金融庁は、「記述情報の開示に関する原則」(案)を、2018年12月21日に公表しました。
「財務情報以外の開示情報である、いわゆる「記述情報」について、望ましい開示の考え方、開示の内容、開示に対する取り組み方をまとめたもの」です。
「経営方針・経営戦略等、経営成績等の分析、リスク情報を中心に、有価証券報告書における開示の考え方等を整理することを目的としている。」
総論と各論に分かれています。
総論では、以下の原則とともに、それらの「考え方」や「望ましい開示に向けた取組み」が説明されています。
1. 企業の情報開示における記述情報の役割
「1-1. 記述情報は、財務情報を補完し、投資家による適切な投資判断を可能とする。また、記述情報が開示されることにより、投資家と企業との建設的な対話が促進され、企業の経営の質を高めることができる。このため、記述情報の開示は、企業が持続的に企業価値を向上させる観点からも重要である。
企業は、記述情報及びその開示のこのような機能を踏まえ、充実した開示をすることが期待される。 」
2. 記述情報の開示に共通する事項
【取締役会や経営会議の議論の適切な反映】
「2-1. 記述情報は、投資家が経営の目線で企業を理解することが可能となるように、取締役会や経営会議における議論を反映することが求められる。」
【重要な情報の開示】
「2-2. 記述情報の開示については、各企業において、重要性(マテリアリティ)という評価軸を持つことが求められる。」
【セグメントごとの情報の開示】
「2-3. 記述情報は、投資家に対して企業全体を経営の目線で理解し得る情報を提供するために、適切な区分で開示することが求められる。 」
【分かりやすい開示】
「2-4. 記述情報の開示に当たっては、その意味内容を容易に、より深く理解することができるよう、分かりやすく記載することが期待される。 」
各論では、以下の開示項目ごとに、「法令上記載が求められている事項」、「考え方」、「望ましい開示に向けた取組み」が説明されています。参考として、米国 SEC の MD&A に関するガイダンスが紹介されている項目もあります。
1. 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
・経営方針・経営戦略等
・優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
・経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
2. 事業等のリスク
3. 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(Management Discussion and Analysis、いわゆる MD&A)
・MD&A に共通する事項
・キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資本の流動性に係る情報
・重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
「資本コスト」を独立項目としてあげているなど、本文の並びとはだいぶ違いますが、「ポイント」を全1ページにまとめた資料もついています。
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残念ながら(?)、今話題の役員報酬については、特にガイダンスは示されていません(「記述情報」部分もあるはずですが)。
冒頭で、「投資家による適切な投資判断を可能とし、投資家と企業との深度ある建設的な対話につながる項目」を中心に整理したとあるので、金融庁からすれば、役員報酬は、あまり重要ではないのかもしれません。それとも、非常に重要なので、別のガイダンスが出るのでしょうか。