会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

新型コロナウイルス感染症とIFRS基準での財務報告—その先にあるもの(監査法人トーマツより)

新型コロナウイルス感染症とIFRS基準での財務報告—その先にあるもの

「新型コロナウイルス感染症とIFRS基準での財務報告」という、今後予想される課題を解説した記事。原文をみると、ハイレベルの役員や監査委員会向けということで、今後の財務報告において課題となりそうなポイントを戦略的な観点からまとめたもののようです(といっても結構専門的ですが)。

IFRS適用会社向けですが、日本基準の会社に共通する論点もありそうです。

大項目として、「予測」、「契約上の取決めの変更」、「金融資産の回収可能性」、「リストラクチャリング、処分コスト及び政府支援」、「表示及び開示」、「代替的業績指標」を取り上げています。

予測」については...

「COVID-19のパンデミックの前例のない性質に関連する不確実性が続いているため、(のれんを含む)非金融資産の回収可能性を評価し、繰延税金資産(DTA)の回収可能性を判断し、継続企業として存続する能力を評価するための仮定及び見積りを策定することに関連する課題に直面し続ける可能性が高い。

COVID-19の効果的な予測には、必要な頻度での再予測が含まれる。頻度は、予測モデルにとって重要とみなされる新しい情報が入手可能となる時期又は新しいドライバーが識別される時期に左右される可能性が高い。V字型の回復の可能性が薄れるにつれて、多くのエコノミストは、U字型又はW字型の回復の可能性がより高いと考えている。多くの場合、企業は予測プロセスの一部として異なるシナリオを使用する。」

具体的には、非金融資産の減損(のれんを含む)、繰延税金資産、継続企業について、簡単な説明をしています。

日本基準における新型コロナの影響の解説では、あまり取り上げられていないと思われますが「契約上の取決めの変更」について...

「多くの企業は、COVID-19の影響が長期化するという現実に対処する一環として、契約を変更している。COVID-19の流行のタイミング及び関連する政府が義務付けた又は自発的なシャットダウンを考慮すれば、今後の財務諸表は、これらの変更の影響を反映する最初のものである可能性がある。」

具体的には、「リース」、「収益契約」、「ローンの支払条件又は債務リストラクチャリング」を説明しています。

金融資産の回収可能性」については、「予想信用損失引当金」と「営業債権と収益認識]を取り上げています。後者は、営業債権の回収可能性に懸念があると、今後の収益認識ができなくなる場合があるという問題のようです。

リストラクチャリング、処分コスト及び政府支援」では、「従業員の退職」、「リストラクチャリング及び資産処分計画」、「政府援助及び保険の補償」を取り上げています。「政府援助」に関しては「企業は、(減損分析及び継続企業の評価の目的を含め)このような政府援助を認識する適切な時期を決定し、財務諸表の注記に開示する情報を検討する必要がある。」とのことです。(日本の雇用調整助成金などは、利益計上時期など、どういう会計処理になるのでしょうか。)

表示及び開示」では、「判断及び見積り」と「純損益の表示」を取り上げています。前者は、「判断、仮定及び感応度の見積りの完全な開示の必要性が、通常よりも大幅に重要」とのことで、後者では「企業の業績に対するCOVID-19の影響の識別は、恣意的な仮定の使用なしには困難であるかもしれない」という問題意識があるようです。「withコロナ」が常態化すれば、なんでもかんでも新柄コロナのせいにするわけにはいかなくなるのでしょう。

最後の「代替的業績指標」では、IOSCOの声明文にふれています。

原文は、6月に公開されたもののようです。(「原文については英語版ニュースレターをご参照下さい」とあったのですが、リンクが貼っておらず、探すのがたいへんでした。)

IFRS in Focus — COVID-19 and financial reporting under IFRS Standards(デロイト)

In the light of the ongoing COVID-19 pandemic, financial reporting for the first half of 2020 has been extremely challenging. This IFRS in Focus is addressed to high level executives and audit committees and takes a strategic look at what are likely to be the most common hot topics for the upcoming financial reports, whether annual or interim. The publication explains as to why those topics are trending and what might be some of the related tension points. It is an overview of critical accounting issues that are addressed in more detail in our IFRS in Focus on accounting considerations related to the coronavirus 2019 disease.

日本の新型コロナの影響に関する議論は、会計上の見積りに集中している感じもしますが、ほかにもいろいろな論点がありそうです。
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「企業会計」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事