期待の準高速2階建て試作車が「試験不合格」
大手鉄道車両メーカーの日本車輌製造が米国で窮地に陥っているという記事。
「1月27日に発表された2016年度第3四半期決算。短信の「継続企業の前提に関する重要事象等」という項目に、それまで見られなかったコメントが載った。
「米国向け大型鉄道車両案件については、(中略)設計の見直しに対応する中で技術的な課題に直面し、当該案件を予定通り遂行することが困難になった旨を客先に申し入れ、今後の案件遂行の方向性について現在協議を行なっております」
「設計見直し」「案件遂行が困難」といった言葉の羅列から、何かよからぬ事態が発生していることがうかがえる。いったい何が起きているのか。
日本車両の2014年度決算は、米国の大型案件において現地作業員の技術習得の遅れから原価高となり最終赤字に転落した。2015年度はプロトタイプ車両が強度テストをクリアできず、追加設計費用や製造工程の見直し費用などが発生した...。それから1年以上経った現在、事態は改善に向かうどころか、さらに悪化している。」
発注者は、カリフォルニア、イリノイ、ミシガン、ミズーリの米国4州で、連邦政府から補助金(車両調達に必要な資金のうち75%)をもらうことになっているそうです。しかし、設計変更による車両納入遅れで、返却する必要が出てくる可能性があるそうです。
「現地報道によれば、2017年9月までに車両が納入されないと米国4州は補助金を連邦政府に返却する必要があるという。この点についても日本車両に問い合わせたが「当方の契約は2016~2018年に車両を納入するというもの。先方の資金調達の状況は承知していない」とのことだった。とはいえ、車両設計が1年半近く遅れている状況で、当局の指定する2018年までに車両を納入できるかどうか。
もし米国4州が補助金を返却した場合、その後に考えられるのは、①米国4州が資金を負担して案件を継続する、②日本車両が受注金額を下げて案件を継続する、③契約を白紙に戻して仕切り直し、の3つだ。設計見直しの原因が日本車両側にあるなら、①という選択はありえない。おそらく②と③のどちらかで現在協議を進めているのだろう。②の場合は日本車両の損失額が増えることは間違いないし、契約が白紙にという事態になれば、日本車両に多額の違約金を科される可能性は否定できない。現在想定されている損失引当金は当初契約の枠組みを前提としたものだ。②、③いずれにせよ、枠組みが変わることで損失額はさらに膨らむ可能性がある。」
四半期報告書(第188期第3四半期)(PDFファイル)
四半期レビュー報告書(監査人はトーマツ)には、この件に関して強調事項がついています。
「四半期連結貸借対照表関係の受注損失引当金に関する記載の通り、会社は米国向け大型鉄道車両案件について予定通り遂行することが困難になった旨を客先に申し入れている。なお、今後の案件遂行の方向性について協議を行っているが、協議の内容次第では今後損失額が変動する可能性がある。 」(強調事項より一部抜粋)
受注損失引当金の注記では...
「当社グループが受注している米国向け大型鉄道車両案件については、33,752百万円の受注額に対し、当第3四半期連結会計期間末において20,407百万円の損失発生が合理的に見積もられるため、このうち10,734百万円を当該案件に係るたな卸資産と相殺し、9,673百万円を受注損失引当金に計上しております。
なお、(以下省略)」
棚卸資産の評価減では足りずに、引き当てまでしているようです。
計上済みのものだけでも、受注額の6割もの損失ということになります。(東芝の米国原子力事業のミニ版のような印象です。)
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