ソフトバンクグループの株価が低迷しているのは、ある報道のためだという記事。
「日経平均株価が上昇した18日の東京株式市場で、値動きの弱さがひときわ目立つ主力株があった。2%安だったソフトバンクグループ株だ。この日は株価指数先物への買い戻しも多かったため、日経平均への影響が大きい同銘柄の下げは余計に市場の話題をさらった。」
「ほぼ全面高の中でソフトバンク株が安く推移したのは、ある理由が背景にある。国際会計基準(IFRS)を策定する国際会計基準審議会(IASB)がM&A(合併・買収)費用の計上ルールの見直しに着手したと報じられたことだ。
具体的には買収先の帳簿価格よりも高く支払った金額(のれん)について日本基準のように費用計上を義務づけることを検討するという。IFRS採用のソフトバンクが抱えるのれんは4・3兆円と日本企業で最大。仮に20年で定額償却することになれば、ソフトバンクの営業利益を毎年2000億円強押し下げる。
のれんの費用計上はソフトバンクの株式価値を押し下げるのだろうか。確かに会計上の1株利益が減ってしまいPER(株価収益率)が上がってしまう。
だが「株価は企業の将来キャッシュフローの現在価値」というファイナンス理論の考え方に立てばのれんの償却は株主価値に影響しない。のれんの償却は会計上の費用であり、現金の流出を伴わないからだ。「財務の健全性からみればのれんを早期に費用計上するのが望ましい」(SMBC日興証券の大滝晃栄氏)のは確かだが、それと株価の評価はまた別の話。買収時にすでに現金は支払われており、会計処理がどうであれ買収先企業の業績が株価に織り込まれていくものだ。」
「報じられた」とひとごとのようにいっていますが、報じたのは、大手マスコミでは日経だけです。それに、のれん償却再導入という報道の中身もややあやしいということは、当サイトでも取り上げました。マッチポンプという(やや古い?)言い方がありますが、まさにそれです。
ファイナンス理論のところは、そのとおりなのでしょうが、そうだとすると、ASBJなどの主張とは逆に、やはりのれんの償却は不要という結論になりそうです。いつまでも得体の知れない大きな金額が資産としてのこるのは気味が悪い、償却して毎年少しずつでも減らしたいという感覚はわかりますが...。
記事後半では、営業利益が大幅に改善されたIFRS採用企業2社(富士通とコニカミノルタ)を取り上げています。両社の株価が上昇したのは、IFRSを巡る市場の錯覚だとほのめかしています。
会計士協会などが、IASBから理事2人を招いてセミナーをやるそうです。「財務報告におけるコミュニケーションの改善」がメインテーマのようですが、プロジェクトの最新動向などについてもふれるようですから、のれんの会計処理の話も出るのでしょう。
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日本公認会計士協会・会計教育研修機構共催 IFRSセミナー『IFRSを巡る最新動向~基準の新たな局面』(2018年11月30日開催)の申込開始(日本公認会計士協会)
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