旧道路公団が分割してできた高速道路会社のうち、西日本高速道路と中日本高速道路が2008年9月中間決算で「道路賃借料」を減額して処理していたという記事。他の道路会社はそうした費用の減額処理はしていないそうです。
「道路各社は国土交通省の交通量予測に基づき、年ごとの見込みの収入と道路賃借料がそれぞれ、期限の2051年まで決められている。各社はこの返済計画に基づき、「日本高速道路保有・債務返済機構」に賃借料を月割りで支払う。
機構と各社との協定によると、3月の本決算で、実際の収入が当初見込みの1%を超えて増減した場合、賃借料も連動して増減。収入が減った場合は機構が道路会社に賃借料の減額分を払い戻す。
西日本と中日本は協定に反する形で、今年4-9月の賃借料の減額幅を独自に集計し、中間決算でそれぞれ賃借料を減額した。減額幅は西日本が80億円、中日本が35億円で、その分、中間決算の収益が増え、西日本は純利益が61億円の黒字に転じた。」
この記事ではいかにも不正な会計処理をやったように書いていますが、実際の収入に応じて賃借料を調整する正式の取り決めがあるのなら、この2社の処理も間違っていないように思います。もちろん、ある期は調整前の名目上の金額を計上し、別の期は調整した後の金額を計上するということだと、継続性の原則に違反し利益操作といえますが、そうでなければ、中間期で実質的に負担する金額を計上するわけですから、むしろより正しい処理といえます。
ただし、道路会社で処理がバラバラであるという点は問題です。道路会社の株主は国です。つまり国民全体の財産です。したがって、国(所管している国土交通省)は、国民が各道路会社の経営成績を比較できるように会計方針を統一するよう求める必要があります。どの会社も同じような事業をやっているわけですから、異なる会計方針を採用する理由はありません。
記事によれば、国土交通省は、「「会計士の考え方で対応が2通りに分かれたと聞いている。事前に決算の報告は受けても、具体的に指導をすることはない」としている」そうですが、国民から預かっている財産を管理しているという意識がないまったく無責任な態度といわざるを得ません。もちろんあまり細かい点にまで介入すべきだとは思いませんが、この問題は純利益の額と比較しても重要性があります。
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