*** june typhoon tokyo ***

MAYER HAWTHORNE & THE COUNTY@Billboard Live TOKYO

■ メイヤー・ホーソーン&ザ・カウンティ

Mayer_hawthorne_and_the_county

 デトロイト(ミシガン州)出身でカリフォルニアを拠点に活動するメイヤー・ホーソーンとそのバック・バンド、ザ・カウンティによる初来日公演を鑑賞@ビルボードライブ東京。2ndショウ。
 メイヤー・ホーソーンはレトロなソウル・ミュージックを体現する白人シンガー・ソングライターで、60、70年代の旧き良きソウルの薫りがふんだんに盛り込まれているセンスの良い楽曲が魅力。ジャイルス・ピーターソンやマーク・ロンソンからも注視されているという30そこそこの男は、DJ・ヘアカット(DJ Haircut)としてアスレティック・マイク・リーグ(Atheletic Mic League)というヒップホップ・グループに所属したヒップホップ好きで、DJ・ヘアカット名義ではすでに来日を果たしているという。パッと見ると、蝶ネクタイを付けながら足元はスニーカーというセンスにも見られるように、今風のファッショナブルな若者(でも嗜好はレコードオタク)という感じだ。

 ステージは左からキーボードのクインシー・マクラリー(黒人、坊ちゃんという感じ)、ギターのトファー・モーア(白人、UKロック・バンドにいそうなイケメン)、ドラムのクエンティン・ジョセフ(黒人、「正確なリズムを叩く……けど、“ヒューマン・ビーイング(人間)”なんだ」と強調されていた、照れ屋のよう)、ベースのジョー・エイブラムス(黒人、ボワっとした幅広アフロにサングラス、“ゼブラ”とか言われていた)、そして中央にメイヤーが陣取る。手にはタンバリン。メイヤーの横にはキーボード・エフェクターも配置されていた。

 呼び込み役がメイヤー・ホーソーンを呼び込んでの幕開けは、(オケではあったが)ジェイムス・ブラウンの「スター・タイム」。ファンキーなオープニングから「ユア・イージー・ラヴィン・エイント・プリージン・ナッシン」へと続くと、一気にレトロチックな雰囲気のまま時間が流れていく。
 構成はアルバム『ストレンジ・アレンジメント』を中心に、カヴァーを盛り込んでいく形。アルバムが12曲なので(しかも曲尺が短め)、どうやって時間を埋めるのかと思っていたが、アナログのカップリング曲などを組み込んできた。そして、ギターのトファーがリード・ヴォーカルをとる新曲「ルースレス」も披露。

Mayer_hawthorne ムードあるブルー・アイド・ソウルというのが売りらしいが、単にスウィートな雰囲気を醸し出すだけではなく、MCをちょこちょこ挟みながら楽曲をパパパッと演奏していくスタイルは、6、70年代のそれを受け継いでいるのかも。楽曲だけではなく態度もその頃に心酔しているような感じだった。
 とはいえ、ヒップホップを出自にするといってもいいくらいの男ゆえ、ビートを刻むセンスはかなりのもの。バック・バンドのザ・カウンティーもそれを難なく演出している。圧倒的な音圧などはないが、安定感のある玄人好みの演奏といえるかもしれない。

 「ヒップホップは好きか?」「ああ、僕も好きなんだ。じゃ、これやろう」といってヒップホップを繰り出したのだが、1曲はN.E.R.Dの「フライ・オア・ダイ」だった。自分がナード(スラングでほぼ「オタク」という意味)だからN.E.R.D(「ナード」とも読める)の楽曲を選んだのか。
 それにしてもこの青年、かなり茶目っ気がある。演奏をストップさせ自身も静止した瞬間、観客から歓声も聞こえるものの、反応がそれほどないとみるや、「僕たちは初めての東京公演……。1stステージの方がもっと声が大きかったのになぁー」と煽ったり、「料理は美味しいかい? そりゃあ、よかった。って、残してるんだけど」と前列の客をいじってみたり。黒ぶちメガネに蝶ネクタイ。スーツにスニーカー……かなりの曲者なのかもしれない。いや、さまざまな面で器用なんだろう。カッコイイという印象はないけれど、観客を知らぬ間に惹きつける魅力を持っている。それはもちろん、サウンドやヴォーカルにおいてもだ。

