グローバル・ミニマム課税に関する簡便的な見積りの検討(PDFファイル)
2023年10月5日開催(直近ではなくその1回前)の企業会計基準委員会会議資料より、「グローバル・ミニマム課税に関する改正法人税法への対応」の資料です。
8月までの会議で、以下のような方針が決まっているそうです。
「第 85 回税効果会計専門委員会(2023 年 7 月 31 日開催)及び第 508 回企業会計基準委員会(2023 年 8 月 24 日開催)では、グローバル・ミニマム課税に関する法人税等(当期税金)の計上時期及び見積りについて、次の提案を行った。
(1) 年度の連結財務諸表及び個別財務諸表においては、経過措置は定めず、適用初年度よりグローバル・ミニマム課税制度に基づく上乗せ税額を法人税等(当期税金)に計上する。
(2) 企業における見積りが明らかに不合理である場合を除き、財務諸表作成時に入手可能な情報に基づいて最善の見積りを行った結果として見積られた金額については、事後的な結果との間に乖離が生じたとしても、「誤謬」にはあたらない旨を結論の背景に記載する。
(3) グローバル・ミニマム課税制度の適用初年度は、四半期連結財務諸表及び四半期財務諸表において、グローバル・ミニマム課税制度に基づく上乗せ税額を法人税等(当期税金)に計上しないことができる旨を定める。」(1項)
わざわざ「最善の見積り」でいいといわなければならないのは、グローバル・ミニマム課税の税金の計算が結構手間がかかるものであるということがあるようです。
そもそも、申告期限が長くなっています。それだけ税額算定に時間がかかることを当局も認めているということでしょう。
「グローバル・ミニマム課税制度については、各対象会計年度終了の日の翌日から 1年 3 か月(グローバル・ミニマム課税に関する申告書を最初に提出すべき場合には、1 年 6 か月)以内に、申告書を提出しなければならないとされ、当該申告期限までに納付することが求められている。」(5項)
資料では、具体的にどういう点で手間がかかるのかということを説明しています(6項・7項)。
例えば、基準税率15%といっても、法律上の税率で判断することはできず、税額控除等を反映した後の実質的な税率で判断するようです。15%が乗じられる所得の額も、当期純損益金額に通常の税務調整とは異なる調整を行わなければなりません。
こうした事情に対応して、(基本的には8月までの方針とあまり変わっていませんが)事務局の10月5日時点の案では、以下のようになっています。
(1) 当連結会計年度及び当事業年度を対象会計年度とするグローバル・ミニマム課税に関する法人税等の見積りにあたっては、財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき、その合理的な金額を見積る旨を定め、結論の背景において、財務諸表作成時に入手可能な情報に関する考え方について、次の内容を記載する。
① 特に適用初年度については、関連する法令等の公表から適用日までの期間が短いことから、連結範囲の対象外の子会社等からの情報など、従来情報を入手していない事業体から情報を入手する体制の構築等が困難な場合があると考えられるが、その場合は財務諸表作成時までに入手した情報に基づき、その金額を見積ることができると考えられる。一方、翌年度は申告に向けて入手可能となる情報が増加し、更に申告が行われた年度以降は情報を入手する体制の構築や実績値の把握等により、より精緻な見積りが可能となると考えられる。
② 見積りの基礎となる情報に関して、財務諸表作成時後申告期限までの間に新たに情報が入手可能となることがあるため、企業が当事業年度の財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき見積もった金額と翌事業年度の見積額又は確定額との間に差額が生じたとしても、企業における見積りが明らかに不合理である場合を除き、誤謬にはあたらず、当期の損益として処理することになると考えられる。
(2) 適用初年度における年度の連結財務諸表及び個別財務諸表に関して考えられる簡便的な見積りの例を規範性のない教育文書として提供する。」
さらに,四半期については、「適用初年度と同様に、適用初年度の後の各年度についても、当面の間、四半期連結財務諸表及び四半期財務諸表においてグローバル・ミニマム課税制度に基づく上乗せ税額を計上しないことができる旨を定める」とのことです。
2023 年 10 月 19 日開催分の会議資料によると、すでに公開草案の文案の検討にまで進んでいるようです。
令和5年度 税制改正の解説(財務省)(国際課税関係の改正(各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税の創設等関係)の解説も含まれています(約240ページあります)。)
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