会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

なぜ東芝が巨額損失?原子力事業で何が(NHKより)

なぜ東芝が巨額損失?原子力事業で何が

東芝の米国原子力事業の状況を取り上げた記事。よくまとまっていると思います。

問題となっている工事の現状は...

「ウェスチングハウスは、アメリカ南部のジョージア州で2基、サウスカロライナ州で2基の合わせて4基の原発の建設を2008年に受注しました。

子会社のウェスチングハウスがCB&Iストーン・アンド・ウェブスターを買収する前のことですが、両社はこの4基の建設プロジェクトを共同で受注するパートナー企業の関係にありました。

東芝によりますと、2011年3月の東京電力・福島第一原子力発電所の事故のあと、アメリカで原発の安全基準が厳しくなったことを背景に建設のコストが膨らみました。特に、安全基準を満たすために設備や資材の費用が上昇。それにともなって建設の工期が伸びることで人件費も膨らみ、全体の建設コストが受注した時点の想定を大きく上回ったとしています。

工期は当初の計画ではそれぞれ5年程度の見通しでしたが、現在では、原発の運転開始の時期は、4基いずれも1年から3年程度遅れているということです(今の運転開始時期は2019年~2020年の予定)。原発の建設費用は、4基合わせておよそ2兆円で、工事の進ちょくはまだおよそ30%です。」

ということは、残りの70%部分の原価はまだ見積りの世界だと言うことになります。もちろん、今後の工事分の資材等の調達契約はある程度進んでいるでしょうから、完全に未確定というのではないでしょうが、かなりのぶれはまだ生じるのかもしれません。来月公表される東芝の第3四半期決算も見積りのかたまりとなりそうです。

問題となっているCB&Iストーン・アンド・ウェブスターの買収は、コストの負担をめぐる対立を解消するためだったようですが、裏目に出たようです。

「買収によって対立していた相手を取り込むという対処法。しかし、膨らむコストを抑えるための根本的な解決にはなりませんでした。

ウェスチングハウスとCB&Iストーン・アンド・ウェブスターは、建設の発注元のアメリカの電力会社との間で次のような契約を結んでいました。

「4基のうち少なくとも2基(サウスカロライナ州)については、建設の費用があらかじめ決めた金額を超えた場合は、ウェスチングハウスとCB&Iストーン・アンド・ウェブスターがその分を負担する」

電力会社にとって有利な契約です。このため、建設のコストが膨らめば膨らむほど採算が悪化する形となり、その結果、数千億円規模の損失につながったのです。」

2兆円と言えば、日本のスーパーゼネコンの年間売上高よりも大きな数字です。受注高としてみても、そんな大きな受注高(フローも残高も)をかかえる会社は、日本にはたぶんないと思います(建設業界で比較した場合)。4基なので平均すれば5千億円程度の工事となりますが、それほどの規模になれば、普通はJVを組んだり、コスト増の負担を発注者にも負ってもらうような契約にするなどして、リスク分散をはかるのでしょう。

しかし、東芝(WH)がやったことは、まったく逆で、せっかくCB&Iストーン・アンド・ウェブスターとの間でリスク分担していたものを、わざわざ1社でリスクを背負うように変更したようにもみえます。

「結局は、建設コストの拡大のリスクをどこまで予測していたのか、その発端となった契約方法の選択が正しかったのか、その検証が必要です。」

2月の第3四半期決算発表では、このあたりも少しは明らかになるのでしょう。

業界全体の状況は...

「いま、世界の原発ビジネスはリスクという壁に直面しています。フランスのアレバは、原発の建設コストの上昇を背景に経営が悪化し、フランス政府が救済に乗り出す事態となりました。ドイツのシーメンスも原発事業からの撤退を決めたほか、アメリカのGE=ゼネラル・エレクトリックは原発事業への積極的な投資には慎重な姿勢を明らかにしています。」

同業の日立製作所や三菱重工も、同じような経営環境にあるわけですが、東芝と同じようなリスクは負っていないのでしょうか。両社とも新日本が監査人ですが、特に海外事業については、しっかりみてほしいものです。

東洋経済で東芝の特集をやるようです。
B01NBVQBZD週刊東洋経済 2017年1/28号 [雑誌](東芝解体 沈没する19万人企業)
東洋経済新報社 2017-01-30

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(「2月4日号」が正しいようです。)
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