サステナビリティ保証の国際基準、当面は監査法人のみが準拠可能か…?
国際監査・保証基準審議会(IAASB)から8月に公表された国際サステナビリティ保証基準 5000の公開草案は、「全て」のサステナビリティ保証業務提供者が適用可能(‘profession agnostic’)となっているが、本当に非監査法人系の検証機関が実施できるのかを論じた記事。
「‘ISSA 5000’の公開草案は、それまでの議論の経過で明らかにされていたとおり、「全て」のサステナビリティ保証業務提供者が適用可能(‘profession agnostic’)な基準である旨謳っている。
もっとも、公開草案の内容を見る限り、少なくとも現時点の印象としては、非監査法人系の検証機関が‘ISSA 5000’に準拠することは、極めて難しそうである。
というのも、公開草案は、サステナビリティ保証業務提供者に対し、国際会計士倫理基準審議会(IESBA)(※4)の倫理規則(‘IESBA Code’)や、監査事務所における品質管理に焦点を当てたIAASBの品質管理基準(‘ISQM 1’)、又はこれらと同等の要求水準を有する他の基準等に従うことを求めているためである。
‘IESBA Code’や‘ISQM 1’は監査法人を念頭に置いたものであることから、非監査法人系の検証機関にあっては、前記の「これらと同等の要求水準を有する他の基準等」に従うという選択肢を探ることになる。」
「当面は、監査法人のみが‘ISSA 5000’に準拠することが可能になるのではないかと推測される。」
「当の監査法人にあっても、サステナビリティ情報の専門家が不足しているという声もあることから、外部、すなわち非監査法人系の検証機関から専門人材を招聘するという対応は不可欠になろう。」
監査法人でなくても、監査法人のグループ会社(ネットワークファーム)であれば、監査事務所に適用される倫理規則や品質管理基準にはなじみがあるでしょうから、条件をクリアすることは比較的容易でしょう。
完全な非監査法人系の場合は、少し難しいかもしれませんが、倫理規則の中心は独立性であり、機械的なチェックで済む部分も大きいでしょう。独立性には同時提供禁止業務の問題もありますが、サステナ情報の保証業務に関して、どこまでが同時提供禁止かというのは、これから明確にしていくのでしょうから、スタートラインは同じともいえます。
もちろん、監査事務所用の規則や基準をそのまま、会計士協会の会員でない組織に適用するわけにはいかないでしょうが、会計士・監査法人向けのルールを一部修正することで新しいルールを作るのは可能なのでは。会計士協会が単独で、あるいは業界団体(ある?)と協力して、やればよいと思います。
保証業務の中身については、監査法人だからといって、すごく有利ということはないでしょう。「保証」の考え方にはなじみがあるでしょうが、保証の対象については、特に専門知識があるわけではないでしょう。
個人的な意見としては、そもそも、サステナ業務の保証は、任意にして、サステナ情報の重要性が高い企業が自ら保証の要否を判断し、依頼する方がよいでしょう。常識的に考えて、気候変動への、あるいは気候変動からの影響が大きい会社なのに保証をつけないとなれば、投資家の評価は下がるでしょうから、任意でもニーズのある会社はやるでしょう。
一気に強制適用になれば、知識・経験の乏しい人員まで動員せざるを得ず、保証業務の品質は低くなってしまいます。