国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)による「アジェンダの優先度に関する協議」へのコメントレター発出について
金融庁は、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)による情報要請(Request for Information)「アジェンダの優先度に関する協議」に関して、コメントレターを、2023年8月30日に発出しました。鈴木俊一金融担当大臣名のカバー・レターが添えられています。
カバーレターは、いくつか項目を列挙したうえで、特に「人的資本に関する開示」にふれています。
「次期作業計画に関連し、G7 広島サミット、及び、G7 新潟 財務大臣・中央銀行総裁会議のコミュニケにおいて、作業計画の市中協議に沿った、生物多様性及び人的資本の開示に関する将来の作業に期待する旨が記載された。また、G7 新
潟 財務大臣・中央銀行総裁会議のコミュニケには、これらの開示が、生物多様性、従業員への投資並びに多様性、公平性及び包摂性による企業の価値創造を投資家が評価する能力を強化しうる点が記載された。
人的資本に関する開示は、投資家が企業の価値創造を評価する上で重要な情報を提供し、資本市場の機能の十全な発揮に貢献するものであると考えている。」(仮訳より)
コメントレター(仮訳なし)でも、「人的資本に関する開示」を優先すべきといっているようです。
日本のサステナビリティ基準委員会もコメントを提出しています。
2023 年情報要請(ISSB/RFI/2023/1) 「アジェンダの優先度に関する協議」に対するコメント(2023年8月4日)(PDFファイル)
公表済みの2本の基準の導入支援を優先すべき(5項)としつつも、新しいプロジェクトとしては、人的資本を優先すべきという意見です。
ISSBが情報要請の中で挙げている4つのプロジェクトのうち、「人権」は、政治・外交とも絡んでいて、難しい面があるのかもしれません。
日本も、外国人労働者受入問題(技能実習生の問題など)、難民問題、人質司法、ジャニーズ問題など、さまざまな人権問題(企業とは関係の薄いものもありますが)を抱えており、単なる開示の問題とはいえません。
最近のビジネスと人権に関する記事。
米16州、証券取引委に中国シーインの監査要求 強制労働排除巡り(ロイター)
「米国16州の共和党系司法長官は米証券取引委員会(SEC)に書簡を送り、中国のインターネット通販大手「SHEIN(シーイン)」が新規株式公開(IPO)する可能性を見据え、サプライチェーン(供給網)で強制労働が行われていないか監査を求めた。」
「書簡はSECに対し、シーインや米国で上場している外国企業が、強制労働による製品の輸入を禁止する米国の法律を順守しているかを独立監査で確認するよう求めた。」
米国内の政治と、米中の外交問題が絡んでいるようです。