*** june typhoon tokyo ***

FC東京 vs 名古屋 @国立【J1リーグ】


 6戦未勝利の低迷を“無敗・新国立”で払拭。

 FC東京と国立との相性の良さは継続した。無論、そのジンクスだけが勝利を導いた訳ではないが、5万5千を超える観客を眼前にして、「再び良いFC東京を取り戻そう」と躍起になったのは確かだろう。近6戦では、3失点での敗戦が3試合、無得点が5試合の2分4敗。荒天の影響で現地入りに労苦したアウェイ広島戦こそ3失点から2得点を返して意地を見せた形になったが、約2ヵ月間勝利から見放されていた。最後に勝利したのが、第23節の新潟戦。奇しくも国立開催の試合だ。選手ともども勝利に飢えていたファン、サポーターたちは、“国立無敗”のジンクスに縋り、期待を寄せていたのも少なくなかった。“TOKYO SUMMER NIGHT”の最後を飾る名古屋戦は、派手やかな花火の演出とともに、ゴールという名の花火を連発。久しぶりに「眠らない街」という凱歌をスタジアムを響かせた。

 怪我人や期限付き移籍などで十二分な編成が組めないFC東京だが、低迷を払拭するキーマンの一人として今季リーグ初先発となる東慶悟をボランチで起用。そして、左SBに岡、右SBに小泉と本職SBではない選手を配置。CBにはエンリケ・トレヴィザンが復帰し、ベンチには怪我で長期離脱を余儀なくされていた山下が入った。
 一方、8日のルヴァンカップ準々決勝2ndレグでPK戦にもつれ込みながら広島との激闘を制した名古屋。前節リーグ戦からは怪我をしたと思われる山岸に代えて、古巣対戦となる永井が先発にカムバック。前線にはキャスパー・ユンカー、最終ラインは河面、三國に、野上と内田が途中で入れ替わって3バックを形成。ベンチには高さと一撃があり、直近5試合4得点のパトリック、サイドをスピーディに駆け上がる倍井などが入った。

 前半開始早々、東慶悟が名古屋・GKランゲラックの正面にファーストシュートを放ったが、最初の決定機は名古屋。ゴール前のワンタッチパス交換からキャスパー・ユンカーが左脚を振るも、こちらもFC東京・GK野澤大志ブランドンの正面に。その後、FC東京が名古屋陣内へ攻め込みシュートチャンスを窺っていたが、森重の浮き球パスを跳ね返した流れから、名古屋がカウンターを発動。右へ流れていたキャスパー・ユンカーがドリブルでペナルティエリアに侵入し、左脚でGK野澤大志ブランドンの頭上を越すチップキックを放つも僅かにゴール枠上に(結果はオフサイド)。攻め込みながら明確にシュートを打てないFC東京と、攻め込まれながらもカウンターからシュートで終わる名古屋……という最近の嫌な流れが微かに脳裏を過ぎったが、13分に左サイドの荒木がサイドチェンジすると、これを受けた仲川が中央へドリブルで切り込み、ペナルティアーク付近からシュート。GKランゲラックが手を伸ばし好セーヴを見せるも、そのこぼれ球に仲川からのパスを呼び込むべく並走していた東慶悟が詰めて、スライディングしながらゴール右へ流し込み、FC東京が待望の先制点を挙げる。

 これで勢いを増したFC東京は、ほぼボールを支配し、名古屋にほぼ好機を与えない展開。そのなかで、31分に自陣からの森重のフィードに対応した名古屋・DF河面のヘディングでのクリアがゴール方向へ流してしまうと、それを見透かさかった仲川が拾ってペナルティエリアへ侵入。慌てて戻った内田が仲川を背後から倒してしまい、FC東京がPKを獲得。いつものユニークなモーションからディエゴ・オリヴェイラが冷静にPKを決めて、FC東京が追加点を奪った。

 前半なかなか優位に立てなかった名古屋は、後半開始早々から内田を中山、森島を和泉にそれぞれスイッチ。ようやく攻勢が続く場面が増え、盛り返してきたところで、FC東京はエンリケ・トレヴィザン、東慶悟、俵積田をそれぞれ木本、土肥、遠藤と3枚替えを敢行。CBの土肥はボランチでの起用となった。高とボランチを形成した土肥が守備的になることで、高が左右へ配球しやすくなったからか、仲川や遠藤へボールがスムーズに渡るようになり、また、今季はディエゴ・オリヴェイラとの距離感の悪さが攻撃の停滞を生む一つの要因となっていたが、仲川や荒木が近い距離で動くことで、攻勢が加速。65分に左サイドから仕掛けた遠藤のグラウンダーのクロスに、ファーサイドから高が駆け込んでネットを揺らし、FC東京が3点目。高は、4月のホーム浦和戦でシュートを決めるも、直前の松木のタックルが反則となりゴール取り消しの“幻”となっていたが、これで正真正銘の移籍加入後初ゴール。思えば、その浦和戦も国立だった。

