日本監査役協会は、「監査役の選任及び報酬等の決定プロセスについて-実務実態からうかがえる独立性確保に向けた課題と提言-」を、2019年11月15日に公表しました。
「監査役等が、...職責や機能を果たすためには、執行からの独立性が確保されることが重要であるが、本委員会では、独立性の根幹となる監査役等の選任や報酬の決定プロセスに着目し、制度面の検討とともに、実務実態として独立性が確保されているかを検討した。」
監査役(会)設置会社を対象にアンケート調査を行い、その結果も踏まえて、提言を行っています。
アンケート調査の結果をまとめた部分より。
「「監査役の選任に際し、監査役(会)と執行側のどちらが最初に候補者を提案しているか」については社内監査役候補者については、監査役(会)からが 3.8%であるのに対し、執行側からが 82.0%、社外監査役候補者については監査役(会)からが 7.8%であるのに対し、執行側が 78.4%であり、いずれの場合も執行側から最初に候補者を提案するケースが多数を占めた。」
「社外監査役候補については、執行側自身の知見に限界があり、独立性の確保も考え、執行側が候補者の選定を監査役(会)に委ねようとする場合も多いと考えられる。」
「【社内監査役候補者】 候補者選定に際し重視する要件については、「社内でのキャリア出身部門、海外経験等)」が 46.1%と最も多い。出身部門等から監査役としての資質を十分に備えているかどうかを判断しているものと思われる。」
「【社外監査役候補者】候補者選定に際し重視する要件については、「専門知識(財務会計、法務等)の有無」が 87.7%と最も多く、「経営者経験」、「多様性」、「他社兼務状況」といった項目も一定の割合を占めている。」
「監査役の報酬決定プロセスとして、「株主総会で報酬総額が決議されている」が 82.1%と多数を占めた。また、総会議案として提出するプロセスについては、「事前協議で合意を得てはいるものの、執行側が主体的に議案内容を決めている」が 51.1%、「執行側が監査役(会)の合意を得ずに決めている」が 26.7%と両者を合わせて 77.8%と、執行側主導で監査役報酬に関する議案提案の決定がなされていることがうかがえる。」
「報酬の総額枠内における個別報酬額の決定プロセスについては、「執行側から提示された個別報酬額で監査役会が決定している」が 49.7%と約半数で、「執行側が提示した個別報酬案を基に執行側と協議して決定している」が 24.9%であるが、報酬額について執行側と意見の相違があった割合が 9.7%と僅少であることを考えると、個別報酬額は、執行側主導で決定されている会社が大半であり、会社法が意図するところと実態とでは大きな乖離が生じているものと推察される。」
「【監査役の選任について】 今後どうあるべきかの設問に対して、「現状の同意権と提案権で問題はない」が 79.9%を占めている。」
「【監査役の報酬について】 「現状の決定方法にて特に問題はない」が 73.5%とかなりの割合となっているが、アンケートの結果を見る限り、「報酬総額の枠内で監査役間の協議により個別報酬額を決める」との会社法が期待するプロセスは、表面上はともかく、実際のプロセスとしては実現していないといえる。」
総括として、監査役の独立性担保のための選任・報酬の決定プロセスの見直しに関し、以下のような提言を行っています(見出しのみ)。
1)現行会社法の下で対応可能な工夫
・監査役(会)による候補者の提案
・任意の委員会による候補者及び報酬額の提案
・監査役(会)主導による報酬原案の策定
2)会社法の規定と運用実態の乖離を踏まえ法改正等を見据えた提言
・株主総会に提出する監査役の選任に関する議案の決定権を監査役(会)に付与
・子会社監査役の選任に関する親会社監査役(会)の積極的な関与
・株主総会に提出する監査役の報酬額の議案の決定権限を監査役に付与
そのほか、「監査役の業務量や責任を勘案した報酬額の増額」を求めています。
全部で100ページ超の報告書ですが、アンケート結果を掲載した部分が多く、本文は20ページほどです。
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