会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ(ICDAホールディングス)

特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ(PDFファイル)

ICDAホールディングス(東証スタンダード)のプレスリリース(2024年3月13日)。

元役員による中古車買い取りなどをめぐる不正行為を調べていた特別調査委員会の調査報告書を受領したとのことです。(当初発表時の当サイト記事

調査報告書(20ページ強)も添付されています。

過年度の会計数値に影響のある事項も判明しましたが、プレスリリースによると、重要性が乏しいとして、過年度の有価証券報告書の訂正はしないそうです。ただし、内部統制報告書の訂正は予定しているとのことです。

調査報告書では、「X ⽒」( ICDA 取締役、三重北 常務取締役執⾏役員、オートモール常務取締役執⾏役員)が調査対象となった不正⾏為における⾸謀者であるとされています。(三重北:連結子会社であるホンダ四輪販売三重北)

しかし、同氏は、税務調査が実施されていた2023 年 11 ⽉ 11 ⽇に死亡し、ヒアリング調査はできていません。

不正は、中古車買い取り価格の操作による不正と、修繕業者からのキックバックの2種類があったようですが、前者が主なものです。以下でも前者に関わる部分を中心に引用します。

X氏には、Y氏とZ氏という共謀者がいました。2人とも三重北の幹部(中古車事業部仕入課長、店長)です(2人が協力させられた経緯も書かれていますが、引用は省略)。そのほか、外部の協力者も関わっています。

具体的な手口は...

「X ⽒⾃らが複数の社外協⼒者に名義貸しを依頼し、もしくは Y ⽒に複数の社外協⼒者への名義貸しを依頼するように指⽰した上で、当該協⼒者を買取⾞両の本来の契約者であると⾒せかけるため、⾞両買取契約書の⾞両情報(⾞種・年式・⾛⾏距離・グレード等)欄に虚偽の内容を記載し、市場価格より⾼額な買取価格での契約を成⽴させていた。⼀⽅で買取⾞両の本来の所有者へは、市場価格に基づく正当な査定価格を提⽰していた。その上で⾞両買取資⾦の⽀払時には、協⼒者へは⾼額な買取価格を⽀払うことで過⼤な資⾦を会社から流出させた⼀⽅、本来の⾞両所有者へは正当な査定⾦額を⽀払っていた。X ⽒は、協⼒者から買取査定価格の上乗せ額についてキャッシュバックを受けることで、当該⾦額を着服していた。

Y ⽒は中古⾞事業部仕⼊課課⻑であり拠店の所属ではないことから、⾞両の買取に頻繁に関与する⽴場にない。しかし X ⽒は電話で Y ⽒を X ⽒の⾃宅ないしは喫茶店等に呼び出し、⼝頭で不正⾏為を指⽰していた。具体的には、X ⽒から「●●の⾞両を買い取ることになったから⾞両買取契約書を書け」というように指⽰をされ、その場で本来の⾞両情報ではない⾞両買取契約書を作成させられたとのことである。また、第3 1(3)「中古⾞店舗が中古⾞を買い取る⼿続」に記載のとおり、通常、⾞両の買取は各店舗で実施され、⾞両買取契約書も拠店で作成・保管されることが本来の流れであるものの、中古⾞事業部⾃体も⼀つの事業拠点であり、オークション等を中⼼にある程度は中古⾞の販売や買取も実施している。そのため、⾞両買取契約書が中古⾞事業部で作成されていたことがおかしいという積極的な疑念が⽣じる状況にはなかったとのことである。さらに本件不正⾏為においては、不正に取得した⾞両の買取から販売までの期間が短くなるよう操作されていたことから、取得⾞両が中古⾞事業部内に⻑期間留まることがなかったことも、中古⾞事業部において不正が発覚しなかった要因の⼀つであると考えられる。」

