これによると、早稲田大学は2009年3月期の決算において、有価証券の時価情報の注記から、意図的に含み損のある有価証券(複合金融商品)を時価開示の対象から除外しているそうです。
またこのコラムによれば、複合金融商品の内容は、いわゆる仕組み債で、為替リスクを取りにいくものだそうです。
早稲田大学の貸借対照表(2009年3月末)(PDFファイル)
コラム記事に書かれているように、329億円が時価のない有価証券に区分され、時価情報の開示を逃れています。そのかわり時価情報の注記の注として、以下のような記述がなされています。
「この計上額には、複合金融商品残高21,977,500,000円が含まれている。これを証券会社などの提示する「参考価格」で試算すると、その合計額は13,895,165,000円となる。しかし、この「参考価格」は満期保有目的を前提とした場合の「合理的に算定された価額」とするには相応しくないと判断されるため、当該複合金融商品残高を時価のない有価証券に含めて表示している。
本学の財政状態は債券の期限前売却による資金化が必要な状態になく、満期保有目的であること、期中の利払日において一定の為替水準であれば、債券は円貨100%で早期繰上げ償還される条項が付与されていること、および発行体は主要先進国政府機関・国際機関等で信用リスクはほとんどないことから、当該債券の元本毀損リスクは極めて低い。」
元本が戻るのだからいいではないかというような書き方です。これを書いた担当者(書かせた責任者)は、会計専門大学院にでも通って、貨幣の時間的価値を教えてもらった方がよいでしょう。
資産側で時間的価値を無視するのであれば、負債側の借入金も将来支払う利息を含めて計上すべきでしょうし、退職給付債務も割り引かないで計算すべきでしょう。ちなみに、退職給与引当金の注記をみると、期末要支給額22,652,347,250円の50%を基にして計上しているようです。つまり、引当金については時間価値を考慮して割り引いていることになります。
もちろん満期までの期間が、例えば3年であれば、その間利息がほとんど得られなくても、大きな問題ではないでしょう。しかし、仮に30年塩漬けにしなければならないとしたら、どうなのでしょう。この注記の注には、期間については全くふれていないので判断しようがありませんが、含み損の大きさから推測すると、相当長い期間なのでしょう(「発行体は主要先進国政府機関・国際機関等で信用リスクはほとんどない」のであれば、含み損は主として金利差から生じているはずなので)。
(含み損ばかり取り上げると不公平かもしれないので付け加えますが、時価のない有価証券には、不動産を証券化した商品72億円が含まれており、これは鑑定評価額によると120億円以上の含み益になっています。ただ、日本全体や関東地方全体の不動産価格の傾向からすると多額の含み益になっているというのは不思議な感じがします。いつ取得したものか、取得時にどのような会計処理を行ったかにもよりますが・・・。)
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