鹿島 vs FC東京【J1リーグ】

　集中力や反応の差で上回る鹿島に敗戦し、リヴェンジ喰らう。

　湿度90％という過酷な気候、ボックス内での鹿島の選手のハンドに見えたシーンをはじめ、正当なチャージやスライディングに見えたシーンを警告にしたり、あるいは相手側のファウルにしたり等、双方のチームにとっても不満が溜まる主審の不安定な印象のレフェリングもあって、ストレスフルな一戦ではあった。だが、そういった状況のなかで勝ち点3を奪うための意識と集中力において、鹿島が一つ上をいっていたということになるのだろう。

　序盤はFC東京がペースを掴み、鹿島のハイラインの裏を狙う展開で攻勢を仕掛けた。そして、FC東京のパスをカットしようと足を伸ばしたチャヴリッチが負傷交代を余儀なくされる。FC東京としては、その流れで得点を奪いたいところだったが、鹿島の素早いプレスにチャレンジすることを怯え、パスの優先度がバックパスになってしまうと、鹿島は鈴木優磨にボールを収めることで、ペースを取り戻す。どちらにも主導権が転がりそうな時間帯となった30分、鹿島はボックス内のDF関川がディエゴ・オリヴェイラのシュートを下腹部で跳ね返すと、そこからカウンターを発動。柴崎から鈴木、仲間と繋いで、師岡のシュートが弾かれたこぼれ球に反応したのが名古。FC東京・DF徳元が伸ばした足を半歩掻い潜るように持ち出してから振り抜いた右脚からのシュートがネットを揺らして、鹿島が先制に成功した。

　その後も鹿島のペースで試合が進み、FC東京は防戦を強いられるが、鈴木が絶好機をゴール上に外してしまうなど、鹿島の決定力にも助けられて試合が進むと、41分に徳元のパスを受けた遠藤が鹿島・DF濃野を振り切ってカットインシュート。鹿島DFに当たってゴールへ吸い込まれ、FC東京が個の力で試合を振り出しに戻した。

　ただ、後半に入ると、したたかな鹿島が再び得点を奪う。47分に安西の大きな右サイドへの展開から師岡が右サイド奥でマイナスのパスを濃野に送る。濃野がペナルティエリアの名古に出したパスは、一度FC東京守備陣に当たったものの、そのこぼれ球にいち早くリアクションした濃野が、ニアサイドへシュートを打ち抜く。後半立ち上がり早々の時間帯で、鹿島が勝ち越した。
　FC東京は62分に安斎を俵積田に、78分に高を原川に、86分には白井、遠藤、岡を長友、野澤零温、森重にそれぞれスイッチして反撃を試みるが、鹿島も交代策を駆使して主導権を渡さず。そのまま鹿島が1点差を守り切って、国立での敗戦にリヴェンジする形となった。

　鹿島は素早いプレスとボールへの反応がFC東京を上回っていた。FC東京はそのプレスを掻い潜ればチャンスを迎えるが、球離れやパスへの判断が鹿島よりも遅いため、結局後ろや横へのパスが最優先となってしまって、その間に鹿島にコンパクトなブロックを作られ、攻め手を失う形が多数。この試合に限らずだが、ボールを収められるディエゴ・オリヴェイラを起点にするとチャンスは創出されるが、その後が続かない。鹿島の最終ラインとボランチの間に立っている仲川を上手く使えず、今季終始そうだが、仲川を孤立させてしまう時間が長いため、勢いある攻撃をなかなか生み出せないでいる。両サイドから持ち上がるも、前線が足らずにスローダウンしたり、一旦最終ラインに戻した後で岡が前方にロングボールを蹴り出しても、さほど高さがある前線ではないため、セカンドボールを奪えずに攻撃が終わってしまうことの繰り返しだ。

　ピンチになるのは常に攻撃が中途半端になってボールを奪われた後、守備陣形が整っていないところでのバタつきから失点を繰り返してしまう。この試合でも鹿島の得点時はゴール前に人数は揃っているのだが、ボールや人への対応が整理されていないため、その隙を突かれてしまっている。余裕をもってボールを持てている時はいいのだが、相手がボックス付近で畳み掛けてくる時に、自分が行くのか、エリアを任せるのか、誰がどこを担当するのかといったことが整理されないまま、ただボールの動きにリアクションするだけでは、なかなか効果的な守備は繰り出せない。

