパスを通すと、菅の背後を突いた室屋が巧みなトラップとともにエリア内へ侵入、GKとの1対1を制して、GK菅野の右手を弾き飛ばすシュートを左サイドネットに突き刺し、FC東京が終盤に同点に持ち込むことに成功した。

 さらに逆転の機会を窺うFC東京は5分のアディショナルタイムに入っても攻勢を強め、紺野のドリブルなどでチャンスを演出。ペナルティアークやや左付近でFKを得ると、横浜FM戦で直接FKを決めた時と同じような位置から右脚で狙うも、シュートは僅かに右枠外へ。だが、そのままタイムアップとなり、ともに勝ち点1を分け合うドローで終了した。

 札幌にとっては“勝てた”試合、FC東京にとっては“あわよくば逆転出来た”試合という印象だろうか。札幌は進藤、ドウグラス・オリヴェイラなど絶好の決定機もあったゆえ、そこで確実に決めていればという思いも強いだろう。逆にFC東京にとっては、なかなかテンポや連係が上手くいかない苦しい試合ながら、選手交代などでギアを上げて追いつき、終盤に勝ち越せる雰囲気も作ったという意味で、大きなドローともいえる。従来ならテンポが上がらないままズルズルと時間を費やされて負け試合となるところを、強引ながらも勝ち点1をもぎ取ったことは、成長の一つといえそうだ。

 しかしながら、中3日とはいえ、前線に豊富なタレントを揃えるもののテンポが上がらず、推進力も足らないままの攻撃には、大きな修正が必要だ。攻撃面に苦心している中盤でボールを簡単に奪われて札幌にカウンターを受ける場面もあり、それを意識してか積極性も不足。プレスを掛けて相手の出鼻を挫くとか、安易にボールを繋がせないといったところでメリハリが効かず、中途半端なまま札幌に手ごたえを感じさせてしまったのは、大いに反省しなければならない。
 一方、守備面では初先発のジョアン・オマリがしっかりと指揮ぶりを発揮。失点場面ではペナルティエリア外に釣り出されたまま駒井に交わされたが、それ以外では高さもあり、冷静に対処。渡辺とともにジェイの制空を許さなかった。また、中村帆高も気概あるプレーを随所に見せ、小川がピッチを離れた後には左SBもこなすなど、高いユーティリティを見せていた。

 今季のFC東京は上手くハマった試合とそうでない試合とのギャップの大きさが気になるところだが、川崎での大敗以外は勝ち点を得ている。試合運びが低調となっても最低限の結果を残すことは、シーズンを通して重要なことになる。田川が6週間の怪我で離脱し、この試合で途中交代した東の状況も気になるところだが、チームとしての底上げを強めながら、戦っていきたい。次節も中3日でのアウェイ鹿島戦。厳しいところだが、アグレッシヴにチャレンジしていきたい。

◇◇◇

【明治安田生命J1リーグ 第6節】
2020年07月22日(水)19:08試合開始 札幌ドーム
入場者数 3,151人
天候 屋内 / 気温 23.0℃ / 湿度 66%
主審 木村博之 / 副審 山内宏志、権田智久 / 4審 三上正一郎

 札 幌 1(1-0 / 0-1)1 FC東京

≪得点≫
(札): 菅 大輝(45分+2)
(東): 室屋 成(88分)

◇◇◇

【FC東京】
≪スターティングメンバー≫
GK 33 林 彰洋
DF 37 中村帆高
DF 04 渡辺 剛
DF 32 ジョアン・オマリ
DF 06 小川諒也  → 室屋 成(80分)
MF 10 東 慶悟  → 安部柊斗(22分)
MF 08 高萩洋次郎
MF 45 アルトゥール・シルバ → 紺野和也(69分)
FW 09 ディエゴ・オリヴェイラ → 原 大智(69分)
FW 15 アダイウトン → 永井謙佑(69分)
FW 20 レアンドロ

≪サブスティテューション≫
GK 13 波多野豪
DF 02 室屋 成
DF 03 森重真人
MF 31 安部柊斗
FW 11 永井謙佑
FW 24 原 大智
FW 38 紺野和也

≪監督≫
長谷川健太

◇◇◇

【2020 明治安田生命J1リーグ FC東京 試合日程】
第01節 02月23日(日)13:03〇FC東京 3-1 清 水(A・アイスタ)
第02節 07月04日(土)19:00〇FC東京 1-0  柏 (A・三協F柏)※Remote Match
第03節 07月08日(水)19:30✕FC東京 0-4 川 崎(H・味スタ)※Remote Match
第04節 07月12日(日)19:30〇FC東京 3-1 横浜FM(A・日産ス)
第05節 07月18日(土)19:00〇FC東京 2-0 浦 和(H・味スタ)
第06節 07月22日(水)19:05△FC東京 1-1 札 幌(A・札幌ド)

第07節 07月26日(日)18:30 FC東京✕鹿 島(A・カシマ)
第08節 08月01日(土)19:00 FC東京✕鳥 栖(H・味スタ)
第09節 08月09日(日)19:00 FC東京✕C大阪(A・ヤンマー)
第10節 08月15日(土)19:00 FC東京✕名古屋(H・味スタ)
第11節 08月19日(水)19:00 FC東京✕広 島(A・Eスタ)
第12節 08月23日(日)19:00 FC東京✕湘 南(H・味スタ)
第26節 08月26日(水)19:00 FC東京✕鹿 島(H・味スタ)
第13節 08月29日(土)19:00 FC東京✕G大阪(A・パナスタ)

第14節 09月05日(土)・06日(日) FC東京✕大 分(A・)
第15節 09月09日(水)      FC東京✕横浜FC(H・)
第16節 09月12日(土)・13日(日) FC東京✕神 戸(A・)
第24節 09月16日(水)      FC東京✕大 分(H・)
第17節 09月19日(土)・20日(日) FC東京✕仙 台(H・)
第18節 09月23日(水)      FC東京✕C大阪(H・)
第19節 09月26日(土)・27日(日) FC東京✕鳥 栖(A・)
第29節 09月30日(水)      FC東京✕浦 和(A・)
第20節 10月03日(土)・04日(日) FC東京✕湘 南(A・)
第21節 10月10日(土)・11日(日) FC東京✕G大阪(H・)
第22節 10月14日(水)      FC東京✕清 水(H・)
第23節 10月17日(土)・18日(日) FC東京✕横浜FC(A・)
第25節 11月11日(水)      FC東京✕川 崎(A・)
第27節 11月14日(土)・15日(日) FC東京✕名古屋(A・)
第28節 11月21日(土)・22日(日) FC東京✕横浜FM(H・)
第30節 11月28日(土)・29日(日) FC東京✕ 柏 (H・)※1
第31節 12月05日(土)・06日(日) FC東京✕広 島(H・)※2
第32節 12月12日(土)      FC東京✕仙 台(A・)
第33節 12月16日(水)      FC東京✕札 幌(H・)
第34節 12月19日(土)      FC東京✕神 戸(H・)

※第14節以降の日程詳細は、8月初旬・10月初旬に分割して発表予定
※1 ACL準々決勝進出の場合、11月18日(水)へ変更の可能性あり
※2 ACL準々決勝進出の場合、別日へ変更の可能性あり

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