地域金融機関の不適切行為・不正行為の背景には、共通する厳しい経営環境があり、それには金融庁の姿勢も影響しているという記事。
「多くの地域金融機関が、不正ではないとしても不動産融資などで過度なリスクをとっている背景には、金融庁による融資拡大要請も関係しているのではないか。地域密着型のビジネスモデルに根差して、企業に対する目利きを効かせた融資の拡大を、金融庁は地域金融機関に求めてきたが、そうした融資を拡大できる余地もかなり限界に達しているのではないか。そうした中で無理に融資を拡大しようとすれば、低金利戦略で他行の融資を奪っていく他はない。しかし、それによって貸出金利が一段と下がれば、融資が増加する中でも利鞘縮小によって銀行の収益は逆に悪化してしまう。実際、こうした貸出金利引き下げの過当競争が、地域金融機関の収益悪化に拍車をかけているのが現状だ。
この点を踏まえれば、金融庁が地域金融機関に融資拡大の要請を安易に強めることには問題がある。おそらくその背景には、政府の政策、「地方創生」と平仄を合わせる意図があったのではないか。しかし、地域経済活性化を優先するなか地域金融機関の収益が一段と悪化し、いずれ金融システムの不安定化に繋がってしまうようでは、金融庁は本来の職責を果たしていないことになるだろう。
貸出金利引き下げの過当競争のもとで、信用リスクに見合わない低金利での貸出が、既にかなり拡大してしまった可能性がある。また、金融庁は、適切な不良債権管理の観点から銀行による債務者区分をしっかりとチェックしなくなっている。そのため、景気情勢がひとたび悪化すれば、予想以上に地域金融機関の不良債権は拡大し、金融システムを揺るがす事態にまで発展する可能性はあるだろう。
1990年代終わりから2000年代初頭にかけて、金融不安が収束する過程で、金融システムの安定維持に関する金融行政の優先度が低下してしまった。今年7月の金融庁の組織改正も、そうした考え方が背景にある。それが行き過ぎ、銀行検査が簡素化され過ぎたことが、金融庁が今回、スルガ銀行の不適切融資を見抜けなかったことに繋がった面があったのではないか。この点から、スルガ銀行問題では、金融庁の責任も問われるべきだろう。」
金融庁は経営コンサルタントのまねごとなどはしないで、本来の仕事だけをきちんとやるべきなのでしょう。
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