滑らかでメロディアスな要素を多分に含んだ、ノリ心地の良い陽性的なポップなサウンドが目白押しで、ハウス・ミュージック・ビギナーはもちろん、複雑でディープなハウスに飽きたヘヴィ・リスナーにとっても、ハウス・ミュージックの核である心躍らせるキラキラ感が満載の本作で、ハウスに接した時の初心に戻れること請け合いだ。
リード・トラックでオープナーでもある「Life Is Sweet」が、本作の質をすべて物語っているといっても言い過ぎではないだろう。タイトルで述べるまでもなく、“スウィート”という言葉を表現するのに絶妙なキャッチーなサウンドと純度の高いSaikoのヴォーカルが光る。その“スウィート”は決して甘過ぎることなく、ほろ苦さを知っている大人が知る“甘さ”で、直情的ではなく時間が経つほどにじんわりやんわりと浸透していく。またSINGO Kubotaのギターを効果的に配したアレンジも秀逸な、スタイリッシュなナンバーだ。
浮遊感漂うイントロから晴天へと突き抜ける爽快感が高揚を誘う「Overflow」は、水平線の広がる果てへと真っ直ぐに進んでいくように疾走するサウンドと芯の強さが感じられるamigoのバランス感覚の高いヴォーカルがベスト・マッチ。GOKUがヴォーカルをとる「Because Of You」はマイナー調のクロスオーヴァー。Ryoheiを彷彿とさせるフットワークの軽さが感じられるヴォーカルだが、無理にコーラスで派手やかにすることなくしっかりとクオリティを保つセクシーなナンバーだ。
だが、単にスウィートでキャッチーな曲だけを集めただけではない。
VERBALを思わせるフロウを刻むヴァースとamigoによる落ち着いた雰囲気のコーラスがほどよく融合したジャジーなヒップホップ「Love & Hate」、グッとムーディに落とし込んだラテンのノスタルジーをフィーチャーしたアダルトな「Night Play」、ピアノ・コードまでもが腰を揺るがすように弾けるサルサ風ハウス「The Rumble Salsi Toxic Heat!」に、ホーン・サウンドを大胆に採り入れたゴージャスなアシッド・ジャズ風ハウスともいえる「Galaxia」。さらには、低音でファットなビートをメインに敷き、尖ったGOKUのフロウとファーギーやグウェン・ステファニーよろしくSaikoが絡みつくような粘着性あるヴォーカルを披露する「Delicious」、capsuleらの中田ヤスタカ・サウンドにも劣らないエレクトロ・ハウス「Som Da Vida」など、ハウス・ミュージックをさまざまな角度からフォーカスしアプローチするという、彼らが持つ音楽的な奥行きの多彩さに驚くことだろう。
そして、本作の最大のトピックとなりうるのは、マイケル・ジャクソン「Rock With You」のカヴァーだろう。オリジナルのイメージを壊すことなく、爽快感と麗しいサウンドワークを重視したと思われるシンプルなカヴァーだ。ただ、流麗過ぎる感もあってサラッと聴き流せてしまうアレンジが、ややグルーヴ感を削いでしまったのかなという気も。良作には代わりはないのだが、オリジナルのブラックな要素をもう少々採り入れるとか、あるいはクインシー・ジョーンズによるブランディーをフィーチャーしたヴァージョンのようにコーラスにアドリブを施してみるなど色を加えると、綺麗過ぎるヴォーカルの印象も変わるのかな、という気がした。
とはいえ、これだけ多彩な要素をスタイリッシュなサウンドと瑞々しさの溢れるヴォーカルに乗せて一気に聴けるアルバムも多くはない。日常をちょっとオシャレに、そしてネガティヴな気分もポジティヴに。ハウス・ユーザーに囚われることのない、ユースフルな傑作といえよう。
◇◇◇
cargo - Life Is Sweet
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ガラでもなく、こういうオサレなサウンドやPVに弱いのでした…
ヽ(°▽、°)ノエヘヘヘヘ
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