 ハイライトは「ジャスト・エイント・ゴナ・ワーク・アウト」か。一通り歌った後で、「この曲のリミックス・ヴァージョンをやりたいと思うんだけど、何かリクエストあるかい?」と問いかけると、方々から声が。ドラムのクエンティンに指示して、最初はアップなドラムンベース風を。ただ、テンポが速すぎて「ノー、ノー、ノー」と演奏を止める。次はビックリした声で「カントリーかよ!?」と叫んだ後、カントリー風で少しだけ演奏。さらにヘヴィ・メタルにチャレンジするも却下。「レゲエ」と声がかかった後、ギターのトファーとベースのジョーに指示して演奏をはじめると「いい感じだ、これでいこう」ということで、レゲエ・ヴァージョンで最後まで。なかなか芸達者なところを見せてくれた。
 本編はノリのいい「イルズ」で幕。この時にはフロア席のほとんどがスタンディングで揺れていた。

 アンコールは3曲。ムーディなスロー曲「ホエン・アイ・セッド・グッバイ」で再度ノスタルジックな空気を呼び戻した後は、コミカルな声色を用いての「マナ・マナ」へ。そのままトリはアイズレー・ブラザーズの「ワーク・トゥ・ドゥ」をかまして、スウィート以上にファンキーな匂いを充満させてのステージ・アウトとなった。
 
Mayer_hawthorne02 音楽を知り尽くしているからこそ生まれる楽しみ方、そして奥深い知識の蓄積、そして幼少期から培ってきた音楽的センス。のび太風ともいえるような気を緩ませるルックスからは想像し難い、マルチな才能の一端を楽しむのにふさわしいステージだった。これでカジュアル席では4000円だから、コスト・パフォーマンスはかなりよかったといえるだろう(ホイットニーが最低でも1万ということを考えたら!)。

 ロビン・シック同様、このメイヤー・ホーソーンにおいても、白人による“ソウル”を先入観で判断してはもったいないということの証左となるアーティストだと思った。

◇◇◇

<SET LIST>
00 INTRODUCTION~STAR TIME(Original by James Brown)
01 YOUR EASY LOVIN' AIN'T PLEASIN' NOTHIN'
02 MAKE HER MINE
03 MAYBE SO, MAYBE NO
04 SHINY & NEW
05 I WISH IT WOULD RAIN
06 RUTHLESS(NEW/Topher Mohr Lead Vocal)
07 DON'T MESS WITH BILL(Original by The Marvelettes)
08 ONE TRACK MIND
09 FLY OR DIE(Original by N.E.R.D)
10 GREEN EYED LOVE
11 JUST A FRIEND(Oringal by Biz Markie)
12 JUST AIN'T GONNA WORK OUT
13 LOVE IS ALRIGHT
14 THE ILLS
≪ENCORE≫
15 WHEN I SAID GOODBYE
16 Mah Na Mah Na(Oringal by Piero Umiliani)
17 WORK TO DO(Oringal by Isley Brothers)
(Including phrase of“Mah Na Mah Na”)


<MEMBER>
Mayer Hawthorne(Vocals)
Quincy McCrary(Keyboards)
Topher Mohr(Guitar)
Joe Abrams(Bass)
Quentin Joseph(Drums)
  
◇◇◇

Mayer Hawthorne - Just Ain't Gonna Work Out 

この声は結構クセになると止まらないかもネ。


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コメント一覧

野球狂。
kaoRuさま、コメントありがとうございます。
http://jtt.blogzine.jp/jtt/
kaoRuさま、コメントありがとうございます。
ライヴ後すぐにやっつけで書いた文章なので、突っ込みどころ満載だとは思いますが、それでも喜んでいただけたのなら何よりです。こちらこそ、ありがとうございました。

それにしてもメイヤーを昨夏からチェックしているとは、さすがですね。彼は才能の塊みたいだと思うので、次作リリースを待ちたいところです。そして、再度ライヴを楽しみたいですね!
kaoRu
私が書きたくても書けない、素晴らしい文章で2ndの...
私が書きたくても書けない、素晴らしい文章で2ndのことをレポートしてくださって、ありがとうございます。勝手ながら嬉しいです。
Mayerを昨年夏に見たときは、アルバムも発売前で、おまけに雨の振るまっ昼間の野外で音もわるく、人も少なく、演出もなく…ライブ以外で見かけたときはタバコすってみんなでたまってる高校生みたいだったのですが、それでも何だか気になりました。Work to doもラストにやってました。そういえばその時は、the Countyが全員スーツで、今回ユニフォームのようにCountyが来ていたキリンマークのセーターを、Mayerだけが着ていました。半年でこんなになっちゃったんだーと驚きつつ、本当に楽しいライブでした。次はきっと自由席6000円では観れないと思われますが、また行きたいですね。長くなりすみません。
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