 名古屋は永井をパトリックに、山中を菊地に、さらに椎橋を倍井にスイッチして反撃を試みるが、チャンスを作り出すも、木本や野澤大志ブランドンなどが弾き返して、ゴールを許さない。勝利を決定づけたいFC東京は、81分にCB三國のパスをカットした遠藤が左から名古屋DFの間を抜くスルーパスを送ると、これに反応した仲川がペナルティエリアから左脚を振り抜いてネットを揺らし、4得点目。試合を決定づけた。

 クリーンシートで終えたかったが、4得点でやや息を抜いたか、隙を見せてしまい、85分に名古屋が稲垣のゴールで反撃を開始するも、そこまで。FC東京は、直後に仲川に代えて今季初出場となる山下をピッチに送り出すと、山下は名古屋のボールホルダーに積極的にチェイシング。名古屋はペナルティエリアに進出した倍井のクロスからパトリック、和泉のスルーパスから菊地とシュートを重ねるも実らず。今季最多となる4ゴールでFC東京が快勝。国立での強さを改めて証明した。

 4得点後に稲垣に反撃弾を喰らうなど、まだ甘さも見られたFC東京だったが、おそらく苦汁の決断と思われた左SB岡、右SB小泉という選択が奏功。これまでにSBとして出場していた小泉はともかく、日本代表帰りの長友をベンチに控えさせて、従来CBの岡を左SBで起用するのは、少なからずギャンブル的要素もあった。ただ、FC東京のSBは長友、白井、名古屋に期限付き移籍中の徳元を含め、上背のない選手が多い中で、岡は186センチと高さがあり、空中戦で競り負けない強さを発揮。名古屋陣内に攻め込んだ際にはミドルシュートを放つなど、仕掛ける回数も増え、異なる形で良さを見せたのは収穫だった。
 また、東慶悟に代わってボランチで投入された土肥も、従来のCBの役割を理解していることもあってか、守備的なボランチの立ち位置でも無難にこなしていた。同時にCBとして投入された木本という存在も大きかった。その木本に後を託したエンリケ・トレヴィザンだったが、高さや対人の強さで持ち味を発揮。エンリケ・トレヴィザンと森重の冷静な対応が、終盤まで名古屋に得点を与えなかった要因の一つとなった。

 ただ、小泉、岡のSB、土肥のボランチなどのオプションは、この試合だけで成果と言えるものではない。名古屋の攻撃が低調だったこともあり、まだ不確定要素の域は出ていない。次節のアウェイ浦和戦以降、継続的に力を発揮してから判断したいところだ。

 今季初先発で初ゴールの東慶悟、久しぶりとなるディエゴ・オリヴェイラ、加入後初ゴールの高、そして仲川とそれぞれがゴールを決め、途中出場の遠藤も2アシストと、近6戦のどんよりとした空気を一掃し、今後に期待を抱かせる勝利。だが、好事魔多し。継続性があって初めて成長や進化となる。その意味でも次節の浦和戦、その後の横浜FM戦はともにアウェイゲームとなるが、この勢いを削ぐことない好内容が求められる。そして、今季まだ2勝しかしていない味スタでの鳥栖戦を迎えたい。その味スタでのホームゲームは、残り鳥栖戦、湘南戦、最終節のC大阪戦の3試合しかない。

◇◇◇

明治安田J1リーグ 第30節
2024年9月14日(土)19:04KO
国立競技場
入場者数: 55,896人
天候:晴 / 気温:27.9℃ / 湿度:60%
主審:セサル・ラモス
副審:三原 純、村井良輔
第4の審判員:長峯滉希
VAR:木村博之
AVAR:淺田武士

 FC東京 4(2-0 / 2-1)1 名古屋 

【得点】
(東):東 慶悟(13分)、ディエゴ・オリヴェイラ(31分、PK)、高 宇洋(65分)、仲川輝人(81分)
(名):稲垣 祥(85分)

〈試合経過〉
07分  警告 名古 キャスパー・ユンカー
13分  得点 東京 東 慶悟
17分  警告 名古 稲垣 祥
29分  警告 名古 内田宅哉
31分  得点 東京 ディエゴ・オリヴェイラ
46分*  交代 名古 森島 司 → 和泉竜司 / 内田宅哉 → 中山克広
50分  警告 東京 エンリケ・トレヴィザン
60分  交代 東京 東 慶悟 → 土肥幹太 / エンリケ・トレヴィザン → 木本恭生 / 俵積田晃太 → 遠藤渓太
65分  得点 東京 高 宇洋
66分  交代 名古 永井謙佑 → パトリック / 山中亮輔 → 菊地泰智
75分  交代 名古 椎橋慧也 → 倍井 謙
78分  交代 東京 荒木遼太郎 → 野澤零温
81分  得点 東京 仲川輝人
84分  警告 東京 ピーター・クラモフスキー
85分  得点 名古 稲垣 祥
86分  交代 東京 仲川輝人 → 山下敬大
87分  警告 東京 野澤大志ブランドン