「X ⽒が Z ⽒に加担させていた不正のスキームは、基本的には X ⽒が Y ⽒に指⽰していたものと同様である。ただ、Z ⽒の案件では、⾞両買取契約書における市場価格からの上乗せ額が 500 千円ないしは 1,000 千円と、⽐較的切りの良い数字となっていることが特徴である。なお Y ⽒とは異なり、Z ⽒は E 店(中古⾞店舗)の店⻑であったことから、虚偽の内容の⾞両買取契約書が作成されることに違和感を抱く者は、ほぼいなかったと考えられる。」

ということで、実際に中古車仕入れの実務を行っていた部署の責任者を巻き込んで不正を行っていたようです。

中古車仕入れ代金支払時にもチェックがかかることになっていましたが「中古⾞事業部部⻑であった X ⽒が⽀払送⾦依頼書への最終チェックを⾏っていたことから、不正な買取⾞両への⽀払については問題視されることなく、看過される状況となってしまっていた」。

その他の隠蔽⼯作は...

「ア 2016 年 4 ⽉から 2019 年 3 ⽉まで

中古⾞販売業者間の取引において、1台1台それぞれに値段を付して販売するのではなく、何台かをまとめて●●円として販売するという商慣習(当該商慣習について ICDAグループでは「⼭売り」と呼んでいることから、本調査報告書でも、以下「⼭売り」という。)があることを利⽤し、不正に⾼く取得した⾞両について、通常のルートで仕⼊れた⾞両と併せてまとめて特定の業者へ販売することで、不正のルートで仕⼊れた⾞両から⼤きな⾚字が⽣じていないように⾒せかけていた

ただしこの時期においては、期末に商品在庫として取得⾞両が残ることを懸念し、多少の⾚字が出たとしても、オークション等で強引に販売を⾏っている事例がみられる。

イ 2019 年 4 ⽉以降

この時期においては、X ⽒が不正取得⾞両の販売から⾚字が多く出ることを懸念し、取得した⾞両を⼀旦⾃社の固定資産(代⾞や試乗⾞として使⽤)に振り替え減価償却を通じて⾞両の帳簿価額を圧縮することにより、⾞両販売時に⾚字が出ないように調整をおこなっている事例がほとんどを占めている。 」

不正の規模は...

(調査報告書より)

この不正発覚を受けて、会社がこれから行おうとしている会計処理についても、ふれています。

「当委員会は ICDA から、本件不正⾏為に関する事実関係を踏まえて監査法⼈と協議した結果、以下の会計処理を⾏う予定であるとの報告を受けた。

ⅰ)本件不正⾏為のために、ICDA グループが X ⽒に過⼤に⽀払った⾦額については、2024年3⽉期第3四半期決算において、売上原価、修繕費及び減価償却費から特別損失に振り替えるとともに、X ⽒に対する損害賠償請求権(資産)として取り扱う⼀⽅で、X⽒に資⼒がなく、X ⽒の遺族も遺産相続しない⽅針であることから、回収可能性に鑑みてその全額を貸倒損失として損失計上する。

ⅱ)損害賠償請求権に係る貸倒処理に係る損失額は、税務上その全額が損⾦として認められず、当該損失額に対し発⽣する法⼈税及び延滞税等の附帯税について修正申告が求められる。また、売上原価としての計上ができないと認定された部分については、消費税の計算上、仕⼊税額控除の対象外となることから、消費税についても修正申告が求められる。
そのため、追加の税⾦費⽤が発⽣することとなる。2024 年3⽉期については、本件不正⾏為①に関して市場価格よりも⾼い⾦額で取得した⾞両について、市場価格よりも⾼い⾦額の部分(X ⽒による着服部分)を X ⽒に対する損害賠償請求権(資産)として取り扱うものの、ⅰ)と同様の理由からその全額を貸倒損失として損失計上する。これらの追加費⽤(損失)の計上額を含めると、2024 年3⽉期第3四半期決算における影響額 は、当期純利益において△177,082 千円となる。」

調査委員会はこの会計処理を適切であると判断したそうです。

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