ヤマザキナビスコカップの決勝トーナメント準々決勝第1戦は、互いに攻め合って2得点ずつのドローで終了。第2戦は中3日でFC東京がアウェイへ乗り込むことになる。この試合で鹿島にアウェイゴール2点を決められたことにより、第2戦では鹿島は1失点までのドローなら勝ち抜けとなり、多少有利な展開に(ドロー決着の場合、FC東京は3点以上獲らないと勝ち進めない)。
しかしながら、FC東京にとっては“とにかく勝利する”ということだけに意識を集中させるというシンプルな考え方も出来るゆえ、準々決勝突破の可能性はそれほど低いものにもならないはずだ。
日本代表として森重が選出された後、浦和・槇野の負傷により丸山が急遽追加招集されたことで、この日の試合はCB2枚を欠くという状況に。純粋なCBのバックアップがいないなかで、吉本とコンビを組んだのは今季初スタメンの奈良。さらには、橋本、中島などフレッシュな面々がスタメンに名を連ねた。
試合はFC東京が太田からの速いクロスを河野が頭でそらして鹿島GK曽ヶ端の意表を突くループ気味のゴールで先制するも、次第に鹿島のペースに。立て続けに鹿島のCKが続く苦しい展開に何とかFC東京も持ちこたえていたが、前半終了間際の43分に、左エリア奥へワンツーパスを受けて進出した鹿島SB山本がゴールライン寸前まで切り込み、中央へグラウンダーを送ると、ニアに飛び込んできた赤崎に押し込まれて同点に追いつかれる。
その嫌な流れを断ち切ろうと、アディショナルタイムに後方からの浮き球に反応した河野が鹿島DFとの競り合いに勝ってシュートを放つも、ポスト右を叩いたボールは無情にもGK曽ヶ端の下へ跳ね返って得点ならず。鹿島にアウェイゴールを献上して後半へと移る。
後半、注意しなければならない“入りの10分”はFC東京が鹿島陣内で支配する時間も多かったが、シュートまでには持ち込めず。すると、鹿島は赤崎に代えて土居を投入し、アクセントをつけにかかる。FC東京はSB西に右エリアへの侵出を許すと、西からダヴィ、さらに遠藤とボールが渡り、遠藤が中へカットインしてシュート。これがポスト右に当たりながらネットを揺らすゴールとなり、勝ち越しを許してしまう。
その後はオープンな展開によるカウンター合戦の様相に。
FC東京は失点前に投入した東に続き、60分を過ぎてた後に平山、さらにはサンダサをピッチへ送る。攻めては守り、守っては攻めという応酬にスタジアムも白熱。だが、疲労もあって互いにミスも多く、決めきれないまま終盤へ。まもなく90分となる頃、右サイドを駆け上がった徳永が中央へクロス、中央のサンダサが届かないまでも頭でそらした格好となったボールが左からエリアへ詰めていた中島の下へ跳ねると、中島が低いグラウンダーのシュート蹴り込み同点。押せ押せのムードになるなか、アディショナルタイムにもチャンスを作るが、もう一度ネットを揺らすことは出来ないまま、2対2のドローで第1戦を終えた。
アウェイゴールは痛いが、負けずに次戦へ持ち越せたのが幸いか。結果はもちろん、攻撃へのスイッチ、連動性や素早い判断などは正直なところ、鹿島に分があった。左右にボールを散らしながら、決して速攻だけに頼らない、相手の動き出しを図ったようなパス回しでFC東京のディフェンスを食いつかせては交わすといった戦術は、事前のスカウティングによるものだろう。FC東京の選手たちも早いプレッシャーを掛けようと試みるも、その狡猾なパス回しに翻弄されかける場面が散見された。
それでも、粘り強く食らいついて堪えていたものの、失点した場面では一瞬気を緩ませたのか、相手への素早いプレッシャーを怠り、ボールを持たれた結果、DFの前のニアに飛び込んだ赤崎に押し込まれた。これは非常に悔いの残る失点だったはずだ。
互いに闘志を見せ“闘っていた”とは思う。だが、その中での冷静な判断と対処が試合の大きなポイントとなったのも確か。初先発となった奈良も健闘したとは思うが、すぐにクリアすべきところを繋ごうとして囲まれたり、押し込まれてもたつく場面も。吉本が倒れていた場面も外に蹴り出して、早く担架を招き入れる状況にしたかったが、そのままボールを前へ運んでいってしまった。攻勢をかけるのならばもっと素早く前線へボールを運ぶべきだったことを考えると、そのあたりの視野の狭さ(というより冷静な判断)は、今後の大きな課題となるだろう。