　その指示を含めて、ゴール前の守備に安定をもたらせる大きなポジションがGKではあるが、波多野はパフォーマンスの巧拙の差が激しく、今回は拙の方が出てしまった。鹿島の2得点のシュートは、結果的に得点となったとしても、シュートに反応して身体に当てるくらいはしなければいけない。クロスボールに飛び出すも触れず、関川のシュートが外れて失点を免れた場面もあったが、そのあたりを改善しないと、パリ五輪代表でチーム離脱中の野澤大志ブランドンから正ポジションを勝ち取ることは難しくなってくる。

　また、岡は奮闘しているが、まだハイボールの処理に不安を残すところも。ロングボールの精度もあと一歩というところだが、ここは経験を積んでいくしかないのだろう。終盤登場した森重は、往年のスピードに欠けることもあり、最近はサポーターから揶揄されることも少なくなくなってきているが、それでもこの試合では出場後の空中戦はおそらく全勝し、FC東京の攻撃へ繋がる跳ね返しを見せていたから、安定性という意味では岡よりも数段上。岡にしろ、森重にしろ、守備の整備をしっかりとすれば、対戦相手や場面によって好パフォーマンスを出せる素地は十分にあるゆえ、最大限に好パフォーマンスを発揮することが出来る約束事を確立、徹底することが肝要だ。

　次節のG大阪戦まで約2週間強のインターブレイクがある。敗戦して中断期間に入るのは良いことではないが、逆にリフレッシュして次に臨めるとポジティヴに考えて、好転のきっかけにしたいところ。ただ、そのためには、このインターブレイクで何をやるかが重要。判断、反応において素早さが圧倒的に足りない現状を打開すべく、猛暑のなかでも集中力が低下しないロジックを意識して、アウェイG大阪、そして多摩川クラシコ、東京ダービーという味スタ連戦で勝利し、後半の勢いへと繋げたい。

◇◇◇

明治安田J1リーグ　第24節
2024年7月20日（土）18:04KO
県立カシマサッカースタジアム
入場者数： 24,304人
天候：晴 ／ 気温：26.5℃ ／ 湿度：90%
主審：山本雄大
副審：渡辺康太、岩田浩義
第4の審判員：井上知大
VAR：田中玲匡
AVAR：五十嵐泰之

鹿　島 2（1-1 / 1-0）1 FC東京　

【得点】
（鹿）：名古新太郎（30分）、濃野公人（47分）
（東）：遠藤渓太（41分）

〈試合経過〉
11分　　交代　鹿島　チャヴリッチ → 仲間隼斗
24分　　警告　鹿島　ランコ・ポポヴィッチ
30分　　得点　鹿島　名古新太郎
37分　　警告　東京　安斎颯馬
41分　　得点　東京　遠藤渓太
47分　　得点　鹿島　濃野公人
62分　　交代　東京　安斎颯馬 → 俵積田晃太
72分　　警告　鹿島　知念　慶
73分　　交代　鹿島　柴崎　岳 → 三竿健斗 ／ 師岡柊生 → 樋口雄太
78分　　交代　東京　高　宇洋 → 原川　力
78分　　警告　東京　岡　哲平
82分　　交代　鹿島　仲間隼斗 → 藤井智也 ／ 名古新太郎 → 徳田　誉
85分　　警告　東京　仲川輝人
86分　　交代　東京　白井康介 → 長友佑都 ／ 遠藤渓太 → 野澤零温 ／ 岡　哲平 → 森重真人


【FC東京メンバー】
〈スターティングメンバー〉
ＧＫ　13　波多野豪
ＤＦ　99　白井康介
ＤＦ　04　木本恭生
ＤＦ　30　岡　哲平
ＤＦ　43　徳元悠平
ＭＦ　08　高　宇洋
ＭＦ　37　小泉　慶
ＭＦ　39　仲川輝人
ＦＷ　09　ディエゴ・オリヴェイラ
ＦＷ　22　遠藤渓太
ＦＷ　38　安斎颯馬

〈控えメンバー〉
ＧＫ　01　児玉　剛
ＤＦ　03　森重真人
ＤＦ　05　長友佑都
ＭＦ　10　東　慶悟
ＭＦ　40　原川　力
ＦＷ　28　野澤零温
ＦＷ　33　俵積田晃太

