米国の会計基準設定主体であるFASBが、デジタル通貨の会計をプロジェクトに加えるかどうかを検討するという記事。先週水曜日の会議で検討されたようです。
A Financial Accounting Standards Board meeting on Wednesday will decide whether the board should add a project on accounting for digital currencies to its technical agenda this year and, if so, what the project’s scope should be.
2017年以降、そのようなプロジェクトを追加するよう求める要請が3件あったそうです。上場企業の決算書においてビットコインのようなデジタル通貨が目立つようになっており、会計基準のもとで暗号通貨をどのように扱うかを検討すべきという声はますます強まっています。
Since 2017, FASB has received three agenda requests to add such a project. Calls for examining how cryptocurrencies are treated under generally accepted accounting principles (GAAP) have accelerated as digital currencies like bitcoin show up in more public companies’ accounts.
デジタル通貨は、現行の会計指針において、キャッシュ、棚卸資産、金融資産の定義に当てはまらないため、耐用年数が不定な無形資産として扱う必要があります。そのような無形資産の会計は、原価・減損モデルを使っており、暗号通貨の評価は、減損処理するかどうかテストしなければなりませんが、このモデルでは、評価の切り下げだけであり、評価益の計上は認められていません。
Because digital currencies do not meet the definition of cash, inventory, or financial assets in current accounting guidance, they must be treated as indefinite-lived intangible assets. Accounting for such intangibles uses a cost and impairment model, so the value of cryptocurrencies has to be tested for impairment. But the model does not allow for the asset to be written up, only down.
業界では、現行会計実務は、暗号通貨資産の過小評価につながり、企業が保有している暗号資産の真の価値を財務諸表上で表示することを禁じているといっています。
Industry players say the current GAAP accounting practice only leads to an understatement of cryptocurrency assets and prohibits a business from showing the true value of its crypto assets under possession on its financial statements.
FASBの2020年10月21日会議資料。資料の7~8ページがデジタル通貨です。
↓
https://fasb.org/jsp/FASB/Document_C/DocumentPage&cid=1176175422936
上記記事でもふれていますが、先行するものとして、IASBの議論や日本基準についても紹介しています。
会議の結論がどうなったのか気になりますが、TENTATIVE BOARD DECISIONSというページをみると、アジェンダとして取り上げないという結論だったようです。
TENTATIVE BOARD DECISIONS
The Board decided not to add the following potential projects to its agenda:
Digital currencies
Change to diluted earnings per share reporting
Determining a lessee’s discount rate: when use of the rate implicit in a lease is required.
日本の基準は、FASBの会議で取り上げられるほど、先行基準として認知されているようですが、その後の基準開発はなぜか停滞しているようです。
直近のASBJ「現在開発中の会計基準に関する今後の計画」(9月29日)をみると、「金融商品取引法上の「電子記録移転権利」又は資金決済法上の「暗号資産」に該当するICO トークンの発行・保有等に係る会計上の取扱い」がテーマに挙がっており、その一部について2020 年 11 月に公開草案を公表とされていますが、当初はたしか、9月公表だったと思います。また、最近のASBJの審議項目をみても、暗号資産に関する審議はなされていないようです。他に優先すべき検討事項があって、一時的にストップしているだけなのかもしれませんが、気になります。
暗号資産といえば、サッカーの本田選手が仮想通貨を発行するそうです。
本田圭佑が仮想通貨「KSK」発行 ファンと繋がる(日刊スポーツ)
「ブラジル1部の古豪ボタフォゴMF本田圭佑(34)がとうとう自ら「通貨」になった。
本田自身が立ち上げたKSK Angel Fund(ケーエスケー・エンジェル・ファンド)が21日、仮想通貨「KSK HONDA コイン」の発行を発表。」
ファンクラブの会費程度のカネを集めるだけなら問題はないのかもしれませんが、ネット上では、何かトラブルが起きて、本田選手の評判に傷がつくのではないかという見方もあるようです。
本田圭佑氏、自身の暗号資産トークンをローンチ(モーニングスター)
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