会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

銀行、貸倒引当金4兆円 9年ぶり高水準 倒産増へ備え厚く(日経より)

銀行、貸倒引当金4兆円 9年ぶり高水準 倒産増へ備え厚く(記事冒頭のみ)

銀行が貸倒引当金を増やしているという記事。

「銀行が企業倒産の増加への備えを厚くしている。融資の焦げ付きに備える貸倒引当金の残高は2022年末に4兆円規模と9年ぶりの高水準となった。新型コロナウイルス禍で経営不振に陥った企業の一部が、政府の支援縮小などで今後破綻に追い込まれかねないとみているためだ。将来の環境悪化を見据えて予防的に引当金を積む手法の広がりも背景にある。」

実態に対応して増やしているというだけでなく、実質的な会計方針の変更をしているようです(形式的には会計方針変更とは扱っていないようですが)。

「過去の不良債権処理額を基準に引当額を決める従来の手法と異なり、景気悪化を見越してあらかじめ備えを厚くできる手法が広がってきたことも影響している。「フォワードルッキング引き当て」と呼ばれるもので、厚めに引当金を積んでおくことで、景気後退局面などでの銀行経営の安定につながるとされる。

コロナの流行初期にふくおかフィナンシャルグループや琉球銀行が取り入れ、中京銀行や千葉興業銀行も続いた。売り上げが落ち込む飲食・宿泊など業種や属性に応じて貸し倒れに備える「グループ引き当て」の導入も相次いでいる。」

貸倒引当金に関する金融商品会計基準の規定は変わっていないはずなのに、引当方法を大きく変えることができるなら、ASBJで今やっている金融資産減損に関する基準見直しは不要なのではないかと思われます。

銀行の貸倒引当金について、どういう指針が現在出ているのかをみてみると、金融庁からは、「検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・監督の考え方と進め方」(ディスカッション・ペーパーと称する、ルールとしての位置づけがあやしい文書)が2019年に出されていて、会計士協会からもそれに対応して「銀行等金融機関の資産の自己査定並びに貸倒償却及び貸倒引当金の監査に関する実務指針」(これは監査人に対する拘束力あり)(その後も何回か改正され最終改正は2022年)という指針が改正されています。会計基準改正のデュープロセスをすっ飛ばして、金融庁と会計士協会が談合して、会計ルールを決めているようにも見えます。

もちろん、会計基準の枠内で、実務を改善することは必要でしょうし、金融庁や協会も「現行の会計基準に従って」といっているようです。また、現行の基準でさほど細かく規定していないということもあります。

しかし、グローバル金融危機(リーマンショック)後、時間をかけて、金融商品会計を見直してきた海外(ASBJはその流れで見直ししている)と比べると、非常に安易なやり方です。

他方、実務の観点からは、現行基準の枠内の手法の改善で、ニーズに対応できるのなら、ややこしい新基準を導入する必要はないのかもしれません。

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