日産ゴーン事件発生後はじめて、日産から公式に具体的な不正の内容を明らかにするようなプレスリリースが出ました。
「当社は、三菱自動車株式会社(以下、「MMC」)と共同で、 Nissan-Mitsubishi B.V. (以下、「NMBV」)における当社元代表取締役会長カルロス ゴーン(以下、 「ゴーン氏」)による不正行為に係る調査を進めておりますが、ゴーン氏が NMBV から不正に金銭の支払を受けていたことが、現時点の共同調査で確認されました。
NMBV は、当社と MMC の協業によるシナジー創出の促進を目的としたオランダ法人として、両社の折半出資により2017 年6 月に設立されました。ゴーン氏は、同社の取締役として就任しました。
今回の共同調査において、ゴーン氏は独自に NMBV と雇用契約を締結していたことが判明しました。また、この雇用契約に基づく報酬とされるものを含め、2018 年4 月から11 月の期間に、ゴーン氏は、 NMBV の資金から総額7,822,206.12 ユーロ(Tax を含む)の金銭の支払いを受けていました。本来、NMBV の取締役に係る報酬の決定や報酬を定めた雇用契約の締結は、同社の取締役会の決議が必要であるにもかかわらず、ゴーン氏は、同社の他の取締役(当社取締役社長の西川廣人、 MMC 取締役会長 CEO の益子修氏)と一切協議することなく、雇用契約を締結し、不正に上記金銭の支払いを受けたものです。更に、今回の共同調査では、当社と MMC の提携の発表直後の2016 年6 月の段階から、ゴーン氏と当社元代表取締役グレッグケリーらは、開示することなくゴーン氏に対する報酬を支払うため、当社と MMC の折半出資による非連結会社の設立の可能性を検討していたことが確認されました。
なお、西川および益子 MMC 取締役会長 CEO は、 NMBV から報酬その他何らの支払いも受けておりません。
当社としては、上記金銭は不正に支払われたものであることから、ゴーン氏よりその返還を受けるべく今後検討していく所存です。」
日産や三菱自動車が承認していないのに、多額の報酬を支払っていたということですから、これが事実なら大きな不正といえそうです。
これがあれば、役員報酬開示問題(当サイトの見方では無実の罪の可能性が高い)や、10年以上も前のデリバティブ契約付け替え問題(会社にリスクを負わせたことは事実のようだが、ゴーン氏の弁明にも説得力がある)や、中東へのあやしい支出問題(不正だと証明されてはいない)を持ち出さなくても、ゴーン氏を解任できたはずですが、なぜ、わざわざ特捜部まで介入させたのでしょうか。不思議です。
また、今回の発表にも疑問点があります。この Nissan-Mitsubishi B.V.社における不正を調べているといっても、どういう体制で調べているのかがわかりません。日本の普通の上場企業であれば、社内で調査するにしても、ある段階以降は、独立した専門家を入れて、(少なくとも外見上は)中立性を確保してしらべるはずです。ゴーン氏を追い出したい人が、一方的にゴーン氏を悪者にしている可能性が懸念されます。また、プレスリリースでは、「開示することなくゴーン氏に対する報酬を支払うため」に設立したといっています。しかし、設立の時には、当然、日産と三菱自動車の取締役会で説明を受け承認したはずであり、その後も両社の関連会社として、管理する責任はあったはずですが、ゴーン氏ら以外の関与はなかったのでしょうか。例えば、西川現社長の管理下にある日産の関係会社管理部門や法務部門などが深く関与していた可能性はないのでしょうか。そもそも、西川社長自身も、この会社の取締役だったわけですから、監督責任はあるでしょう。
この会社は、大々的に事業をやっていたのではなく、ペーパーカンパニーだったのでしょうから、そこで7百万ユーロもの支出があれば、すごく目立ったはずです。なぜ、防止・早期発見できなかったのか、というのも問題です。
会社が設立されたのは2017 年6 月なのに、問題にしているのが2018年4月以降に限られているのも気になります。それ以前は不正な報酬などはなかったのか、それとも、前期にも不正があったけれども、それを明らかにすると、この会社の取締役である日産と三菱自の社長の監督責任も追及されることをおそれて、明らかにしていないだけなのか...。ゴーン氏からすれば、まだ期中の段階なので、決算までには、事後的に承認を受けるつもりだったという主張もありそうです。
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