〈監督〉
ピーター・クラモフスキー



◇◇◇

【明治安田J1リーグ 2024シーズン FC東京試合日程】
第01節　02月24日(土)15:00△FC東京 2-2 Ｃ大阪（Ａ・ヨドコウ）
第02節　03月02日(土)15:00△FC東京 1-1 広　島（Ｈ・味スタ）
第03節　03月09日(土)16:00✕FC東京 1-2 神　戸（Ｈ・味スタ）
第04節　03月16日(土)13:00〇FC東京 3-1 福　岡（Ａ・ベススタ）
第05節　03月30日(土)15:00✕FC東京 0-3 川　崎（Ａ・Ｕ等々力）
第06節　04月03日(水)19:30〇FC東京 2-1 浦　和（Ｈ・国　立）
第07節　04月07日(日)17:00〇FC東京 2-0 鹿　島（Ｈ・国　立）
第08節　04月13日(土)16:00△FC東京 2-2 東京Ｖ（Ａ・味スタ）
第09節　04月21日(日)15:00✕FC東京 1-2 町　田（Ｈ・味スタ）
第10節　04月27日(土)14:00〇FC東京 3-1 新　潟（Ａ・デンカＳ）
第11節　05月03日(金)15:00〇FC東京 2-1 京　都（Ｈ・味スタ）
第12節　05月06日(月)14:00〇FC東京 2-1 札　幌（Ａ・札幌ド）
第13節　05月11日(土)17:00△FC東京 3-3 　柏　（Ｈ・味スタ）
第14節　05月15日(水)19:00✕FC東京 1-3 名古屋（Ａ・豊田ス）
第15節　05月19日(日)15:00△FC東京 1-1 横浜FM（Ｈ・味スタ）
第16節　05月26日(日)15:00✕FC東京 0-1 Ｇ大阪（Ｈ・味スタ）
第17節　05月31日(金)19:00〇FC東京 1-0 鳥　栖（Ａ・駅スタ）
第18節　06月16日(日)18:00△FC東京 1-1 磐　田（Ｈ・味スタ）
第19節　06月22日(土)19:00〇FC東京 1-0 湘　南（Ａ・レモンＳ）
第20節　06月26日(水)19:00〇FC東京 1-0 札　幌（Ｈ・味スタ）
第21節　06月30日(日)18:30✕FC東京 0-1 福　岡（Ｈ・味スタ）
第22節　07月06日(土)19:00✕FC東京 2-3 　柏　（Ａ・三協Ｆ柏）
第23節　07月13日(土)19:00〇FC東京 2-0 新　潟（Ｈ・国　立）
第24節　07月20日(土)18:00✕FC東京 1-2 鹿　島（Ａ・カシマ）

第25節　08月07日(水)19:00　FC東京 ✕ Ｇ大阪（Ａ・パナスタ）
第26節　08月11日(日)19:00　FC東京 ✕ 川　崎（Ｈ・味スタ）
第27節　08月17日(土)19:00　FC東京 ✕ 東京Ｖ（Ｈ・味スタ）
第28節　08月24日(土)19:00　FC東京 ✕ 京　都（Ａ・サンガＳ）
第29節　08月31日(土)18:30　FC東京 ✕ 広　島（Ａ・Ｅピース）
第30節　09月14日(土)19:00　FC東京 ✕ 名古屋（Ｈ・国　立）
第31節　09月21日(土)19:00　FC東京 ✕ 浦　和（Ａ・埼　玉）
第32節　09月27日(金)19:00or28日(土)17:00　FC東京 ✕ 横浜FM（Ａ・日産ス）
第33節　10月05日(土)15:00　FC東京 ✕ 鳥　栖（Ｈ・味スタ）
第34節　10月18日(金)19:00or19日(土)14:00　FC東京 ✕ 神　戸（Ａ・ノエスタ）
第35節　11月03日(日)14:00　FC東京 ✕ 湘　南（Ｈ・味スタ）
第36節　11月09日(土)14:00　FC東京 ✕ 町　田（Ａ・国　立）
第37節　11月30日(土)14:00　FC東京 ✕ 磐　田（Ａ・ヤマハ）
第38節　12月08日(日)14:00　FC東京 ✕ Ｃ大阪（Ｈ・味スタ）

◇◇◇