大阪港の咲洲トンネルの通行料金徴収を請け負っている第三セクターで、回数券約1万1千枚(2億2800万円相当)が紛失したという記事。なぜか監査法人まで登場しています。
「昨年9月、市監査事務局の調査で在庫枚数が台帳上の枚数より大幅に不足していることが判明。同社が調べたところ、開業以来、計約1万1千枚の回数券の所在が不明になっていた。同社は回数券を保管する金庫を元社員が1人で管理していたことから、着服の可能性が高いと判断。」
「同社によると、毎年度末には監査法人が台帳と在庫数を確認していたが、在庫不足の指摘はなかったという。同社は「監査法人の担当者が、実際は在庫数をチェックしていなかった可能性がある」として、今後監査法人に対しても説明を求める方針。」
記事によれば、この第三セクターは大阪市の委嘱を受け通行料金の回収業務を行っており、回数券の発行収入は、大阪市に納められていたようです。
会社側は、監査法人に責任転嫁するような発言をしていますが、台帳と回数券の残数量の照合が必要であれば、本来、内部統制の一環として、まず会社が自ら行うべきでしょう。監査人が、そうした内部統制を十分評価・テストしていなかったり、内部統制の評価結果に基づく実証手続が不十分であったりした場合は、責任を負う可能性はありますが、その場合でも、会社の責任がなくなるわけではありません。
また、回数券自体は、会社の資産として計上されるわけではありません。数量カウントは、回数券の販売額を「(回数券入庫数量-残数量)×単価」で間接的に検証しているだけですから、監査人が必ず実施しなければならない手続きともいえません。この会社の場合、回数券の販売収入はそのまま大阪市に納入されるようですから、貸借対照表には預り金として一時的に計上されるだけなのでしょう。それが翌期にきれいに精算されていれば、通常の場合、問題ないと判断してもおかしくありません。もっとも、それは、預り金の支出先(大阪市)があるべき入金額と一致しているか適切なチェックをかけていることが前提です。大阪市がそうしたチェックを行っているはずだと、根拠なしに思いこんでいたとすれば、判断ミスといえるかもしれません。
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