「特捜検察」の暴走、なぜ無罪判決が相次ぐのか ストーリー優先で証拠集め、調書は検事の作文
週刊東洋経済の「弁護士・裁判官・検察官」特集の記事のひとつ。
特捜検察や公安警察がいかに暴走しているかを書いており、最近の具体的な事件としては、プレサンス事件と、大川原化工機事件を取り上げています。
記事では、弁護士の弘中氏による『特捜検察の正体』から、検察が事件をでっち上げる手法を20挙げています。
1.ストーリー優先の証拠集め
2.客観的事実や科学的分析にはあえて目をつぶる
3.供述調書は検事が作文する
4.不都合な証拠を隠蔽・改ざん・破棄する
...
9.長期拘留で心身ともに追い込む
...
17.供述調書に化粧を施して真実らしさを装う
...
などです。
「例えばプレサンス事件では「山岸が横領を知っていた」という誤った見立てで証拠集めをした(上表の手法1)。長期勾留し山岸を心身ともに追い込んだ(同9)。
公安警察が立件した大川原化工機事件は検察の手法そのままだ。「生物兵器に転用可能と知っていて不正に輸出した」という誤った見立てをし(手法1)、温度の上がらない箇所があるという客観的・科学的事実には目をつぶり(同2)、警部補が供述調書をひたすら作文した(同3)。調書に「不正に」などの化粧を施して真実らしさを装った(同17)。
会計監査でも、1、2、4あたりは特にやらないよう注意しないといけないでしょう。会計不正に関する報告書や報道を読むときでも、よくありそうなストーリーに無理矢理当てはめていないか注意が必要でしょう。
おなじみの郷原弁護士にも聞いています。
「検察の権力の源泉は何か。元検察官の郷原信郎弁護士は「人質司法が最大の武器だ」と指摘する。」
「なぜ検察は長期勾留で被疑者を追い込むのか。郷原弁護士は「裁判で争わせないようにするためだ」と指摘する。法廷では検察官が罪状を読み上げ、被告が容疑を認める。まるで儀式だ。後は執行猶予をつけるかどうかだけで、検察が負けることはない。刑事事件の有罪率が99.8%と高いことの原因の1つにもなっている。
企業にとって長期勾留の経済的ダメージは大きい。それを見透かして、「罪を認めてさっさと保釈されたほうが得、という考え方をする人もいるよ」と、自白を巧妙に促す検察官もいるくらいだ。
人質司法に頼るあまり特捜検察の質が低下。「刑事事件としての立件の当否を判断する能力が劣ってきている」(郷原弁護士)。誤った見立てで経営者・企業人を逮捕・起訴・長期勾留。供述調書をねじ曲げてきたのが検察の実態だ。」
会計不正も守備範囲である証券取引等監視委員会のトップは検察上がりです。会計士も無関係な話ではないでしょう。
大川原化工機事件の大川原社長の指摘。
「大川原社長は国と東京都を相手に賠償訴訟をしている。その裁判に、大川原社長らを起訴した塚部貴子検事が証人喚問された。別の検事が社長らの起訴を取り消しているというのに、塚部は「当時の判断に間違いがあったとは思わない」とし、謝罪しなかった。
証人台の塚部をほぼ正面の原告席から見ていた大川原社長には「言いたくないことを言わされているたびに検事の顔色が赤黒く変わったように見えた。個人の意思を抑えてしまうからダメなんだ。上司に『違う』と言える検察組織にしていかないと、国としてやばい」。大川原社長は組織を率いる企業経営者として、検察という組織のいびつさを危惧している。」
プレサンスコーポレーションの創業社長への長めのインタビュー記事。
冤罪の被害額は70億円、248日間の独房暮らし 「それでも検察は謝罪も検証もしないのか!」東証1部上場企業創業者の怒り(共同通信)
「「検察なめんなよ。命賭けてるんだよ、俺達は。あなたたちみたいに金を賭けてるんじゃねえんだ。てんびんの重さが違うんだ、こっちは」。案件を山岸さんに持ちかけ逮捕された元部下に、取り調べの男性検事が言い放った言葉だ。だがその言葉と裏腹に、検察の捜査はストーリーありきのずさん極まりないものだった、と指摘する。
「検察はそもそも、証拠をまともに見ていないんですよ。例えば、検察から証拠開示された電子メールなどを約20人の弁護団員で全て分析するのに1年ほどかかってるんですよ。一方、検察は関係各所へのガサ入れ(家宅捜索)で証拠押収してから2カ月足らずで僕を逮捕していますから、証拠を吟味していないんです。弁護団の分析からは、僕の認識と違う客観証拠が一点たりともなかった。にもかかわらず検察は(僕が横領に関わったとのストーリーで)関係者の供述をねじ曲げて起訴したんです」
2021年10月、懲役3年の求刑に対し、大阪地裁は無罪を言い渡した。検察は控訴せず、文字通りの完全無罪だった。日本ではほぼ100%負ける特捜事件の公判で勝利したのだ。判決は、検事の取り調べが元部下に虚偽の供述をするよう追い込んだ可能性にも触れていた。」
元社長が学校法人の横領事件について無罪だというのは理解できるのですが、元社長が、会社のコントロールの外で、会社のマンション用地取得のために、個人的に巨額の資金を提供していたというのは、私的な利益を目的としていなかったとしても、会社のガバナンスとしては、非常にまずかったと思います(部下である執行役員が提案したスキームに乗ってしまったそうです)。そもそも、この社長がカネを出していなければ、学校法人での横領事件も起きなかったのではないかということもいえます。