会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

ソフトバンクG、アリババ株の一部売却確定 利益4.6兆円(日経より)

ソフトバンクG、アリババ株の一部売却確定 利益4.6兆円

ソフトバンクグループ(SBG)が、アリババ集団への出資比率が14.6%に下がることを発表したという記事。これにより、アリババは持分法の対象から外れ、SBGは4.6兆円の利益を計上するとのことです。

アリババ株に関連するデリバティブ契約(たぶん時価評価されている)を結んでおり、それをアリババ株の現物決済で決済するそうです。

「SBGは4~6月にデリバティブ(金融派生商品)の一種である先渡し売買契約にアリババ株を差し出し、約1兆3000億円を調達した。返済時は現金での決済か、アリババ株を引き渡す現物決済を選べた。」

利益への影響は...

「出資比率が20%を下回ることで、アリババはSBGの持ち分法適用会社から外れる。会計ルールでは一般的な保有株と同じ扱いに変わるため、アリババ株を再評価する。簿価と時価の差額は約2.4兆円に達する見通しで、決済益なども含め税引き前段階で約4.6兆円を計上する見通し。」

ソフトバンクG、アリババと蜜月転機 株放出で利益4兆円(日経)(記事冒頭のみ)

ソフトバンクG、アリババ株先渡し売買を決済へ-4.6兆円を計上(ブルームバーグ)

会社のプレスリリース。

アリババ株式先渡売買契約の現物決済及び本現物決済に関連するアリババ株式の資金調達子会社への譲渡に関するお知らせ(ソフトバンクグループ)

プレスリリースによると、4.6兆円の利益の内訳は以下のとおり。

「(a)アリババ株式先渡売買契約決済利益」は、アリババ株の売却益と考えてよいでしょう。

「(b)アリババ株式再評価利益」は、保有を続けるアリババ株の評価益です。

(a)と(b)のいずれも、アリババ株1株あたりの公正価値(8月9日の終値)と連結簿価の差額から算定されています。

(c)は、2022年6月末時点から決済時点までのデリバティブ金融資産負債の公正価値の変動額です。

持分法から除外された後の会計処理は...

「アリババが当社の持分法適用関連会社から除外された後、本現物決済後に当社が引き続き保有するアリババ株式の公正価値の毎四半期の変動額が連結損益計算書において「持株会社投資事業からの投資損益」として計上されることとなります。」

今の会計基準では、投資有価証券から持分法適用会社や連結子会社に変わる(あるいはその逆)などの節目節目で再評価してフレッシュスタートすることになっています。したがって、売却したアリババ株で利益が出るだけでなく、保有を続け、投資有価証券に振り替わったものについても、評価損益が計上されることになります。

投資有価証券になったあとは、IFRSでは、時価評価し、時価の変動は損益に計上されます(たしかその他の包括利益にすることもできますが、その場合は配当金を損益計上することはできません)。ソフトバンクグループの場合は、損益計算書に計上するようです。アリババ株が米国で上場廃止になったり、中国共産党にいじめられたりして、株価が下がれば、ソフトバンクグループの業績を直撃することになります。従来は持分法だったので、株価は直接の影響はなく、アリババの決算上の業績さえよければ、ソフトバンクグループの損益にもプラスでした。

税引き後の影響額にはふれていません。アーム株を使った租税回避取引で、繰越欠損金がたくさん残っているとすれば、アリババ株処分で多額の利益が出ても、日本では税金を1円も納めないのかもしれません。あるいは、売却益が海外の低税率国の子会社に発生するような細工をして、日本では所得が発生しないようにするのかもしれません。

(日経より)

ソフトバンクグループ関連記事

クレディ・スイス、ソフトバンクGへの法的手続き開始要請=FT(ロイター)

「英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は11日、スイスの金融大手クレディ・スイスが先週、4億4000万ドルの係争を巡りソフトバンクグループに対する正式な法的手続きを開始する許可を英裁判所に求めたと報じた。

FTによると、クレディ・スイスの申し立ては、経営破綻した英金融会社グリーンシル・キャピタルの融資によって米新興建設会社カテラに渡ったクレディの顧客資金に絡むもの。カテラはソフトバンクGのビジョン・ファンドから出資を受けていたが、その後10億ドル超の負債を抱えて破産申請した。」

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