企業会計基準委員会の「収益認識に関する包括的な会計基準の開発」についての意見募集を取り上げた記事。建設業界にとって実務上の負担増は避けられないといっています。
「建設工事契約にも影響を与える可能性があるとして提起したのが現行、建設会社や設備会社が収益認識で採用している、「工事進行基準」と「工事完成基準」が、IFRSに合致した場合の考え方と影響の可能性について示した論点9だ。
具体的には、IFRSの収益認識基準(第15号)での工事契約は、原則として「進行基準」しか認めていない。ただ、進行基準で収益を計上する場合に厳格な要件が定められており、要件に合わない場合に、収益は費用(工事コスト)が回収可能と認められる部分についてだけ認識する「原価回収基準」の適用を求めている。これまで進行基準を適用してきた案件が進行基準適用を認められない可能性もある。
結果的にこれまで日本の会計基準で採用されてきた「工事完成基準」が廃止され、これまで日本の工事契約会計基準で認めていなかった「工事原価回収基準」が導入されることになる。
ただ、IFRS合致を目的にした新たな収益認識基準の導入は、建設業にコスト・事務双方で大きな負担になる可能性は高い。」
請負工事について、入り口で、会計処理が全く異なる完成基準と進行基準に分けてしまう日本基準よりも、原価回収基準と進行基準を使い分けるIFRSの方が合理的なような気もします。成果が確実かどうかというのは、紙一重の判断の場合もあります。また、工事の途中で不確実なものが確実になったり、逆に確実だと思っていたんのが不確実になったりということは、ありうる話であり、その際に、会計処理が全く変わってしまうというのはまずいのではないでしょうか。
記事で取り上げているもう一つの論点は、金利部分を分けるかどうかという点です。
「また論点では、工事契約の支払い条件についての金融要素にも言及した。長期工事や大型民間工事の場合、工事債権回収までに1年超かかる場合や支払い条件が悪い場合もある。日本基準ではこれを完成工事未収入金として計上しているが、IFRSでは原則として契約額から金利相当分を区別する処理を求め、例外として簡便法もあるが、簡便法が適用できるかどうかという問題提起だ。」
金利が問題になるほど、長期の支払いになるような支払い条件自体を改善すべきだと思われますが...。
いずれにしても、収益認識は、業種ごとの会計慣行がある領域なので、「包括的な会計基準」を作ろうとすると、各業界からいろいろな意見が出てくるのでしょう。
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