【FC東京メンバー】
〈スターティングメンバー〉
GK 41 野澤大志ブランドン
DF 37 小泉 慶
DF 03 森重真人
DF 44 エンリケ・トレヴィザン
DF 30 岡 哲平
MF 08 高 宇洋
MF 10 東 慶悟
MF 71 荒木遼太郎
FW 09 ディエゴ・オリヴェイラ
FW 33 俵積田晃太
FW 39 仲川輝人

〈控えメンバー〉
GK 13 波多野豪
DF 32 土肥幹太
DF 04 木本恭生
DF 05 長友佑都
FW 14 山下敬大
FW 22 遠藤渓太
FW 28 野澤零温

〈監督〉
ピーター・クラモフスキー



◇◇◇

【明治安田J1リーグ 2024シーズン FC東京試合日程】
第01節 02月24日(土)15:00△FC東京 2-2 C大阪(A・ヨドコウ
第02節 03月02日(土)15:00△FC東京 1-1 広 島(H・味スタ
第03節 03月09日(土)16:00✕FC東京 1-2 神 戸(H・味スタ
第04節 03月16日(土)13:00〇FC東京 3-1 福 岡(A・ベススタ
第05節 03月30日(土)15:00✕FC東京 0-3 川 崎(A・U等々力
第06節 04月03日(水)19:30〇FC東京 2-1 浦 和(H・国 立
第07節 04月07日(日)17:00〇FC東京 2-0 鹿 島(H・国 立
第08節 04月13日(土)16:00△FC東京 2-2 東京V(A・味スタ
第09節 04月21日(日)15:00✕FC東京 1-2 町 田(H・味スタ
第10節 04月27日(土)14:00〇FC東京 3-1 新 潟(A・デンカS
第11節 05月03日(金)15:00〇FC東京 2-1 京 都(H・味スタ
第12節 05月06日(月)14:00〇FC東京 2-1 札 幌(A・札幌ド
第13節 05月11日(土)17:00△FC東京 3-3  柏 (H・味スタ
第14節 05月15日(水)19:00✕FC東京 1-3 名古屋(A・豊田ス
第15節 05月19日(日)15:00△FC東京 1-1 横浜FM(H・味スタ
第16節 05月26日(日)15:00✕FC東京 0-1 G大阪(H・味スタ
第17節 05月31日(金)19:00〇FC東京 1-0 鳥 栖(A・駅スタ
第18節 06月16日(日)18:00△FC東京 1-1 磐 田(H・味スタ
第19節 06月22日(土)19:00〇FC東京 1-0 湘 南(A・レモンS
第20節 06月26日(水)19:00〇FC東京 1-0 札 幌(H・味スタ
第21節 06月30日(日)18:30✕FC東京 0-1 福 岡(H・味スタ
第22節 07月06日(土)19:00✕FC東京 2-3  柏 (A・三協F柏
第23節 07月13日(土)19:00〇FC東京 2-0 新 潟(H・国 立
第24節 07月20日(土)18:00✕FC東京 1-2 鹿 島(A・カシマ
第25節 08月07日(水)19:00△FC東京 0-0 G大阪(A・パナスタ
第26節 08月11日(日)19:00✕FC東京 0-3 川 崎(H・味スタ
第27節 08月17日(土)19:00△FC東京 0-0 東京V(H・味スタ
第28節 08月24日(土)19:00✕FC東京 0-3 京 都(A・サンガS
第29節 08月31日(土)18:30✕FC東京 2-3 広 島(A・Eピース
第30節 09月14日(土)19:00〇FC東京 4-1 名古屋(H・国 立

第31節 09月21日(土)19:00 FC東京 ✕ 浦 和(A・埼 玉
第32節 09月28日(土)17:00 FC東京 ✕ 横浜FM(A・日産ス
第33節 10月05日(土)15:00 FC東京 ✕ 鳥 栖(H・味スタ
第34節 10月18日(金)19:00 FC東京 ✕ 神 戸(A・ノエスタ
第35節 11月03日(日)14:00 FC東京 ✕ 湘 南(H・味スタ
第36節 11月09日(土)14:00 FC東京 ✕ 町 田(A・国 立
第37節 11月30日(土)14:00 FC東京 ✕ 磐 田(A・ヤマハ
第38節 12月08日(日)14:00 FC東京 ✕ C大阪(H・味スタ

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