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仁智監査法人に対する検査結果に基づく勧告について(金融庁)

仁智監査法人に対する検査結果に基づく勧告について(PDFファイル)

金融庁の公認会計士・監査審査会は、仁智監査法人を検査した結果、同監査法人の運営が著しく不当なものと認められたとして、同監査法人に対する行政処分その他の措置を講ずるよう勧告しました(2022年1月21日付)。

以下、指摘事項から引用。

「法人代表者及び品質管理担当責任者を含む各社員においては、各人の個人事務所等における非監査業務への従事割合が高く、当監査法人における監査の品質の維持・向上に向けた意識が希薄なものとなっていることから、上記の(会計士協会による)改善勧告等を法人の業務運営の根幹に関わる問題として認識していない。」

「法人代表者及び品質管理担当責任者は、監査品質の改善に向けてリーダーシップを発揮していないなど、品質管理のシステムを有効に機能させる態勢を構築する意識が欠如している。」

「法人代表者及び品質管理担当責任者は、監査品質の維持・向上を図る意識が欠如していたことから、品質管理レビューでの指摘事項に関し、同様の不備の発生防止のための根本原因分析を十分に実施していないほか、実施していない改善措置を実施したものとして日本公認会計士協会に報告するなど、改善措置の実施に真摯に取り組んでいない。」

「法人代表者及び品質管理担当責任者は、現行の監査の基準に対する理解や、基準が求めている品質管理及び監査手続の水準に対する理解が、自らを含む監査実施者に不足していることを十分に認識していない。」

「当監査法人は、各社員の合意に基づいて品質管理活動を含む業務運営を行う方針としているにもかかわらず、各社員は、当監査法人における現状の品質管理態勢を批判的に検討していないなど、監査品質の維持・向上に貢献していない。」

「今回審査会検査で検証した個別監査業務の全てにおいて、これまでの品質管理レビュー等での指摘事項と同様の不備が繰り返されている。」

「法人代表者及び品質管理担当責任者は、各専門要員の執務実績時間を集計・管理する態勢を構築せずとも、当監査法人の業務に支障はないと思い込んでいたことから、被監査会社への監査見積時間の提示、詳細な監査計画の策定、社員・職員の評価等の重要な基礎データとなるにもかかわらず、これを集計・管理する態勢を整備していない。」

「品質管理担当責任者は、「監査の品質管理規程」に対する理解が不足していたことから、業務執行社員が新規に受嘱した上場被監査会社3社の審査担当社員を指名している状況を看過している。」

「品質管理担当責任者は、不正事案が発生した監査業務について、「監査の品質管理規程」で定められた社員会における審査が実施されていない状況を看過している。」

「複数の審査担当社員は、監査の基準で求められる監査手続の水準を十分に理解しておらず、また、一部の審査担当社員は、特別な検討を必要とするリスク等に係る監査上の重要な監査調書を査閲していない。」

「業務執行社員及び監査補助者は、監査の基準や、監査の基準で求められる監査手続の水準の理解、特に、不正リスクの評価及び対応に係る手続に関する理解が不足しているほか、経営者の主張を批判的に検討していないなど、職業的懐疑心が不足している。」

「業務執行社員及び監査補助者は、監査品質の維持・向上に対する意識が不足しており、このため、リスク評価手続やリスク対応手続について、見直しの必要性を認識することなく、過年度と同様の監査手続を実施している。」

「業務執行社員は、自らが果たすべき役割を認識しておらず、被監査会社が行う事業や取引の十分な理解に基づき、監査上のリスクを適切に評価する意識が不足しているほか、監査補助者を過度に信頼していたことから、監査補助者に対する十分な指示・監督及び監査調書の適切な査閲を実施していない。」

収益認識に関する不正リスクの識別及び不正リスクの対応手続が不適切かつ不十分、受注損失引当金に係る会計上の見積りに関する検討が不適切かつ不十分、重要な構成単位に関する監査手続が不適切かつ不十分などの重要な不備が認められる。」

「継続企業の前提に関する検討が不十分、固定資産の減損に係る会計上の見積りの検討が不十分、工事進行基準に対するリスク対応手続が不十分、重要な勘定残高に対するリスク対応手続が不十分、監査チームメンバーの独立性の確認が不十分、重要性の基準値に関する検討が不十分、棚卸立会に係る手続が不十分、内部統制や財務報告に関連する情報システムの理解が不十分、監査役等とのコミュニケーションが不十分など、広範かつ多数の不備が認められる。」

こてんぱんにやられているようです。審査会が書いていることを読む限りでは、単に品質管理上の形式的な手続に不備があったというだけでなく、肝心の監査手続もぼろぼろだったようです。

監査法人側の反論も聞きたいものです。

ちなみに、同監査法人に対しては、2015年にも金融庁から業務改善命令(業務管理体制の改善)が出ています。

監査法人の処分について(2015年)(金融庁)

(1月20日に、会計士協会のサイトで、「IPO会計監査フォーラム~IPO監査の担い手となる中小監査事務所交流会~」というイベントの開催報告が掲載されましたが、直後にトップページからリンクが削除されてしまいました。この勧告と関係があるのでしょうか。)
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