前節の広島戦がシュート23本(広島は8本)、今節が15本(仙台は4本)。それでもゴールが決まらない。単に決定力不足という言葉では片付けられない重荷が、東京の選手達に覆いかぶさっているようだ。
これまでボランチで使ってきた徳永を本来のサイドバックに戻し、梶山と羽生をボランチにした布陣で臨んだ。90分を通じて、ポストに当たって跳ね返ったシュートを打たれたものの、正直なところ、仙台の攻撃は脅威に足るものではなかった。キーマンであるリャン・ヨンギには仕事をさせなかったし、守備という面では及第点といえるだろう。
問題は攻撃なのだが、シュートチャンスを多く作っておきながら、萎縮しているのかプレッシャーなのか解からないが、失敗を恐れてチャレンジすることがなくなっている。確かに、闇雲にシュートを打ったところでゴールの可能性が高まることがないのは解かっている。しかし、常にゴールを狙う姿勢なくして、相手の守備を掻い潜ってゴールすることなどありえないのだ。「ミスをしてはいけない」という思いが自らに大きな負荷をかけてしまい、打てるときに(確実性を求めた結果だとしても)打たずにパスを出したり、迷いの中でのプレイのゆえ、判断が僅かに遅れることでシュートコースをブロックされたり。技術という面では、小平での練習でその精度は補えるが、ゴールを奪うという気持ちに歯止めがかかっては、その練習も無駄なものになってしまう。
失敗を恐れるというのは、シュートを狙う場面ばかりではない。サイドを崩したはいいが、寄せられると焦って中へ精度のないクロスを上げてみたり、せっかく中盤から持ち上がってエリアへとスピーディに侵入出来る態勢かと思いきや、周囲の上がりを待ってしまい、結局相手に自陣に戻られてシュートコースを消されてしまったり……。
不安が常に過ぎるからか、パスも足元ばかりで、カウンターも速攻にはならずに消化不良で終わってしまう。遅攻というと聞こえはいいが、結局ボールを持てているだけで、フィニッシュまで繋げられない。リスクを冒した速攻があって、はじめて遅攻も活きると思うのだが、眼前のミスに怯えるあまり、自らのプレイに自信が持てず、臆病になっている。それがかえって周囲を鈍化させ、結果が伴わない不安から、停滞感と悪循環だけが生まれるという状態だ。野球でいえば、打たれたらいけないと思ってフォークを連投し、四球をどんどんと積み重ねている状況のようだ。内角へ直球を投げ込むという度胸とリスクを負って勝負するからこそ、フォークも活きるのと同じ。投球の生命線となる直球を使うからこそ、攻められるのだ。ゴールが見えたら思い切ってシュート……という生命線なくして、ゴールは生まれない。
後半、リカルジーニョに代えて松下を、梶山に代えて中村を、鈴木に代えて赤嶺を投入した。そして、出来上がった布陣は、本来DFである長友がサイドに、SBで先発した徳永をボランチに戻し、MFの松下と中村が両SBに陣取るという光景だった。長友が1つ上がって……というのは、これまでのオプションとしてあった戦術だが、点を取りに行かなくてはならないところで、MFをSBに置くというのはどうなんだろうか。もちろん、そういう布陣の対策をしているからこそ実践されたのだと思うが、東京においてFKの名手二人を守備的な位置に配しても、効果的な攻撃の確率はそれほど高くないとは思うのだが……。
この試合の混迷は、試合開始序盤のビッグチャンス、右サイドからのグラウンダーをリカルジーニョがスルーしてドフリーとなった平山がシュートを外したことから始まった。梶山の自陣ゴール前での軽いプレーからピンチを招き、相手へ流れを呼び寄せてしまったこともある。振り回されるかのごとく走り回った羽生は、やはりもう1つ前でプレイさせてやれないものか。石川は怪我の影響がまだ払拭されないのか、実践での昨年の精度の高さは、まだそこまで期待出来ないのかもしれない……。などなど、言い始めればキリがないが、一つ言えるのは、結果を恐れてチャレンジすることを忘れてはならないということ。技術的な問題よりも精神的な問題が大きな原因だと思う。精神的な問題だからこそ、その根は深いのだが。
今は闇雲でもいい。貪欲さ、ひたむきさを前面に出して、ゴールを狙う。そのために何が出来るかを考え、それぞれがベストを尽くす。そういう多少荒っぽくともがむしゃらな姿勢が形や結果になった時、これまでの停滞や混迷が払拭される契機が来るのだと思う。そう信じて、今はやるしかないのだ。
◇◇◇
Jリーグディビジョン1 第10節
2010/05/05 味スタ
FC東京 0(0-0、0-0)0 仙台
【得点】
観衆:26,406人
天気:晴、弱風
<メンバー>
20 GK 権田修一
02 DF 徳永悠平
03 DF 森重真人
06 DF 今野泰幸
05 DF 長友佑都
10 MF 梶山陽平 → 14 MF 中村北斗(68分)
22 MF 羽生直剛
18 MF 石川直宏
11 MF 鈴木達也 → 09 FW 赤嶺真吾(73分)
16 FW リカルジーニョ → 08 MF 松下年宏(61分)
13 FW 平山相太
01 GK 塩田仁史
17 DF キムヨングン
33 DF 椋原健太
24 FW 重松健太郎
◇◇◇
仙台ゴール裏。
味スタへようこそ。
仙台ゴール裏。
結束力の高い声援は、なかなかの迫力。
東京ゴール裏。
今日こそ勝ち点3を。
選手紹介。
#13。この人に奮起してもらわねば。
意気揚がる東京ゴール裏。
仙台ゴール裏も大声援で選手を迎える。
選手入場時、今日は頼むぞと活気付く東京ゴール裏。
選手整列。
試合直前。ピッチの感触の最終チェック。
円陣。
さて、どんな展開が待っているか。
試合終了。
結果は、スコアレスドロー。
疲労と虚しさや悔しさから、ピッチに座り込む東京の選手達。
バックスタンド挨拶後の東京の選手達。
石川をはじめ、うつむき加減でバックスタンド前を進む。
結果を出せず、うな垂れる13番。
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