会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

DX時代の裁判/「電子証拠」に偽造えん罪リスク(FACTAより)

DX時代の裁判/「電子証拠」に偽造えん罪リスク

EYストラテジー・アンド・コンサルティングのパートナー(執行役員)が、古巣のデロイトトーマツコンサルティングから訴えられた裁判を取り上げた記事。

「社内規程に触れる社員の引き抜き行為」があったとして、第1審ではEYのパートナー側が賠償金5千万円の支払を命じられました。

しかし、第2審では23年2月に和解が成立したそうです(和解内容は非公開)。

争点の1つは、社内規程の中の損害賠償条項が捏造だったのかどうかという点だったそうです。

「裁判で争点の一つとなったのは、「執行役員規程・パートナー規程」内の引き抜きによる損害賠償条項の存在の有無だった。デロイト側は同条項があったとして國分氏の引き抜き行為への賠償を求めたのに対し、國分氏側は、同条項は存在しておらず、捏造だと主張した。

規程は國分氏の在籍当時から存在していたというのがデロイト側の主張で、作成日時などを示すWordファイルのプロパティ情報を証拠として提出した。これに対して國分氏側はそのファイルがサーバー上に保管されていたものではなく、捏造が容易なパソコン端末のものであると主張。それを裏付けるためにWordファイルのプロパティ情報が簡単に変えられることを裏付けるコーディング方法(プログラム)まで示したレポートも提出した。」

しかし、捏造だという主張は第1審では認められず、デロイト側のほぼ完全勝訴となりました。しかし、第2審で雲行きが変わったそうです。

「國分氏の弁護人である喜田村洋一弁護士が、ある「意見書」を提出したのだ。喜田村氏は刑事事件では「無罪請負人」的な存在で知られる。

その「意見書」を作成したのは、憲法学者・弁護士であり、中央大学法科大学院教授の安念潤司氏。Wordファイルのプロパティ情報、さらには電磁的記録一般の改変が容易である以上、裁判所としては、その証明力に一定の疑いを抱いて審理に臨むことが求められるとしたうえで、國分氏が退社した時点での執行役員規程・パートナー規程が記録されたファイルに関するサーバー上のアクセス、修正、置き換えなどの記録を示すログ情報と、オリジナルファイルが作成された時点を示す何らかの証拠を追加提出すべきと求めた。

日本弁護士連合会の「『民事訴訟法(IT化関係)等の改正に関する中間試案』に対する意見書」(21年)でも、相手方が求めた際には、原本と証拠の同一性を検証するための関連情報(データ更新ごとに変わるハッシュ値や原文書作成時に作成者が操作したハードディスクなどが自動記録したログなど)を提出することを提言している。

デロイト側は、この意見書が求めた追加の証拠を提出しなかったという。」

パソコンにしか記録がないのであれば、弁護側が主張するような証拠は出せないのでしょう。それにしても、先端的なコンサル会社であるデロイトが、重要書類をサーバーで管理していなかったというのは、すごく不自然な感じがします。

記事の後半では、電子証拠の利用が冤罪を生む可能性を指摘しています。

「「電子証拠」とは、Wordなどによって作成された文書やメールのやり取り、情報システムへのアクセスのログ(履歴)などのことだ。たとえば、情報システムへのアクセス制限はどの企業も導入しており、IT管理者など承認されている者しかアクセスできない。しかしこうした管理手法では、正規の手続きでアクセスした者がデータを改ざんすることも可能になる。

たとえば、企業がリストラしたい人材を追い出そうと思ったら、その人物が不正アクセスしたログを偽造し、懲戒処分にすることをやろうと思えばできるのだ。陥れたい人物、不都合な人物を冤罪の痴漢の容疑者に仕立てるようなドラマ上での話が、「電子証拠」の偽造によって、いとも簡単に行われる状況にあると言えるのではないか。」

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