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【名盤】影響を受けた音楽をうすーくディスクレビューする【紹介】Tom waits/Rain dogs

2020-12-01 16:44:20 | 名盤紹介

JUN SOUNDSYSTEMが影響を受けた私的名盤をうすーく語る。
主に若かりし頃に沢山聴いた音楽を紹介していきます。
Tom waits/Rain dogs トム・ウェイツ/レイン・ドッグス


トム・ウェイツという人は、過去、自分の中で「役者」というイメージが強くて、CDもリリースしてるらしいけど
「副業っていうか片手間でしょ?」程度にしか考えていなかったのが本当のところです。
                          
でも、ちょっとした店なら仕切り板にも名前がきっちりあるし、ここまでメジャーなら人気の理由を探るべく一度は
耳を通してみたい。でも、かつての幾多の俳優兼アーティストに魅力を感じなかった経験から、やっぱり訝しく思う
気持ちが先行してた矢先に、このアルバムをアマゾンの980円セール で見つけました。

他のサイトでもやたら喝采を受けてるし、「そんなにすごいの?」と、便乗というか興味本位で試聴したのが最後、
彼の音楽を今まで知らなかった事が悔しく思えて仕方なくなりました。 
                          
そもそも思い間違いをしていたのは自分の方で彼は元々生粋のシンガーソングライター。10年ほどのキャリアと
数枚のアルバムを発表した後、かの映画監督フランシス・コッポラから「ワン・フロム・ ザ・ハート」という作品の
スコア制作依頼を受けます。それを機に、映画音楽~俳優としての銀幕デビュー。

Tom Waits & Crystal Gayle - One From The Heart (1982) [FULL ALBUM]


映画界でも評価を受け、現在に至るというわけです。もともとの音楽というか初期の頃の作品はわりと時代性も
あってかフォーキーなものが多く、自分の理解力では、さほどピンとは来ないのですが、代表曲と呼ばれるものも多く、
若いフレッシュなトム・ウェイツの声と、スタンダードな演奏が味わえます。

Tom Waits - "Ol' '55"

                          
のちに激渋声に変わるところはブルース・スプリングスティーンと似てるところがありますね。
 
Bruce Springsteen - The River (The River Tour, Tempe 1980)


話は戻りまして、このアルバムは彼がいくつかの映画音楽制作を通過した後、85年に発表されたのですが、
これがまた物凄く面白い。意図的にチューニングを狂わせたかのようなギター、破れたようなドラム、ウッドベースの
ような重みのある低音、バンジョー、マリンバ、オルガン、トロンボーン。そしてシェイクスピアの演劇のような大雨のSE。

Tom Waits - Clap Hands music video


ロック、R&B、ブルース、ジャズ、はたまたポルカのような音楽までが混沌と一枚に凝縮されています。
聴いてると、幾度となくどこの国の音楽だか分からない不思議な瞬間に襲われるし、リズム1つ取ってみても、
言い表せない異様さがあって、音から浮ぶイメージを音像と言うのは言葉として間違っているのかもしれないけれど、
閉鎖して寂れた遊園地のテントの中で薄汚れたピエロの楽団が演奏してるような薄気味悪さ。あとは古いキャバレーと
深夜の裏路地を行ったり来たりするような。経験した事はないのだけれど、そんな退廃的なムードが漂っています。

Tom Waits - Rain Dogs


一言で「アヴァンギャルド」と片付けてしまうには、メロディがやたらと耳に残る。つまり、ポップなんですよね。
高度な実験精神と、ジャンルや国境をマッハのスピードで飛び越え独自の形にしたようなサウンド。
そういう意味では、まさに異形のポップアルバムと言えると思います。

それにしても、このアルバムに収録されている名曲と名高い「タイム」が、むしろ耳障りが良すぎて浮いてしまう
くらい他の曲の印象が濃い。「なぜこの中に?」 とも思いましたが、繰り返し聞いてるうちに非正常の中に正常が
入り込むことで、張り詰めた緊張感が解けるような気分になることに気が付きました。
全体として異様になり過ぎず、まだ現実との接点もあるように感じるのも、この曲のおかげと言えるのかもしれません。

Tom Waits - Time


さ、アレンジ面ばかりの話になりましたが、トム・ウェイツのボーカル。これも特筆に価するもので、時に怪しく、
時に盛りのついた獣のように野性的。年季と煙草とアルコールで焼けたであろうしゃがれた渋さがあるのに、クールで
知性すら感じます。

Big Black Mariah Tom Waits


この編曲の世界観に、この存在感のある特異な声。声はもっとも情報量の多い楽器だといいますが、
彼の歌声を聞くと、その話も納得がいきますし、やはり好きな声には本能的に反応するのでしょうかね。
俳優として評価されるだけあって表現力にも長け、鬼気迫るものがあります。

また重要な追記としては、ゲストとして、ローリング・ストーンズのキース・リチャードや、ロカビリーの大物、
またはジャズとパンクを融合させた俗称「フェイク・ジャズ」のラウンジ・リザー ズの中心メンバーが参加しています。

これだけ豪華なだけあって、彼らによって創作意欲が沸いたり、いいスパイスになったことも大きいのかもしれませんが、
それにしたって音からここまで心地良かれ逆に不快であれ、「映像」が浮んだ作品に出会ったことはありませんでした。
やはり映像と音楽のコラボレーションを経験し突き詰めた人間が作ったからこそ、一感からのみで、これだけのインパクトと
想像力を掻き立てる作品が出来上がったのでしょうね。

昔から流行の音楽なんて興味がなかったという彼だけあってレトロさもある、この異空間のような本盤を気に入るか
どうかも、その人次第。ぜひ聴いてみてください。 

最後に結びとして、異性より同性のアーティストに惹かれるというのは、音楽を聞く全ての人に言える事だと、
個人的には思ってるのですが、彼の音楽を 好んで聴くのも、ここまで長文になってしまったのも、多かれ少なかれ
自分が同性として「こうなりたい」という 「憧れ」を持っているからなのかもしれません。


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