*** june typhoon tokyo ***

Foxxi misQ 『GLOSS』

Foxximisqgloss CHIE、DEM、YU-Aをメンバーとして2006年7月にデビューしたガールズ・ユニット“Foxxi misQ”(フォクシー・ミスク)。日本テレビ系『歌スタ』をきっかけに、ACHILLESとOh! BEからなるサウンド・プロデュース・ユニット“Face 2 fAKE”が「日本のデスチャを作りたい」とプロデュース。ジャケットなどの写真ではYU-A(岩佐真悠子風)がセンターに来ることが多いが、ヴォーカル・スタイルはそれぞれの個性を最大限に発揮させるため、メイン・ヴォーカル+コーラスという形態をとらず、メイン・ヴォーカルの集合体という斬新なスタイルをとる。名刺代わりの一発とでも言わんばかりのタイトル「Tha F.Q's Style」を1stシングルとしてリリース。そして約1年後の2007年6月にこの1stアルバムが届けられることとなった。

◇◇◇

 新たな“ジャパニーズ・フィメール・ブラック”の先鞭。

 JiNをラップに、Nao'ymtをライティングに迎えたデビュー・シングル「Tha F.Q's Style」は、本家デスチャをも上回るようなアッパーなトラックで、て、Face 2 fAKEが満を持して送り込んだ力作。2nd「ULTIMATE GIRLS」も“究極のいいオンナ!”というタイトルよろしく、HOZEとのラップとセクシーなヴォーカルを絡み合わせた官能的なアップ・チューンとなった。しかし、リリース当初はそこそこの注目は浴びるものの、ヒット・チューンといえるまでには至らず。サウンド先行という目も出てきてもおかしくはなかった。だが、数多くのライヴに出演することで、表現力を磨き、ユニットとしての幅広さを得た彼女ら。次第にFace 2 fAKEが目指すトラックと理想的に融合しはじめ、ZEEBRAをフィーチャーした「Luxury ride」で結実する。シングル4曲以外に加えられた9曲のニュー・トラックを聴くにつれ、そのことが如実に窺えるのである。

Fq_5_1024a アシッド・ジャズ・バンドを組んだ経験があり、ケリー・サエ(Kelli Sae)、インコグニート(Incognito)に影響を受けたCHIE、ブラック・アイド・ピーズ(Black Eyed Peas)のファーギー(Fergie)やビヨンセ(beyonce)に魅了されたDEM、マイケル・ジャクソンのPVに刺激を受け、ハスキーなヴォイスを駆使するYU-A。彼女らが持つそれぞれの嗜好と表現力を出来るだけ活かした楽曲群は多岐にわたる。オープナーから2曲シングルのあとに続く「I like it」は、は、JiNをフィーチャーしたミッド・スローで、アッパーだけではない彼女たちの魅力を充分に詰め込んだムーディなサマー・チューンだ。
 また、ソウルフルなスロー・チューン「I'll never know」、煌めきとファンクが出会った「Magnetic」などのネオ・ソウル系サウンドがあったかと思えば、原田喧太のヘヴィなギターを駆使した骨太ロック「Delicious Circus」で女の芯の強さを誇示。その姿は、サウンド・テイストこそ違えど、デスチャ「サヴァイヴァー」のごときパワフル・ウーマン宣言だ。モンドグロッソにも在籍していたFU-TENのB-BANDJをフィーチャーした、陽気なラテン調ビートを軸にアグレッシヴなアップに仕上げた「Higher」、CORN HEADの高速フレーズが畳み掛けるアッパー・ラガ・マフィン「Golden Palace」、レゲエ・ホーンを巧みに組み込んだラヴァーズ・ロック調「Crush on you」、“E”qualのラップによって3人のアダルトなヴォーカルが引き立つ「A Taste Of Honey」などには、エスニックで土着的な要素を混入している。
 もちろん、当初から軸としてきたダンス・チューンにもさらなる成長が垣間見られる。HOZEを迎えたアッパー・バウンスの3rd「A-L-I-V-E」、ZEEBRAのキレの鋭いラップが存在感を示す、完成度としても申し分のない4th「Luxury ride」らに比肩する「Party Booty Shake」は、Miss Mondayをフィーチャー。和やかなハーモニーを披露したイントロダクションから続いてスタートするこの曲だが、Miss Mondayのメリハリある潔いラップに導かれ、3人のヴォーカルは活き活きとしている。彼女らに楽しげに、そして伸びやかに表現させたMiss Mondayの頼りがいある姉さんぶりは見事である。

 R&Bスタイルを追求したアーティストはいくらでもいる。しかし、単なる追求だけではいつしか齟齬をきたしてしまう。
Foxxi misQはR&Bを求めていない。そういったら言い過ぎかもしれない。だが、彼女たちの個々を活かしたスタイル、多角的なベクトルと多彩な表現力、そして背伸びをするのではなく、理想を求めて着実に踏み出していく姿を見れば、その意味も理解出来ると思う。R&Bを求めるのではなく、彼女らのスタイル、すなわち“F.Q's Style”の完全体(=“ULTIMATE GIRLS”)を求めているのだ。感情や本能をむき出しにして魅せる官能性や、常にアグレッシヴで力強い女性を歌う一方で、下世話や女性が持つ繊細さを醸す日常性を孕んだ詞を披露する。人間味の溢れた彼女らは実に刺激的だ。
 しっかりと根を張った向上心、三位一体が生むスペクタクルなサウンド。今後の日本の新たなシーンの礎になるかもしれない大いなる資質と可能性を含有したマスターピースだ。 

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