元・神戸大学教授(現・甲南大学)が、オリンパス事件などを材料に企業統治を論じたコラムです。
「日本の会社統治のあり方に反省を迫る2つの不祥事が相次いで起こった。ひとつはオリンパスの損失隠し。もうひとつは大王製紙の会長による高額借入金問題。」
「これまで法定主義によってさまざまな失敗が繰り返されてきた。その典型は、内部統制の法定化である。内部統制は、企業に大きな資金負担をかけただけではない。さまざまな副作用が生み出された。オリンパス事件も、その副作用のひとつではないかと、私は推測している。
内部統制制度が導入されてから、監査法人による監査は間接的な部分の比重が高まった。支出が適切に決済され、それが適切に記帳されているかどうかのチェックは企業内部の人々が統制し、監査法人は内部の統制制度が適切に運用されているかどうかをチェックするという間接方式に変わった。
伝統的な監査の基本は、支出対象となった資産が実際に存在しているかどうかを直接に証拠と照合し、企業の目的にそった適切なものであるかどうかを監査人がチェックすることであったが、内部統制制度の導入に伴って、監査法人による直接的な照合が軽くなったのではないかという声が現場から聞こえてくるようになった。
内部統制制度のモデルとなった米国の法律はエンロン事件をきっかけに制定されたものだが、皮肉なことにオリンパスは、SPC(特別目的会社)というエンロンが用いたのと同じ隠蔽方法を使っている。
監査法人が投資金融資産がどのようなものかを、直接にその契約書と照合しておけば、オリンパスの不正はもっと早く見抜けたはずである。
内部統制制度という効果のない方法を導入する代わりに、SPCの実査をきっちりと行うようにルールを変えておくべきだった。この失敗を契機に内部統制制度の法律を廃止すべきである。」
結論はともかく、オリンパス事件が内部統制法定化の副作用という推測は腑に落ちません。そもそも、オリンパスの飛ばしが始まったのは、1990年代だといわれていますから、日本で内部統制の制度化が始まるより、ずっと前の話です。
また、SPCやファンドに関しては、以前は、形式的に保有比率を下げれば、ほとんど無条件に連結から外すことができたわけですから、そもそも監査手続の対象外になっていました。それが厳しくなったのは、比較的最近の話です。昔のやり方が有効であったのなら、内部統制制度の法定化よりはるか以前に起きた山一証券の飛ばしによる粉飾も監査人が発見できたはずです。
同じ先生の別のコラムですが、こちらはなかなか面白いと思いました。監査法人にも当てはまるかもしれません。
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