それは奈良だけにいえることではなく、チーム全体としていえることでもある。相手のプレッシャーを避けようと相手陣に背を向けてプレーすることが多くなると、守備やチームバランスが崩れ始め、ミスの確率が増えてくる。攻勢をかけている時の積極的なチャレンジでのミスは許容出来るが、最終ラインなどでボールを持つ時には、相手と競り合いながら交わすといったようなギャンブル的な状況は避けなければならない。リスクを負わずに早い判断で対処する場面とリスクを持って積極的に畳み掛ける場面とのメリハリをもう一度チーム全体で共有しておかなければならないだろう。
代表選手や怪我人で万全なチーム状態でないなか、試合巧者の鹿島のホームで勝つことは並大抵のことではない。とはいえ、鹿島にも付け入る隙がなかった訳ではなく、ファン・ソッコをはじめとするDF陣を慌てさせた場面は幾度もあった。中島のゴール、橋本の惜しいシュートもあった。奈良もPKととられてもおかしくない対応があったとはいえ、90分フルに闘えた。この経験は大きい。この試合で出場がかなわなかった他の選手たちへの発奮にもなっただろう。さらには、平山とサンダサのコンビには、何か“結果”を予感させるものもあった。
状況は厳しいが、シンプルに勝つことだけに専念出来ると考えれば、試合のやり辛さはないだろう。何としても先制して鹿島を焦らせたいが、仮にそう思うような展開にならなくとも、狙える瞬間は常にゴールを狙うというシンプルな意識を持って、執念で準決勝進出を勝ち取ってもらいたい。
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【ヤマザキナビスコカップ 準々決勝 第1戦】
2015年09月02日/味の素スタジアム/19:04キックオフ
観衆:10,443人
天候:晴
気温:26.4度 湿度:81%
主審:家本政明/副審:田中利幸、中野卓
FC東京 2(1-1/1-1)2 鹿島
得点:
(東)河野広貴(15分)、中島翔哉(88分)
(鹿)赤秀平(43分)、遠藤康(61分)
≪スターティングラインアップ≫
13 GK 榎本達也
02 DF 徳永悠平
29 DF 吉本一謙
33 DF 奈良竜樹
06 DF 太田宏介
04 MF 高橋秀人
07 MF 米本拓司
37 MF 橋本拳人 → サンダサ(79分)
17 FW 河野広貴 → 東慶悟(59分)
20 FW 前田遼一 → 平山相太(63分)
39 FW 中島翔哉
≪サブスティテューション≫
41 GK 波多野豪
50 DF 松田陸
34 MF 野澤英之
38 MF 東慶悟
08 MF 三田啓貴
21 FW サンダサ
09 FW 平山相太
≪マネージャー≫
マッシモ・フィッカデンティ
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【2015Jリーグヤマザキナビスコカップ】
≪予選リーグAグループ≫
第01節 03月18日(水)19:00〇 FC東京 2-1 新 潟(H・味スタ)
第02節 03月28日(土)17:00△ FC東京 1-1 松 本(A・松本平)
第03節 04月08日(水)19:00 (休み)
第04節 04月22日(水)19:00〇 FC東京 2-0 鳥 栖(H・味スタ)
第05節 05月20日(水)19:00〇 FC東京 2-1 甲 府(H・味スタ)
第06節 05月27日(水)19:00△ FC東京 1-1 広 島(A・Eスタ)
第07節 06月03日(水)19:00△ FC東京 0-0 湘 南(A・BMWス)
≪グループA 順位≫
01 FC東京 12/6/3/3/0/8/04/+4
02 新 潟 11/6/3/2/1/9/04/+5
03 広 島 09/6/2/3/1/9/06/+3
04 湘 南 09/6/2/3/1/5/05/+0
05 鳥 栖 08/6/2/2/2/3/04/-1
06 松 本 04/6/1/1/4/8/13/-5
07 甲 府 02/6/0/2/4/4/10/-6
※(勝点/試合数/勝/分/負/得点/失点/得失点差)
≪決勝トーナメント≫
準々決(1) 09月02日(水)19:00△ FC東京 2-2 鹿 島(H・味スタ)
準々決(2) 09月06日(日)18:30 FC東京 - 鹿 島(A・カシマ)
準決勝(1) 10月07日(水)
準決勝(2) 10月11日(日)
決 勝 10月31日(土)
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