俺は鼻が利く 誰よりも鼻が利く
よく動物を例にとる人がいるが それに近いセンサーに人間の頭脳を乗せたといえば 分かりやすいだろう。
これは特殊能力だと思うのだが 短所長所両方がある。
鼻が利くということは 情報が入り過ぎて適わん事もあり 満員電車などは 苦手を通り越して 卒倒しそうになる。
長所は危険回避に働くことだ。
ここだけの話だが 人間は興奮状態に陥ると ある種の臭いを発する。それは殺気の時に多くでる。
満員電車が苦手なのは 単に加齢臭やコロンのせいばかりではなく あちこちで嗅ぐ殺気臭のせいでもある。
夏の朝の満員電車などは 臭くて怖くて適わん。
今日はラッシュの時間をずらし 二番電車(一番は案外人が多いのだ)に乗った。
ゆったりとした車内は酒の匂いをさせた朝帰りの若者がベンチシートで寝転がり この国の将来を憂うより安酒の匂いをさせた若者をみてちょっと同情した。
きっと帰りの駅のホームでマーライオンのように吐いてしまうだろう。
電車は朝の光の中 ゆったり走る。ターミナル駅で乗り換え 混みはじめた反対側の電車を尻目に 逆方向の空いている郊外行き電車に乗り換えた。
そこから三つ目の駅が俺の勤めている 三善調査所。
仕事は保険調査員。
別口で人探しや民事の調査が入ることもある。
電車を降りるとき 嫌なにおいがした。めったに嗅ぐ事がない 腐った肉の匂い 分かり易くいえば死臭だ。
しかもこれはどうやら人間のだ。
電車の中でゾンビもあるまいと思って きょろきょろしているうちに 後ろから誰かに押され そのとたん電車のエアドアが閉まった。
「危ないですよ」 肩を叩いたやつを見ると 同僚の小松だった。
さらなる楽しみが増えました!
発想自体が面白く、ラストもグッド!
次回楽しみにしています。わくわく。